71 ゴブリン軍団との会敵
「敵を発見しました! 突撃します……!」
隣のエルミナーゼさんに合わせて神速をしていた私。
第1陣の冒険者と向き合う槍を持つゴブリンを発見し、即座に突撃を敢行した。
冒険者の横から割り込み、強引に払い抜ける。
「グギャァ」
うめき声を残して倒れるゴブリン。
鑑定すると、ゴブリンランサーという個体のようだ。
「助かったよ、ありがとう」
冒険者の男に礼を言われ、「いえ……」と軽く返事をする。
あとから来たエルミナーゼさんが男に前線の状況を聞く。
「もう少し前で烈斧のゴーガンさん達が引かずに戦ってるはずだ。
キングを仕留めようと前に出てる」
「そうですか……貴方はもう下がってください。その傷ではこれ以上の戦闘は危険でしょう」
「済まない……恩に着る」
特級冒険者、烈斧のゴーガン。
その彼がキングを目指して突貫を続けているらしい。
しかし、もう第1陣が接敵して1時間は経つ。
それでもキングが仕留められないとなると、敵の用兵術はよほど優秀なようだ。
辺りは夕闇に染まりつつあった。
これから先は夜戦になる。
私達にリエリーさんとキアラさんが追いついてきた。
「暗くなって来ました。ライトウェポンの魔法をみんなに!」
リエリーさんがそう指示すると、キアラさんが初級光エンチャント魔法ライトウェポンを唱える。ぼわっと武器が明るい光に包まれる。
「ありがとうございます」
お礼を述べると、私とエルミナーゼさんは再び前線へと突撃していく。
途中、ゴブリンが横から襲い来る。
力任せに大剣で薙ぎ払う。
そして炎の塊が襲い来る……それをすんでのところで回避すると、ゴブリン術師らしきゴブリンが前方に見えた。
そしてその奥からゴブリンアーチャーが私を狙っていた。
炎魔法に続きアーチャーの一撃を躱すと、私はゴブリン術師を袈裟斬りにする。
「アーチャーは私が……!」
そう言うエルミナーゼさんが私の横を抜けていき、アーチャーを仕留めた。
合流すると、エルミナーゼさんが言った。
「ライトウェポンで周囲が見えるのはいいのですが、狙い撃ちにされてしまいますね……」
「ですが、暗闇で戦うよりはマシですよ」
私が答え「そうですね……後衛を守るためにも、できるだけ遠距離攻撃を行ってくる個体は先行して倒しておきたい」とエルミナーゼさんが応じた。
「セーヌさん。鑑定索敵をお願いできますか?」
「はい。それでは行きます……!」
半球状に元素を飛ばし広げていく私。
雑多なゴブリンの群れの他に、引っかかったのは烈斧のゴーガンさんたちだった。
【烈斧のゴーガン】。
【人族。男性】。
【特級斧術B】、【統率B】、【気合A】、【特級冒険者B】、【元素感知B】、etc……。
続いて、上位個体のゴブリン達が続々と鑑定にかかる。
【ゴブリンオーガ】。
【ゴブリン族。男性】。
【上級斧術A】、etc……。
【ゴブリン奇術師】。
【ゴブリン族。男性】。
【上級短刀術A】、【上級幻惑魔法B】、etc……。
【ゴブリンブラックスミス】。
【ゴブリン族。女性】。
【上級鍛冶職人A】、etc……。
【ゴブリン宮廷術師】。
【ゴブリン族。女性】。
【上級炎魔法B】、【上級光魔法B】、etc……。
そして、ついに私の索敵が王を捉えた。
【ゴブリンエンプレス】。
【ゴブリン族。女性】。
【女帝S】、【統率S】、【特級炎魔法A】、【特級氷魔法A】、【特級雷魔法A】、etc……。
「1km先にゴーガンさんたちを発見。
複数のゴブリンオーガなる個体の相手をしている模様です。
他に女王を……いえ、ゴブリンエンプレスという女帝スキルを持った個体を発見しました!
前方2kmほど先です!」
私がそう隣にいるエルミナーゼさんへと報告すると、
「女帝……? まさか……キングではなくクイーンから更に進化していると……!?」
驚いた様子を隠せないエルミナーゼさん。
「はい。そのようです。
どうしますか? 突撃しますか……?」
「待ってくださいセーヌさん。さすがに数段階の進化を経ているであろうエンプレスに私達だけで挑むのは無謀過ぎます。ひとまずは遠距離攻撃可能な個体を減らしつつ、ゴーガンさん達を援護します」
「了解です!」
そうして私が一つ、また一つと、遠距離攻撃手段を持つゴブリン達を神速で捉えては狩っていく。その間、エルミナーゼさんは近距離攻撃しか攻撃手段を持たないゴブリンを私の代わりに狩ってくれていた。
そして、私達はゴーガンさん達の元へとたどり着いた。
ゴブリンオーガの斧撃をゴーガンさんがちょうど捌いたところだった。
「ゴーガンさん、第2陣の指揮を任されたエルミナーゼです。
本陣からの指示では、西へ展開しつつ徐々に後退せよとの指令です。
フランシュベルトの街ではなく、西の森を主戦場となるよう調整しろと……!」
「ふん! 前線の事も知らずに好き勝手言ってくれるぜ。
城塞のレェイオニード。あとで良い酒を出させてやる……!」
そんな話をしている隙にも、攻撃をしかけてくるゴブリンオーガ。
3体同時に攻撃をしかけてきている!
危ない……! そう思った私だったが、ゴーガンさんが3つの斧すべてを受け止めてしまう。
そしてエルミナーゼさんと私をちらりと見た。
「あんたら、その大剣は飾りじゃねーよなぁ?
俺もさすがにこのゴブリン共を複数体相手にするのはきつくてな。
1体ずつ受け持って貰えるとさっさと始末できそうなんだがねっ……!」
怒声と共に斧をはねのけるゴーガンさん。
攻撃速度こそ遅いものの、ゴブリンオーガの巨体から生み出される圧倒的力の暴力を秘めた斧攻撃は驚異的だ。
それを3本もいなしてしまうなんて凄い力だ。さすがは特級冒険者である。
「セーヌさんやれそうですか?」
エルミナーゼさんがそう聞いてくる。
「はい……攻撃速度は遅そうなのでなんとか……!」
「では、各自1体ずつ仕留めるということで……!」
「おうよ……!」
そうして私は右手のゴブリンオーガへと向き直った。
左手側をエルミナーゼさんが、正面のオーガをゴーガンさんが担当するということだ。
私にはあれだけの斧攻撃をいなす技術はたぶんない。
即帝領の番人の攻撃も似たような感じだったが、それを弾いて攻撃機会をくれたのはナミアさんだ。私はただ相手の無防備なところへ渾身の一撃を入れたのみだった。
このような大型の敵を一人で相手にするのは初めてだ。頑張って倒さなければならない。
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