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2章第6話Part.10~魔術の代償~

シルヴァンが泉の陣内に入ると何やら人だかりができていた。ただの負傷者にしては様子がおかしい。

そんな様子に彼は一抹の不安が過って、騎士たちを分け入って進んでいくと少しずつ人だかりの中心が見えてくる。そこには1人の人間が横たわっていた。

横たわっている人間はまるで水の一滴も無い大地の如く肌は渇き果て、とても見れた状態では無かった。だがシルヴァンはこの人間に見覚えがあった。

倒れている人間が来ている白銀のローブは妹シルヴィが着ていた物。あの艶のある髪ではなくなっていたが白銀の髪、これが妹のシルヴィだと理解するのにそう時間はかからなかった。


「シルヴィッ!シルヴィィィィィィィッ!どうして、どうしてこんなッ。」


兄は駆け寄り妹に縋って叫ぶ。周囲の騎士や魔術師はその悲痛な様子に声一つ出せずに居る。陣内はシルヴァンの悲痛な叫び声のみ響き渡った。

彼女のローブの間から見える素肌は血色が悪いというよりも既に壊死したかのように色が変色し、見るも無残だった。


「に……兄さん……です、か……?」


シルヴァンの叫ぶ声に気がついたのか、シルヴィが口を開いた。だが彼女の眼は最早何も映しておらず、彼女の手は何かを探るように宙を彷徨い続ける。

シルヴァンは彼女の手に気づき、その手を力強く握り「兄はここだ。シルヴィ、兄はここに居る。」と涙声で答える。


「兄さ……ん。殿下は……ご無事、ですか……?」

「あぁ!無事だ無事だとも。殿下もお前の働きをお褒めだったぞ。」


シルヴィは真っ先にミア殿下の安否を尋ねる。シルヴァンは無事であることとミアが褒めていたと伝える。そのミアもラシュリー兄妹の姿を泣きそうになりながら見ていた。そして駆け寄り「私はここです。シルヴィ、君のお陰で私は傷一つありません。」と地に両手を付いて彼女に聞こえやすいように声を掛けた。


「ご無事で……よかった……。」


それが彼女の最期の言葉だった。シルヴィ・ラシュリー、20歳。死因は限界を超えての魔術の使用。文字通り全身全霊を捧げての戦死だった。

シルヴァンは妹の壮絶な死に涙を1滴溢したが、それ以上は我慢して涙目になった目を袖で拭い立ち上がり、近衛騎士たちに王の元へ引き返すことを指示し、自身の馬を部下に曳かせる。


「シルヴァン!少し休んだ方が……。王には私から口添えしますよ。」

「まだ戦局は決まっていません。もしここで負ければ、尚更シルヴィに会わせる顔がありません。弔うのは戦後でも許してくれるでしょう。」

「……分かりました。」


シルヴァンは妹の死を無駄にしない為、直ぐに戦線に戻っていく。王と合流した後、シルヴァンたちはバルトルメスらと連携し、魔族の軍勢を打ち破り勝利を収めた。

皮肉にもこのことがラシュリー家の名声を高め、グレイティス家の第一の守護者とまで今日まで呼ばれる大きな理由となったのだった。

シルヴィの話、自分の思った3倍は長くなってしまいました。

今までが短すぎたのかもしれませんが。

こんな見切り発車感ありありな感じですが、よろしくお願いします。

(2章6話がまだ終わるとは言ってない)

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