けっちゃく?
全く動けねぇ…
ここ一帯の空気が重い。俺と稚那がただ組み手を交わすだけなのに。誰もピクリとも動かずただただ時間だけが過ぎていく。
いつもなら相手の出方を伺って手を打つってのが俺のやり方なのに、なんであいつはあんなに余裕なんだ…
軽く腕を上げいつでもどこに攻撃が来ても大丈夫なように構える俺に対して、稚那は構えていると言うよりかはただ俺を見て立っているだけ。余裕と見えるポーズだが俺にはそうは感じられなかった。
スキだらけなのにどこにどんな攻撃をしてもやられるビジョンしか見えない。なんてプレッシャーだ、、、魔法…じゃないよな?
緊張する状態が続き、戦ってもいないのに体力がなくなっていくのが分かる。
このままじゃキリがねぇ…
「なら…」
「ほぉ?」
俺は構えていた腕を下ろし稚那と同じ体勢になった。この行動に周りはどよめき始める。さすがの稚那もすこし笑みを溢してしまう。
「諦めたか?人間よ」
「諦めじゃねぇよ。覚悟だ」
そう言い放った瞬間、俺は足を前に強く踏み出し稚那の一瞬のスキをついて右手を突き出した。
もらった!
「甘いのぉ」
「はっ?!」
俺の手は確実に稚那に当たっていたはずだ。だがそこには当たった感触がなく、ただ熱くなった拳が宙で冷まされているような感じがした。感じがしたではない。実際にそうなっているのだ。
完全に一撃を右へ躱された俺はスキだらけだ。次の攻撃に備えようとするが慣性が働いて稚那に背を向けざるを得なくなる。
「踊ろうではないか」
「ぐっ…」
なんとか体勢を立て直そうとしたが躱されたはずの右手を掴まれ慣性の力を促進するかのように受け流される。そして体勢を完全に崩された俺の浮き上がった足を下からすくい上げられる様に蹴り上げられる。
「うっ、、とー。。。」
危うく頭から転倒しそうになるが手を地面に咄嗟に突き出しハンドスプリングを決める。
「流石にやるではないか。しかし、まだまだ退屈じゃのぉ」
今の一交りで全てを察した。
人間が敵う相手でわない。
躱された時点で気づいていた。しっかりと相手の意表を突き確実に躱されない中段を狙ったにもかかわらず見事に躱されていた。さらには俺の勢いまでもを使って状態を崩し片足で俺の体重を蹴り上げやがった。
やはり、戦いのプロフェッショナルと言ったところか。
「お前も、、結構やるじゃねぇか」
ダメだ。勝ち目がねぇ。しかもあいつ手加減してやがる。さっき俺はなんとか手をついて頭からの落下を防げはしたけど、稚那ならついた手をそのまま蹴り払って落とせてたはずだ。
「何が起こったんだ?」
「アクション映画か?」
「もしかして上野負けるんじゃないの?」
「阿呆鹿ちゃん、強過ぎじゃない?」
「じ、次元がちげぇよ…」
初手からのあまりの激しさに観戦者が付いてこられていない。先生でさえも早すぎる動きに足が一ミリも動いていなかった。
人間にしてはなかなかやるのぉ。あんなにも見事に意表を突かれるとは…だが、我を捕らえるまでは出来なかったか。
「もしかして手加減したのか?」
我は挑発で大希をひやかす。
「本気じゃねぇよ」
答える大希は手をポキポキっと鳴らし余裕を見せる。だが、相手が半ば諦めているのは我には見えていた。だが、、、
「それでこそ倒し甲斐があるな!」
異世界の魔族をまとめる王女として負けるわけにはいかない。
今度は我から攻撃を仕掛ける。とりあえず先程のお返しと言わんばかりの右ストレートを入れる。
もちろん大希も持ち前の反射神経で避けようとする。そう思っていた。しかし我の右手を大希は手のひらで受け止めようとしている。
正気か?この勢いを本気で止めようもんなら骨が砕けるぞ…しかし、、、
この右手を止めようにももう止まらない。そして何故か我は目をつぶってしまった。その後の展開は身体が慣性のままに動いた。
「うぐっ!ふへぇぇ〜…」
気がつけば目の前が真っ暗になっていた。
どうやら大希に負けて気絶したようだ。




