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第7話Part.8~忠烈?それとも……~

アーシュレは王都に屋敷を与えられ、魔術研究に勤しむことになった。主に雨魔術の研究が多かったが、それが一段落した辺りからは新たな魔術発見のために古代言語の解読作業に入る。

古代では一部の精霊と人は同じ言語を操っていたらしく、古代言語そのままの単語で魔術が使用できるという物もあった。例えば炎系の【アローヴ】は古代言語ではそのまま炎という意味で使われていたようだ。その為古代言語の解読が新たな魔術の発見の近道になることがあるようだ。


一方ホルトの方は護衛としての役割も果たせるよう、練兵場に通うことが増えていた。彼の才能は群を抜いていて、元々高い身体能力も相まって並の近衛騎士たちでは太刀打ちできないほどに腕を上げて行った。それを見てアーシュレよりも身分が高い貴族に破格の条件の元、自分の下で働かないかと誘われたこともあったそうだがその全てを断り続けたようだ。


アーシュレはその後、雨魔術の発見以上の功績はさすがに無かったものの、魔術力回復薬の精製に掛かるコストを下げたり、精製に使用できる水が湧く場所を調べて地図に纏めるといった功績を上げる。

その傍らには常にホルトの姿があり、仕事の関係上王都の外、つまり魔物が現れるような場所での作業では常にアーシュレを守り続け、彼女に危険が及ぶことは1度としてなかった。


「ホルト、またこんな傷を負って……。あまり無理はしないでと言っているでしょう?」

「い、いや……申し訳ありません。」


アーシュレ30歳、ホルト18歳となった頃、また傷を負った彼を回復魔術で癒したアーシュレはいつも傷が絶えないホルトを窘める。

アーシュレもそれほど強くはないものの魔物を怯ませるくらいの攻撃魔術は使用できる。それなのにホルトは自分と他の護衛だけで戦いを終わらせようとするのだ。

何度か大怪我もしたし、1度は死にかけたことすらあった。


ホルトは常日頃からアーシュレの人柄とその頭脳は民を救う大いなるものなのだと彼女に熱弁していた。「そのアーシュレ様を守る為なら命すら惜しくない。」と言った時はさすがにアーシュレに叱られたようで、それ以来彼女の前で口にすることは無かったが、その思いは全く変わらなかったと言い残している。


「ホルトの忠誠心はすさまじいな……。忠烈の士と言って差し支えない。」

「うん、そうだね。でも本当に忠誠心だけだったのかなあ?」

「え?」

「んーん。何でもない。」


俺はホルトのアーシュレに対する忠誠の揺るがなさを忠烈だと評した。だがアメリアは何か彼から他の想いを感じ取ったらしい。結局それは何なのかは教えてくれなかったが……。


ともかく彼の行状はその後も変わることなく10年の時が過ぎた。アーシュレ40歳、ホルト28歳。リール山の戦いが勃発したのである。

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