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うたがい


稚那が学校に入ってから10日ほどたった。ハプニングだらけで目まぐるしい毎日だったが最近では特に目立ったトラブルは少なくなった。それと同時に人間としてのマナーや礼儀を僅かながら覚えてきた。しかしながらまだ美味いものを食べた時や感情が昂った時、不意に炎を吐いてしまう癖がある。そのため食事にはまだ苦労している。


「稚那もだんだん学校生活に慣れて来たな」


「10日もあれば我も学習できるわっ!」


意外にも稚那の学習能力は高いものだ。日常生活のマナーもそうだが学問においてもだった。転移時は読み書きさえままならなかったものの数日で読みも書きもマスターしてしまった。そんな稚那は瞬く間に人気者になっていた。


「やっぱり異世界とは言え王女たる格ってやつがあるのか」


「やっぱりとはなんだ!我は元より格が違うのだ!」


「でも威厳はないよな」


「なんだとぉぉお!?見よ!この威厳しかない態度を!」


稚那はそう言って胸を張るが威厳など見当たらず背伸びをしている大人ぶった子供のように見える。だが本人には伝えないでおこう。変に気を損なうとかえってめんどくさいことになる。


「どうだっ!フンっ!!」


「おー威厳威厳」


俺は適当な対応を取る。だんだんと分かってきた。稚那が調子に乗り出した場合は適当に振る舞えばある程度落ち着いてくれる。構ってくれないと思っているのか、いや、自分を誇りすぎて俺の反応なんて気付いていないのだろう。

今日の授業も全て終了して終わりのSTを待っている。勿論異世界の王女のくだりは稚那だけに聞こえるように話している。


「今日も帰って早く夜ご飯だ!」


「まだ帰っても早いだろー。それに今日からは…」


「席につけー」


俺が続けて話そうとすると担任がSTをしに教室へ帰ってきた。俺の口から伝えようとは思っていたが今日ともなれば担任からの説明はあるだろうから口を止めた。


「みんな分かっている通り今日から1ヶ月ラボが再開だ。メンバーは前回同様だが、阿呆鹿」


「ぬ?」


「阿呆鹿もラボのメンバーに入ってもらう。別に強制ではないから上野に詳しいことを聞いて後で入るか入らないか教えてくれ」


「わ、分かった」


「うん。なら連絡は以上だ。今日も1日お疲れ様。明日も元気に登校するように」


起立。礼。さようなら


そうして今日も授業は終わる。挨拶を終えた瞬間くるりとターンして俺に教えろと言わんばかりに稚那が見つめてきた。


「はいはい。とりあえずラボに向かおう。その時に教えるから荷物まとめとけよ」


「何故に勿体ぶるんだ」


そう呟きながらも稚那は早く真相を聞きたいのか手早く支度を済ませる。

それにしても稚那の使っているカバンもとい俺の昔使っているカバンはそろそろ限界が近いようだ。これからもそのカバンを使うにおいて金具がキシキシと音を立てて今にもそのボロボロでハゲた生地が弾け裂けそうだ。

今度新しいカバンを買ってやるか。しかしそれでは推しへのお金が…ま、仕方ないか。


「おい大希!大希!」


「はっ、ごめん。準備できたか?」


「当たり前だ!準備が出来たから呼んでいるのだろが!なんだ?!今度から用もないのに呼んでやろうか?!」


「はいはい、分かった分かった。じゃあ行くぞ」


俺たちは教室を出ていつものように家路を通る。


「なんで帰るのだ?もしかして帰ってご飯か!?、、、あれ?ここを曲がるのではないのか?」


「な訳ないだろ〜」


そしていつもは曲がるはずの帰路を曲がらず直進した。勿論帰るのではない。目的地に向かっているのだ。その目的地は今日から再開されたラボである。


「お前はこの日本に起きた悲劇って聞いたか?」


「ん?それなら分かるぞ。SM◯Pの解散だろ?」


「アホか!確かに結構ショックだったけど!もっと日本が根に持ってるショッキングなことだよ!」


「分っておる分かっておる。大希を試しただけだ。カップ焼きそばの湯切りで麺が飛び出てしまうことだな」


稚那は自信満々にそう言い切ったがもちろん違う。ツッコミを入れるのも馬鹿馬鹿しいが様式美として一応ツッコミを嗜もう。


「どんなに小さいことに日本は根に持ってんだよ!確かにそれはウザいけども!、、、10日も学校(ここ)にいれば誰かが教えてくれると思ったけど。そんなしょうもない事は教えてくれるのにな」


そうツッコミつつも誰も稚那が異世界から来て日本の当たり前の事情を知らないなんて誰が思うのだろうか。そうなればあの惨劇など教えるに値しないのだろう。

それにしてもカップ焼きそばのくだりはどうせらみが教えたんだろう…


「カップ焼きそばの事じゃ無ければなんだと言うのだ?」


「はぁー。カタカナの惨劇だよ」


「カタカナの惨劇?なんだ?それは」


この話をすると胸が苦しくなる。別にその事件に直接被害を受けた訳ではないが人一倍解決したいという思いがある。


「とりあえず簡単にまとめるとちょっと昔に高校生が全國、同時に大量に負傷、死亡、行方不明になった怪奇事件だ。その事件は後にカタカナの惨劇と読んでいるんだ」


「ちょっと待て!そんな大事(おおごと)なのか!?我の言っていた事がアホらしいわっ…!」


「おー稚那がそう答えてくれるとは意外だな。もっと滅びろ〜的なことを言うのかと思ったけど」


「も、もちろん心配ではないぞ〜!?う、嬉しいのだ!」


稚那から垂れ落ちる冷ややかな汗から嘘が分かる。ここでの生活で人間に対する気持ちが変わってきたのだろうか。頻繁に思いやりに似た様子を見せるようになってきた。

そんな彼女に俺は感心する親のような目で見つめていた。


「もういい!続きを話せ!続きを!」


「はいはい。その事件は本当に奇妙すぎるんだ。突然全国の校舎の一部がポッカリと円形に無くなったんだ。何か爆発が起きたわけでもないし何が目的なのかもいまだに分かっていない。そしてポッカリとなくなったはずの場所の中心にはこの世の物質ではない決して壊れない石板が立っていたんだ」


「それはおかしな事なのか?」


当然の事ではないのか?と稚那は首を傾げた。


「待て!異世界では出来るのか!?」


カタカナの惨劇は異世界の関与が疑われている。もし、稚那の言っている事が本当なら今まで疑っていた異世界の関与説が有力になってくる。


「我もその魔法を使えるぞ。とは言え我の世界ではその魔法を使えるのは我ぐらいだがな!」


「え、、、?」


まさかそんな訳…

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