ひきわけ!
「いいから王女である我にかまってないで早く行け!」
「はーい」
俺は稚那だけ残った保健室を後にした。
「わっ!」
「うっ、、、ってらみかよ…」
相変わらずの低いトーンで待ち構えていたのはらみだった。
「稚那っち、どうだったの?」
「大丈夫そうだったぜ」
「そーじゃなくて」
どうやららみが尋ねていた事は違ったらしい。何を尋ねていたのかを察した俺は答え直す。
「人間が好きになったってよ」
「そう?それはとても良かったわ」
あの組み手でどうして俺が勝てたのか分からなかった。さっき稚那の前では攻撃をこうやって攻撃を受け流したなんて言っていたが本当のところ俺も必死だったから脊髄反射に身を委ねた偶然の結果なのだ。
「やっぱりあれは躊躇いだったのね」
俺には理解できていなかったが観戦していたらみには見えていた。稚那が拳を突き出してから稚那が受け身を取れずに倒れる瞬間まで。
攻撃が当たりそうになった瞬間稚那は目を閉じていた。まるで何かを恐れているように。そして、攻撃が受け流された後の稚那の目は何かを壊してしまったかのような虚な目をしていたようにらみには見えていた。
それがずっと気がかりで俺を使って保健室で休んでる稚那に聞いたって事だ。使われていい気はしないが俺も聞きたかった事だったし悪い気もしない。
「でも人間が〜!人間ごときが〜!って言ってた稚那が、、、な?」
「稚那っちもツンデレなのよ」
「それにしても手加減されたとしても稚那のパンチ重すぎだろ」
あの瞬間を思い出しただけで手にピリピリとした感覚が走り出す。今はアドレナリンでどうにかなっているだけかもしれない。
「こっちから見てても稚那っちの馬鹿力は分かったわ」
「足だけで俺の体重を蹴り上げるなんか思ってなかった…」
「普通の女の子じゃあり得ないわね」
俺とらみはそんな事を話しながら教室へとゆっくり歩きだす。
「初めはさ、稚那を学校に通わせる気なんかなかったんだ」
「まあそれが普通の判断よね」
俺は初めて出会った時を思い出す。
「あの時はガチガチのコスプレイヤーだと思っていたけど、口から炎を吐かれて異世界から来たのが本当だと思った」
「あら、そんな出会いだったのね。そういえばちゃんと出会った頃の話聞いていなかったわね」
「そうだったな。そんで稚那をなんやかんなあって家に止める事になって俺が高校に行かないといけないっていう話をしたら『我も行きたい!』だってよ」
「なら、その時から少し人間に興味があったのね」
「恐らくな。だからお前や両親に協力してもらって今日から学校に通うようになった。そして出会ってからの短時間で稚那の口から『人間が好きになった』って聞けるようになった」
らみが足を止めた。
「とても嬉しいことね。でも大希は勘違いをしているんじゃないの?」
「勘違い?」
別に勘違いはしていない気がするけど…
「“人間“が好きになったんじゃなくて“大希”が好きになったんじゃないの?」
「お、俺が?!」
予想外のらみの言葉に驚愕する。だがらみの少し微笑む顔に少し安堵する。
「なーんだ。冷やかしかよ」
「意外と嘘でもないかもね」
「え?」
俺は安心して緊張が解けてらみのこぼした言葉を聞き逃した。
「なーんてね」
「ん??」
状況が把握できない俺を置いてらみは教室へと足早に戻って行った。
らみ、なんて言ったんだろ…
「稚那が俺のことを好き?んなわけ無いだろ」
自惚れる前に笑い飛ばし、俺も教室に戻ろうと廊下を歩く。すると後ろからタッタッタッタッと勢いよく誰かが階段を駆け登ってくる。
俺は後ろを振り返ろうとするが振り返るよりも早く音が近づいてくる。
「とりゃぁぁぁあ!!」
「グハッ!!」
弾丸の如く走ってきた音に俺は吹き飛ばされ、あまりの勢いにカーリングの様に廊下を滑っていった。そして体が重い。
「これで引き分けだ!」
「ち、稚那?!」
腹の上に馬乗りして俺の目の前に拳を突き出した稚那が嬉しそうに八重歯を光らせらている。
「降参だ…」
俺は両手をゆっくり上げて参りましたのポーズ。それを見た稚那は俺の腹の上で飛び跳ねる。
「うっ、おいっ!、、、苦しいっ!馬鹿っ!さっさとっ!のけっ!グフッ!、、、」
「おっと、これはすまぬ」
苦しむ俺に気付きヒョイっと稚那は跳ねのく。新手の心配蘇生かと思うほどの勢いに俺は息を乱す。
「これで一対一だ!文句はないな?」
「はいはい、分かった分かった」
おそらくまだ稚那は勝負しているのだろう。一見理不尽な勝負だが稚那は止めの合図を聞いていないわけだからしょうがない。俺は潔く負けを認めゆっくりと立ち上がる。
「もう大丈夫なら行くぞ?」
「我を心配しているのかー?人間のくせに生意気な」
下から覗くように面白がって尋ねてくる稚那。
「心配してんだよ。人間だから」
プシュッー!
大希の言葉に稚那っちは顔を真っ赤にして蒸気が飛び出る。
「どうかしたか?稚那?」
「いいから行くぞ!じゅぎょうとやらに遅れるではないか!!時間厳守なんだろ!?」
「おいおいっ!押すな押すなっ!!」
顔を真っ赤にした稚那は物凄い勢いで大希を教室へ押す。あまりの勢いに大希の体は反り切って目がどこかに向いていた。
それを物陰からこっそり見ていたのはらみでした。
「何か起こると思って隠れてたけどやっぱり満更でもないわね。あ、見てた事は内緒ね?」




