87 海底鉱山
潜って5分もしない内に、私達はお目当ての鉱山を発見した。
ミスリルの淡い青色の輝きが海底を彩っている。
早速ジェーンさんがピックを入れようとする……。
が、しかし水中故に動きを制限されて四苦八苦しているようだった。
私は見様見真似でジェーンさんのようにやってみた。
しかしやはり力が足りないのか上手くいかない。
ジェーンさんが指で上を指し示し、私達は一度浮上することにした。
「お目当てのミスリルがあったのは良いけれど、これじゃまともにピックも私には振れないよ!」
浮上したジェーンさんが目の前にある鉱床を掘れないことに不満を漏らす。
「単純に力が足りないのでしょうか?」
「あぁ……特級以上の採掘師がやるっていう身体強化でもしながらでなけりゃ採掘は不可能だね」
「身体強化……それでしたら私がお教えします」
「なに……? あんた身体強化が使えるのかい!? そりゃあいい」
ジェーンさんに身体強化の手法を教えると、ジェーンさんはすぐにピックで海をかき混ぜるように身体強化の練習をし始めた。
直にジェーンさんがコツを掴んだようだった。
「もう一度行ってみよう……!」
そして再び私達は海中へと潜っていく。
海底鉱山にたどり着き、ジェーンさんが身体強化をしながらピックを振った。
すると見事にミスリル鉱石が採取できたようだ。
私も見様見真似で、今度は身体強化をしながらピックを振るう。
鈍い感触がして、ミスリル鉱石が転がる。
【ミスリル鉱石】
高純度のミスリル鉱石。
等級値900。
私達は互いに採掘が上手く行ったのを確認してぐっと親指を立てる。
そうして暫くの間ミスリルを採掘し続けた。
ジェーンさんがもう持ちきれないほどのミスリルを掘り終えたようで、上へ行くサインを出した。私も同様だったので、ジェーンさんに従い上へと向かう。
「良いね……! セーヌさんあんたも筋がいい!
これなら大量のミスリルを採集できそうだよ」
「はい。ジェーンさんも身体強化をすぐに使いこなすとは流石です」
ミスリルを船に積み込みつつ、私達は互いに称え合う。
そうして3周ほど海底鉱山と往復しただろうか、船頭が「もう重さ的に限界だよ!」と教えてくれた。
「私は3割の取り分ですから、リエリーさんの取り分を考慮するともう少し量が欲しいのですが……」
「いいさセーヌさん特別だ。必要な分は私の取り分から渡すよ。
こんな愉快な採掘に連れてきて貰った上に、身体強化まで教えてもらったお礼さ」
「そんな……良いのですか?」
「あぁ構わないさ、市場で在庫が底をついてるミスリルだ。
持っていったらさぞ高値で買い取って貰えるだろうしね!」
それだけ言うとジェーンさんが船に上がった。
私もそれに習い船へと上がる、そして最後に私達の護衛をしていたリエリーさんを手伝って船へと上げる。私達は3人ともまだ人魚薬の効果が切れていない。
「それでは、陸までお願いします」
「あぁ分かった……!」
船頭さんに頼み、私達は陸へと向かった。
陸へ着く頃には、私達の人魚薬の効果は切れていた。
「ミスリルだけど、何に使うんだい?」
「はい。大剣の制作に……」
「なるほどね、それじゃこれくらいか」
ジェーンさんが取り分の大半を私に譲ってくれる。
「本当によろしいのですか?
まだ日は暮れていませんからもう一度戻る手もありますが……」
私が確認すると、ジェーンさんが「いいってことよ」と笑い、「それに私には小さいけどこいつもあるからね!」と一つの鉱石を掲げた。
明るい銀色の鉱石。
「これは……」
私は鑑定した。
【オリハルコン鉱石】。
高純度のオリハルコン鉱石。
非常に価値が高い。
等級値2500。
「これはオリハルコン……」
「そうさ、ミスリル鉱床で稀に取れることがあるんだよ。
そいつを先程入手したってわけさ。だから私の取り分も上々さ」
「そうでしたか……それでは、甘えさせて頂きます」
私はぺこりとお辞儀した。
それから船の鉱石を手配したセーフガルド行きの馬車へと積み込み、私達は午後2時にはサウスホーヘンを出た。
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