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ぼせいほんのう


その人を見るだけで胸の高鳴りが止まらない。その人を見なくとも思うだけで胸の鼓動が激しくなる。まさしく恋である。

恋というのは楽しい悲しいと言った単調な感情で表現できるものでなくまさに魔法、呪い、病気と言った表現が近く感じる。

そんな病とも言える恋に陥った少女が1人。


「その恋と言うのが我にかけられたものなのだな?」


「かけられたと言うより恋というステータスを手に入れたと言った方がいいかも知れないわね」


それにしても稚那っちの世界には恋とか恋愛という概念はないのかしら?でも、感情があるわけだし恋愛という概念は存在しているはずよね。私が思うに稚那っちがまだ恋を知らないだけねこれは。


「ステータスなのか…しかし良い効果では無いぞ?」


「そうね。決していい効果じゃ無いけれど恋が覚醒したときとてつもない力を手に入れれるはずだわ」


私は経験の薄い恋愛について稚那に出来るだけカッコよく説明してみる。


「それは所謂(いわゆる)覚醒スキルというやつだな?!」


「まぁそんなところね」


しっかりと説明はしていないがある程度理解してもらえたから私は良しとした。正直な話恋について真剣に説明するのが恥ずかしかったと言うのもある。


「あ、でも大希だけには恋について言ってはダメよ?」


「うぬ?なぜだ?」


「それは、、、」


私はただ大希が恋愛に疎いお陰で面白い事になると思って念のため気づかれないように大希には秘密にしたかっただけだ。故に他の理由など考えていないのである。


「大希に気づかれると稚那っちは喉元が破裂してしまうわ…」


「ひっ!?」


咄嗟に出た恐ろしい嘘だが嬉しい事に稚那は本気で受け止めてくれる。

やっぱり稚那っちはちょろインよね。本名のティナと差異がありすぎないように稚那っていう名前をつけたのは分かってはいるけど、漢字に稚をつけたくなるのは分かった気がするわ。


「だから絶対に悟られてはダメよ?」


「は、はいっ!!」


稚那は首輪をつけられた犬のように忠実な返事をした。余程恐れ慄いているのだろう。


「なんで恐ろしいんだ恋と言うものは…」


「まぁ恐ろしいわね」


「そんなにあっさりと言うでない!我の首が吹っ飛ぶのだぞ!?あぁ、考えるだけで恐ろしい…!」


確かに稚那視点では大変恐ろしい物になってしまっている。私が余計なことを言ってしまったからではあるが面白い稚那を見ていられるならいいかと反省の色はない。


「そもそも不思議に思ったのだが何故我は恋にかかったのだ?魔力も感知されず詠唱もせずにそんな恐ろしいものを…やはりあの時か!?額同士をくっつけた時か!?」


確かにあの時から稚那の反応がおかしかった。と言ってもあんな事されれば大抵の女子は冷静にいられるはずもない。稚那も例外になく冷静でいられていなかった。


「稚那っち?大希の事どう思っているの?」


「どうしたそんな藪から棒に。あいつは人間のくせに生意気ですぐ我に指図してくる最低な人間だ!」


「それだけなのね?」


稚那は私に気圧され口が緩む。


「いや、その少しは使えるやつだとは思うの…」


「好きって事?」


私の言葉に稚那は体温は針が振り切れるほどの急上昇。耳が赤くなりあわあわとしている。


「そ、そんなわけないだろうが!流石のらーちゃんでも冗談がキツすぎるぞ!」


「なら嫌いなのね」


「そういうわけではないが…」


「あのね稚那っち。恋と言うのはその人の事が好きになった証拠なのよ。これ以上は問いたださないけれど心当たりがあるんじゃない?」


「…」


稚那は目を閉じて心を落ち着かせる。おそらく今までのこと、まだ数日だが思い返しているのだろう。やはりまだ自分の気持ちを理解しきれないのか時折難しい顔をする。

稚那っちの事だからきっぱりと否定してくると思ったのだけれど、案外恋愛については前向きなのかしら。


「ごめんなさい。私余計な事言ったわね。無理に考えなくていいわ。喉元が破裂するなんて嘘よ」


「な、なんだどぉぉぉお!!??」


稚那は表情を急変させて私の胸ぐらを掴み叫ぶ。良かったと一息つきたい反面苛立ちを隠せないのが相まって顔半分の筋肉が緩んでいる。私はそんな稚那を引き寄せ頭を撫でる。

ダメだわ。何故だか稚那っちを見ていると守りたいって思っちゃうわ。これが母性本能かしら…

と、何かに目覚めそうになっていた私だが台所から大希の足音が迫ってくる。


「あら遅かったわね」


すき焼きの準備をするにはすこし遅すぎる。しかしながら大希が手に持っているのは私が持って来たすき焼きの材料がすき焼き用に来られているものだった。それにすこし申し訳なさそうな顔をしている。


「すまねぇ。すき焼きの具材渡されたけど何か違うやつでも作って驚かそうとおもってたら結局何も思いつかなかったんだ…」


「確かにすき焼きの具材はすき焼き以外考えられないものね」


元はと言えば私が違うものでも作ってみろと誘うような事が言った事が原因なのだが美味しく食べられるのなら問題はない。


「それにしても何してんだ?お前ら」


側から見れば抱き合っている私と稚那。大希は当然の反応だ。


「稚那っちが大希にもう一回デコぴたやって欲しいんですって」


「ふぁっ?!」


「また泣いてんのか!?」


大希はそう言って冗談まじりで額をまた稚那に近づけようとしたその時。


「ち、近づくなぁぁぁぁぁあ!!!」


稚那の口から大きな炎が放たれた。その炎に大希は全身を焼かれた。

稚那の恋は熱いわね。

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