ちゅうにびょう
「あの大希を下に見た?!」
「私たちじゃ絶対に敵わないのに…」
「大希の実力を知らないんじゃないの?」
「でも、大希のいとこってんならあり得る話かもな」
もうこの騒ぎと先生の戦意喪失で授業などそっちのけだ。それにしても俺に対する評判はすごい者だった。
やっぱ俺そんな風に思われてんのか…
当の本人はあまり自覚していない様子だ。
「稚那っちは大希と組んだことあるの?」
「正面からはやり合ったことはないのぉ。しかし、いつかはやり合いたいな、ま、我が片手だけで勝ってしまうのだけどな!」
ガハハハと声高らかに笑う。その笑い声はクラスの人には悪魔の笑い声のように聞こえた。
「稚那ちゃん、流石に大希には勝てないよ〜。だって組み手で無敗だよ??」
そう、聡が言った通り上野 大希は見た目はただの高校生男児だが組み手となれば負け無し、敵なしの最強高校生なのだ。特に瞬発力がずば抜けている。さっき見せたチョーク避けなど朝飯前なのだ。
「なら、俺と次の授業で組んでみるか??」
俺は稚那にいわゆる決闘を申し立てる。
正直全くもってわからないなぁ〜。魔法なんか使われたら敵わないだろうけど、使わないなら勝てるかもな。
しかしながら今日の登校時、俺を乗せても体感を崩さず家や塀を軽々と飛び越える様を思い返すとパワーは比にならない事に気づき背筋が凍る。
「おう、受けて立とうではないか!ま、魔法は勘弁してやろう」
「魔法??」
「あわっ!?」
うっかりと口を滑らせて周りに変に思われてしまった稚那が口を押さえて嫌な汗をかく。
「あ、あれだよ!魔法ってのは…」
稚那のやらかしに慌てて俺がフォローを入れようとするがなかなかに良い言い訳が思いつかない。そしてとっさにこう言ってしまう。
「稚那は厨二病を拗らせてしまったもんだから、えっとえっと…」
流石の嘘に俺は次に並べる言葉を必死に探すがもう並べる言葉はなかった。
ちょっときつかったか?!流石に厨二病なんて今時いないもんな。
「大希、流石にそれは…」
周りの反応は呆れかえっていた。
「やっぱりか…」
もう言うしかないのかな。でもこいつらなららみみたいに受け入れてくれるのかも…
そして俺が諦めて秘密を言おうとしたその時だった。
「大希、流石にそんな事は分かりきっているよ」
「え?」
言われたことが一瞬なんのことだか分からなくなる。
「稚那ちゃんが厨二病なんて見たら分かってたよって」
「あ、あ〜。。。ふぅ」
変に信じてくれてよかった〜!!
嘘だと気付かれる事なく伝わった事に俺は一息つく。よく考えれば稚那の言動や容姿は完全に中二病を極めし者だった。
「だって一人称が“我”ってねぇ〜」
まぁ稚那はいい気はしないだろうが自分で蒔いた種だし、なんなら厨二病の意味だって知らないだろうからいいか。
俺の予想通り稚那はその頃「ちゅうにびょう??」という顔をしてる。
「なら普通に大希が勝つんじゃねぇの?稚那ちゃんの思い込みかもしれないし」
「何を言っているんだ!我が勝つに決まってるだろう!!」
当然稚那が厨二病という設定になると稚那が大希に勝てるなどと大口を叩いてる様に聞こえてしまう。それに稚那のプライドが許さない。
「でも流石に大希の瞬発力には勝てないでしょ〜??」
「あんなの我には容易すぎるわっ!」
稚那がただの厨二病ではないと俺に張り合おうとする。
「おい、そこの先生とやら。我には大気と同じようにもう一度チョークを我に投げてみろ」
「私のことですか…いいでしょう。上野くんには避けられましたが、今度はそうはいきません!」
いつまでやる気なくしてんだよ。てか、授業しろよっ!
さっきまで俺にチョークを避けられた事に萎えていた先生が急にやる気になる。
「いきますよっ!!」
「やめておいた方がいいと思うなぁ〜。大希にしかできないよ〜」
「ばっちこーい!!」
先生は稚那の額に照準を合わせる。そして先生は精神統一を図る。
「私はさっきまでの私とは違う。喰らえっ!チョーク投げ・改!!!!」
大きく振りかぶって投げた次の瞬間、投げられたチョークは弾丸の如く回転数を増しながら稚那の頭へと目にも留まらぬ速さで教室を走り抜けた。
そしてチョークに反応はできたものの当たりどころが変わった程度で稚那に直撃した。




