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第14話Part.4~これがラッキー?申し訳なさと気まずさしかありませんよ!~

【1ミニー=1分】

 馬車が走り始める。会場までは30ミニーはかからないがそれでもそこそこ時間がかかる。その間何も話さないわけにはいかないが、これと言って話す話題がない。その話題を思いつくまで場を繋ごうと出てきた言葉は


「もうすぐ4月だけど、夜はやっぱり寒いね。」


 とりあえず気候の話。まあ当たり障りも無いし無難な話題で東亜として生きていた頃から話題は特にないけど自分から話を切り出す時は大体天気か気候の話からだった。

 ペティはそれに対して「そうですね。こういった時は温かいメルーが飲みたくなります。」と話を広げてくれた。メルーとは動物の乳のことだ。

 俺もそれには「たしかにそうだね。」と返答した。まあ東亜だった頃はお酒一択だし、酒が飲める歳になったら間違いなく酒を優先するだろうと思うが。


「そういえばペティさんも学園都市シェーベリーに行くって言ってたけど、いつぐらいになりそうなの?」

「ロートリース様たちと同じくらいの時期になると思います。行くこと自体はずっと前から決まっていましたから。」


 なんとか気候の話の間に次の話題が思い浮かんだ。彼女が前に俺の家にまで来た時に話してくれた学園都市シェーベリー行き。それがいつぐらいになるかという話だ。ペティはニコリと笑みを見せてから答える。


「ペティさん、別に俺の事は名前で呼んでくれてもいいんだけど。同じ学校の同級生だし。」


 俺はペティの返答で少し気になっていたところを思い出してそのことを言ってみた。彼女は同級生の友人に対してもファミリーネームで呼んでいた。少なくとも俺が知る限りでは例外は無い。

 今日に関しては俺とペティはパートナーだ。そのパートナーがファミリーネーム呼びは少しよそよそしい感じがする。それなので会場に着く前にそのことを言ってみた。

 しかしペティの方はというと何か遠慮があるのか、その気が無いのか、快諾するという様子では無かった。


「遠慮してる?それなら必要は無いよ。せっかくパートナーになったんだし。」

「わ、分かりました。今日はよろしくお願いします。ファンデン様。」


 敬語と様付けは取れなかったが、俺をファーストネームで呼ぶようになったペティ。よろしくお願いしますと言うところでは頬を桃色に染めながら柔らかい笑みを浮かべて自分の名前を呼んでくれた。


 そんな時に馬車が急にスピードを落とした。当然そんなことは想定していないし手すりなども無く身体が前に投げ出されそうになる。俺は咄嗟に右腕を座っている彼女の前に差し出した。

 これはペティの身体を守ると言うよりは東亜として生きていた頃、買い物後自動車を運転した際に助手席に乗せた荷物が前に落ちないように強めにブレーキをかけた際に腕を出して受け止めていた名残のようなものだった。

 だがそれが結果的にバランスを失って危なかったペティの身体を受け止めるのに役立った。


「す、すみません!大丈夫ですか!」


 外から御者の声が飛ぶ。外の様子は小窓からしか見えない為何があったかは全く伺いしれないし、それに今はそれどころでは無かった。もっと別の大きな問題が起きていた。

 ペティの身体を腕で抱き止めてケガをさせなかったのはよかったのだが、それと同時に何か柔らかいものが腕に当たっていた。

 これは何か?おそらくアレだと見当はついている。そして自分の右腕に視線を向けると自分が思った通りの状況になっていた。

 ペティの豊かなものが押しつけられている。いやどちらかと言うと俺が右腕で彼女を押さえ込んでいるような状態だ。

 俺は腕をすぐに引いて最早土下座するくらいの勢いで謝った。当然意図的にやったことでは無いし結果的にはペティの身を守れたがそれと同時に彼女の胸に触れてしまったのも事実。


「い、いえ。だいじょうぶです……。気にしないでください……。」


 ペティはピンク色に染めていた頬が真っ赤になってしまっていた。だが彼女自身、俺の腕が前にあったためケガせずに居られたのも分かっているようで怒るに怒れないのだろう。大丈夫、気にしないでくださいとだけ答えたが、それからは顔を背けてしまって馬車を降りるまでこちらに顔を向けてくれることは無かった。


「本当にごめん。ま、また危ないかもしれないから、手だけ握っておこうか……?」


 今思えばお前は何を言っているのかと思うが、俺ももう訳が分からなくなっていた。ブレーキをかけたのは人が飛び出してきたかららしいが、また同じことが起こらないとも限らないのでということでそう言った。

 それに対してペティは何も言葉は返してくれなかったが、おずおずとこちらに手を伸ばしてきた。俺は会場に着くまで気まずい状況で彼女の手を握りながら無言で過ごすしかなかった。

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