第7話Part.15~やはり……間違ってなかった!~
吹き飛ばされながらもしっかりと受け身を取って体勢を立て直したがダメージは深く、ホルトは右膝を地に突いてしまうが倒れずに指揮官を見据える。
しかし彼を守った鎧は攻撃を食らった場所から砕け落ちた。そして刃も届いていたようで左の脇腹から服は真っ赤に染まる。
更に内臓にも衝撃が伝わったのだろう、ホルトは堪え切れずに真っ赤な血を吐く。ビチャビチャと大きな水音をさせながら彼の立つ地を真っ赤に染め上げた。
ホルトもアーシュレの護衛として今まで魔物と戦いケガを負ったことはあるし大ケガも何度かあったが、戦闘後はともかく戦闘中にたじろぐほどの痛みを感じたことはなかった。
だがこれは違う。最早痛み以外の感覚がないのではというほどに痛みしか感じなかった。
「く、クソ……ゴホッ。不味った……な。」
小さく呟くホルトだがその中でも咳き込んで血を吐く。
指揮官は長剣を高く構えながら自分のところへ歩いて来るのが見えるが立ち上がって対応することもできない。(動け!動け!)と自らを奮い立たせようともするが身体は言うことを聞かない。
最早これまでかと諦めかけた時に思い出すのはやはりアーシュレの姿だった。彼女と出会ってから、彼女が雨を降らせたこと、家中に迎え入れられた日の事、王都に共に行った事、彼女の調査の護衛に行った事、様々な事を思い出した。
(走馬燈ってやつか?ふざけるな!)とアーシュレを必ず守ると誓ったのにまた情けないことを考える自分に叱咤する。そして
「ホルト。必ず戻ってきてください。」
「傷の回復薬です。必ずあなたを守ってくれるはずです。」
という言葉と共に彼女から託された回復薬の事を思い出した。ホルトは懐から小瓶を取り出して(アーシュレ様、今は俺をお守りください。)と蓋を開けて一気に飲み込んだ。
指揮官は重装備であった上にホルトや人間たちを明らかに見下しておりゆっくりとした足取りでホルトに近づく。もしかすると自身に手傷を負わせたホルトに目一杯の恐怖を与えて殺す意図もあるのかもしれない。
そしてホルトが瓶から回復薬を飲むことも「人間風情が何をしようと。」といった様子で妨害も入らなかった。
そもそも回復薬自体アーシュレが作成したものだったので指揮官はその存在知らずにホルトの行為を素通ししてしまった。
ホルトは回復薬を飲んですぐに回復魔術を使用された時のように身体が癒されていくことが分かった。脇腹の傷もみるみるうちに塞がって出血が止まり、痛みも治まっていく。
しかし回復力にも限度があり、まだ身体の内側は治りきらなかった。
だがそれだけでもホルトに勇気を与えるには十分。ホルトは指揮官から目立たぬように身体を動かす。小さく踵とつま先を交互に動かし、手をグーパーとしてみたりして身体が動くことを確かめた。
またしてもアーシュレに救われた命を散らすつもりは毛頭なく、泥にまみれようと汚いと罵られようと、ホルトはこの指揮官の首を取って必ず生きて戻るのだと決意を固めた。




