かくせるものはかくそう!
魔法実験場とか大口叩いて来たけれどただのだだっ広い空き地なんだよなぁ。
しかしながらこの空き地、異世界とかに広がってそうな高原になっている。少し前まではここに超豪邸が建っていたんだけどそこの主人がある日近所の人にカツラがバレてしまって引っ越したんだとか。。。まぁその結果を招いたのは俺だったんだけど…
少し昔の話。俺がまだ小学生の頃の話だ。家族で買い物がてら散歩をしていた。すると例の豪邸の主人が通りかかったのだ。
「ねね、お母さん!」
「何?大希ちゃん」
「あのおじさん髪の毛が変なの〜」
そう、この若かりし頃の俺は可愛いのは当たり前だが、違和感に敏感でそして当然ながら空気を読めるはずがなかった。この時主人は自分のことではないかと立ち止まってしまっていた。そこまではまぁなくもない話なのだが…
「あーダメダメ大希ちゃんほらあっち行こうな」
まだマナーがなっているパピーはその状況を察し遠ざけようとしてくれたのだ。が、、、
「パパ?そんなのに目を背けてちゃ大希ちゃんが立派な子にならないでしょ?!」
結論を言おう。結果的にこの事態を招いたのは幼き頃の俺だったが、戦犯は間違いなくマミーである。
「はぁ。しかしだなマナーという物が…」
「これだからマナーだからといって嘘をつくような大人は!!」
このパピーに対するマミーの怒鳴りで周囲にいた人の注目が集まる。
「いいことパパ?確かに優しさの嘘はあるわ。でもねそれだけじゃこの世の中はやっていけないのよ!」
幼き俺はまだ思春期を迎えて居らずツッコミというものを習得できていなかった。今の状況なら俺はこうツッコんでいた。
いやマミーたかがカツラだから!そんな死と隣り合わせな世界で仲間にかける言葉みたいに言わないで!!
「それでもママこの人だってかわいそうじゃないか…」
その通りだパピー。豪邸の主人だって周りに注目されてあたふたしてるよ。
「パパ!いい加減に目を覚ましなさいっ!」
ぁぁぁぁあ!!主人のカツラ脱がしちゃったよマミー!これがマミーの秘技・朝の惨劇《とくダネ!のトラジディー》か…
「あらやだあそこの主人カツラですって」
「まぁ神々しいこと…」
やめてあげて周りの奥様方この人は何にも悪くないんです。悪いのは俺のマミーなんです!
と、まぁこんな具合に豪邸の主人のカツラはバレてこの街を出て行ったわけであって今のこの空き地だ。俺の両親はその後もカツラほどじゃないけど色々やらかしてるもんだから今は外国で勤めてるって解釈でも間違ってないかもしれない…
まさか高校生にもなってこんなカツラと共にはぎ取られた家の空き地に来ることになるとはな。
「おい人間!ここが 魔法実験場か?!」
「そうだよここが寂しき大地ないし、魔法実験場だ」
「おー!ここにはそんな二つ名があったのか!!」
そんなのねぇよ、ただの空き地だ。まぁこの広い空き地ならある程度の魔法も大丈夫だろうし、人通りも少ないから問題ないだろう。
「よーし、早速魔法を見せてもらうか」
「おっ?!もうやっていいのか?!」
「おう!いいぞー、言っただろ?今日はお前の本気が見たいんだっ」
流石にここなら…
「ではでは、手始めに破滅の波でも出してやろうかな!?」
「それはダメだ馬鹿!流石にここ半径1キロもねぇよ!!」
気が済むまでのんびり昼寝でもしてやろうとか思ったけどこりゃ目が離せねぇな。ていうかさっさと尻尾とツノをどうにかしてもらうか。
「なぁアホ馬鹿王女」
「貴様いい加減その呼び方をやめろっ!我は稚那だ!」
「ならお前も…稚那だって貴様呼びやめろよな」
「仕方ないのぉ。それで大希?何か用なのか?」
うっ、名前呼び思ったよりもくるよなぁ。平常心、平常心…
「あのだな、この世界じゃお前のその尻尾とツノはおかしいんだよ。つまるところ、その尻尾とツノ隠せないか?」
「なぜ隠さないとならんのだこの尻尾とツノはドラゴニオンであるという象徴に値するのだぞ?」
「いやいや、さっきも言ったけどここじゃそれは異質なんだ」
「そーなのか?貴様の部屋の色が刻まれた紙には尻尾もツノもあったではないか」
色が刻まれた紙?そこに尻尾とツノ??…もしかして部屋のタペストリーの話か。確かにあの推しは尻尾とツノじゃなくて獣耳があるけども。
「あれはだなぁ、架空の人物であってだなぁ、、、」
「つまりは会うことのできない存在なのだな。しかし、貴様は何故そんなものを壁に貼っつけているのだ??会えもしないのに」
「グハッ!会えないとか言うんじゃない。毎日ちゃんとデートしてお世話しているんだ!例え会えなくてもあの子はいつも心の中にいるんだ…」
「なんだか気持ちが悪いのぉ…」
話が逸れてしまった。てかそろそろ、隙あればすぐ推しに対する愛をあらわにしてしまう癖なおさねぇと…正直もうひかれたくない(本音
「ま、まぁそのお前の格好は学校では駄目なんだよ。学校に行きたかったらその尻尾とツノをどうにかしろよ?」
「むむ〜、人間の学校に行く為に、か、、、」
流石にあれだよな〜。多少はこっちの世界にも慣れてきているんだろうけど、まだ元の世界の感覚は強く残ってるんだろうなぁ。
「やっぱり人間だらけの学校はやめておくか?」
しかもこいつは元々人間を敵対していた魔人軍の王女。無理もない。親にはすまないけどこいつの意見を尊重しよう。
「いや、我は学校に行くぞ!」
お、そっちを取ったか。流石にプライドが許さないとは考えてたけど…ふーん。実はもう人間が好きなんじゃ??
「そーすれば人間の弱点などわかるかも知れんからのぉ」
「そっちかいっ!」
「それ以外何があるのだ」
まぁそれ以外なかったよな。
「で、尻尾とか隠せるのか??」
「そんなの余裕だっ!!と、言いたいところなのだが生憎ここで使えるかどうかは、という感じだ」
「まぁそのために来たんだし、頑張れよ」
失敗したら失敗したでその時だ。どうせ学校の校則は緩いしなんとかなるだろう。
「よーし、では早速…」
お、ちゃんと安心して魔法見れるのは初めてだな。今回はどんな魔法なんだ??詠唱も楽しみだ。
「八足流変幻術、、、」
あれ?ドラゴニオン血術じゃねぇの?!てっきりあんなにドラゴニオンドラゴニオンってこだわってたもんだから今回もとは思ったけど…
「擬態!!、、、どうだ?見えなくなったか??見てくれ人間よ」
おーみるみると消えていった。けれど…ちょっと待てよ〜?まずは頭。緑色の髪があって二つのツノは…なし。そして尻尾。は、ないな。
「よし!成功だ稚那」
「流石は我だな〜!とはいえこの魔法は使えるのだな。この感じだと攻撃系の魔法があまりこの世界では使えないのか?…」
「え?この前風の攻撃魔法使えていたじゃねぇかよ」
「この前の風の攻撃魔法?もしかして風噴火のことか??」
「あーそれだよ。あれなんか攻撃に使えるだろ??」
「なはははっ!笑わせるな人間!あんなの補助魔法だぞ?」
「あれが補助魔法?!」
「まぁ確かに前みたく攻撃にも使えない事はないが戦闘時には我が空中で急加速したり急旋回する為に使うのだ。つまり人間に分かりやすくこの魔法を例えると応援グッズとしていた使っていたのに雨が降ってきて少しは役に立った傘みたいなところだな」
「お前がなんでヤクルトの傘を知ってんだよっ!?」
「昨日てれびと言うもので見たぞ」
「はぁ。よく覚えてるもんだなぁ」
それにしても問題だったツノと尻尾も隠せた事だしとりあえず一安心ってところか。まぁせっかくここに来てるんだしもう少しここで魔法の事と稚那も調べておこう。
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