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プロローグ

 異世界リオンセレナ。

 そこを管理する女神ピリスは、今日も今日とて……ベッドに寝転がりながらゲームをしていた。

 真っ白な長い髪の毛、くりくりとした赤い瞳。子供のような華奢な体はだぼだぼなシャツ一枚で覆っており、一度も日光に晒されていないかと思うほど、肌は白い。


「ふんふんふーん」


 世界を管理する女神とは思えない風貌のピリス。

 鼻歌交じりに、かちゃかちゃとコントローラーを操作している。と、そこへコンコンと部屋のドアをノックする音が響く。


「ピリス様。アマエットです」

「はいはーい。入っていいよー」


 部屋へ静かに入ってきたのは、ピリスの右腕とも言われる聖天使アマエット。黄金色に輝く髪の毛は肩まであり、瞳は青い宝石をはめ込んでいるかのように美しい。

 そのグラマラスなボディから大人の女性特有の色香がこれでもかと出ており、歩く姿は思わず目を惹く。

 

「どうしたの? なにか問題でも起きた?」


 一度、ゲームをするのを止め近づいてきたアマエットへと視線を向けるピリス。

 

「はい。実は、下界に天使が一人降りていったのですが」


 赤渕のめがねをくいっと上げてから、胸に抱いていた資料の中から一枚、ピリスに手渡す。

 それを見たピリスは、あー、と目を細める。


「カワエルちゃんねー」

「一応、下界へ祝福を齎しに行く、と言う理由で正式な手続きをしているのですが」


 本来、天界に住まう天使達が下界へ赴く時は、何かしらの目的がなければならない。もし、なんの目的もなく下界へ降りた場合は、罰を受ける。

 罰の重さは、上位天使達によって様々である。

 だが、今回のように正式な手続きを行い下界に降りた場合は違う。天使として使命を全うするのであれば、罪にはならない。

 の、だが。


「カワエルちゃんのことだから、本当に人々へ祝福を齎そうとしているんだろうけど……」

「ええ。彼女は、他の天使と比べても能力、奉仕精神が高い。しかし、少々……いやかなり問題を起こすことが多いのも事実」

「頑張り過ぎてからぶってるだけだけどね。私は好きだよ、カワエルちゃん」

「好き嫌いの問題ではないんです」

「まあまあ、アマエット。それで? 彼女は、どこに降りて行ったの?」


 にへらと緊張感のない笑みを浮かべながら、アマエットへチョコレート菓子を渡しつつ問いかける。

 

「どうやらカロティアへと向かっているようです」


 チョコレート菓子を受け取りながら答えるアマエットの言葉に、ぴくっとピリスは反応する。


「ほほう……カロティアか」

「どうかなさいましたか? ……そういえば、ピリス様が個人的に転生させた人間が現在カロティアに滞在していましたね」


 湊のことは、すでに天界中に知れ渡っている。

 久しぶりに帰ってきたピリスが、別世界の、それも一人の人間を転生させたと。

 当然、天界中騒ぎになった。

 世界の管理者である女神ピリスが、個人的に転生させる人間。まさか恋仲!? と変な噂も流れている。だが、本人はただの友達さー、といつも通りのテンションで断言。

 

「まさか、カワエルはその人間のところへ?」

「さあ、どうだろうね。もしかしたら偶然かもしれないけど……ふふっ、これは面白くなりそうだね」

「面白がらないでください。それより、またこんなに散らかして……服もちゃんと着てください」


 一通りの会話を終えたアマエットは、部屋に散らかっているものを片付け始める。


「えー! 私は、このスタイルが一番楽なのー」

「あなたは世界を管理する女神なんですよ? 恰好だけでもちゃんとして下さらないと」

「じゃあ、着替えさせてー」


 子供のように両手を広げ、アピールする。

 その姿をしばらくじっと見詰めていたアマエットは、くいっとめがねのずれを直し、頬を赤く染める。


「し、しかたありませんね。ピリス様の右腕として、その命令に従いますっ」

「さすがアマエット。頼りになるー」

「今回だけですからね」


 などと言っているが、アマエットはなんだかんだでピリスに甘い。これは天界でも知れ渡っていることで、アマエット本人は否定しているが、完全に子供の世話をする母、もしくは妹に甘い姉のようだと。

 二人のやり取りに、いつも癒されている天使達。

 天界は、今日も穏やかな雰囲気に包まれていた。

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