第14話Part.5~レディーファーストは大切です~
馬車が会場に着いたようだ。今度はゆっくりと停車。心なしかいつも以上に慎重に停めている気がする。御者はすぐに馬車を降りて踏み台を用意する。
俺はその様子を見た後に馬車を降りて、ペティが座っている方の扉を開く。その時俺から目を逸らしていたペティと再び目が合った。ペティの表情は恥ずかしさからか眉が八の字に下がり赤面したままだった。あんなことがあれば当然だがやはり気まずい。
「ペティさん、手を。階段は危ないから。」
ペティは裾が拡がったドレスを着ているので、階段を降りる時は下がほとんど見えず特に危ないので、男性側のパートナーがしっかりと支える必要がある。もし転びでもすればケガをするし、服が汚れたり破れたりでもすればそのままパーティーに参加する事などできないので特に気を付けなければならない。
ペティは俺に応えて、差し出した手を握って階段を下りてゆく。ゆっくりと確実に降りて躓いたりすることなくしっかりと降りた。とりあえずは一安心だ。
「ありがとうございます。」
「いや……。」
「先ほどのこともありがとうございました。まだ、お礼が言えていなかったので。」
降りた後にペティから今の補助とさっきのことのお礼を言われた。俺はそれに対して「ケガとかが無くて良かった。でもごめんね、危ない目に合わせてしまって。」と続けようとしたところでペティに遮られてしまった。ペティを迎えに行った馬車も御者ももちろんロートリース家中の馬車であり、仕方のなかったこととはいえ危ない停まり方をしてしまった。
そして結果的に彼女のデリケートな箇所に思いっきり触れてしまったことも謝ろうと「それに。」と続けたところでペティに慌てて遮られる。次に何を言おうとしているのかが分かったのだろう。恥ずかしいものは恥ずかしいのであまりそこには触れてほしくなかったようだ。俺は「ごめん。」と言うに止めた。
「ファンデン様。中に入りましょう。」
ペティはもうこの話はこれで終わりといった様子でペイツが開かれている会場に行こうと言う。まだ彼女は赤面はしていたが、八の字になっていた眉は戻っていつものニコリとした笑顔に戻っていた。俺は「そうだね。」とだけ答えると手を繋ぎながら会場の入り口まで歩いて行く。
石畳の上を歩き、石で作られたアーチを抜けると立派な中庭に入る。今は夜で見えづらくなっているが昼間、天気の良い日にくれば特に目で楽しめるであろうことは確実だと思う。
中庭を抜けて大きな建物の前まで行く。扉は閉ざされているが横に使用人らしき男が立っていた。その男が扉を開けてくれ、まずはペティを中に通す。中にも男の使用人が居り俺はその男に自分とペティの名を言う。すると案内役の男が俺とペティを席にまで案内してくれた。
案内してくれた男に礼を言うと、彼は一礼して去っていく。俺はペティの席の椅子を引いて「どうぞ。」と言う。ペティはお礼と共に椅子の前に立ち、俺は彼女が座るのに合わせて椅子を戻してペティに座ってもらってから隣の自分の席に座った。
俺たちが着いたテーブルは6人掛け。まだ他の2組は着いていないようだ。ペイツが始まるまでは多少時間がある。俺とペティは少し雑談しながら待つことにした。




