2章第6話Part.6~カール・グレイティス一世とシルヴァン・ラシュリー~
泉で休息をとっている時、シルヴァンはカール一世に労いの言葉をかけられたが彼は恐れ多いといった風に謙遜した。
彼は自分の能力に自信はあった。だがカール一世に見いだされなければその能力も発揮する機会も中々訪れなかったかもしれない。
父の事もあるが、ラシュリー家は多大な恩を受けている。受けなかったのならば手を抜くというわけではもちろんないが、グレイティス王家に仕えられることを喜びにすら感じられるのはこの大恩のお陰であるのは間違いない。
「君は相変わらず硬いなあ。まあそういったところも信頼できるんだが。」
カール一世はシルヴァンについてそう言って笑ったと伝わっている。それに対してシルヴァンはどういった反応だったかは伝わっていないが、恐らく苦笑いしていただろうと思う。
カール一世はそんなシルヴァンに信頼の証として自身の剣を授けたいと言う。カール一世の持つ剣はその当時でもよく知られていた宝剣。
宝剣であることを差し引いても、剣を主君から下賜されるというのは武人としてはこの上ない誉れ。当然シルヴァンも知っているので慌てて申し出を固辞した。
しかしカール一世は聞かずに「これは命令だ。」と言って、彼の拒否を許さなかった。
「佳き日、佳き場所にてカール・グレイディスは、臣シルヴァン・ラシュリーにこの剣を授。さあ受け取れ。」
「ありがたく拝命します。殿下の多大なる恩は必ずや身命を賭し、粉骨砕身に任に励み報います。」
カール一世から剣を授けられたシルヴァン。彼は跪いて両手で剣を受け取った。彼は剣を受けている間、カール一世の多大な恩に報いる事、そしてその寵恩に比する働きを見せ、主君の判断は間違いではないことを証明せねばと、固く心に誓ったと言われている。
その後シルヴァンがこの泉に来たのはリール山の戦い直前、シルヴィを伴ってであった。
2年前に彼やカール一世が危惧した通り、あのオークたちは斥候部隊だったようで、大きな部隊展開はなかった。
もちろんそれで警戒を緩めるということなどなく、リール・ア・リーフ周辺の警戒を更に強化していたところ、2年後に魔族の軍勢が集結しつつあることが巡回していた騎士たちより知らされた。
その時既に王に即位していたカール一世と近衛隊長のシルヴァンもリール・ア・リーフ周辺の陣地に入った。
その時はまだ交戦には至っておらず、敵戦力も少ない為、シルヴァンは妹のシルヴィを泉にへと連れていった。




