帰郷
あけましておめでとうございます。
「いやぁ。お疲れ、お疲れ!」
目の前には見知った顔のおっさんが、ソファーで大層くつろぎながら俺に向かって話しかけてきていた。
こいつがいるってことは…つまり、俺は死んだのか。
「あんたがいるってことは、俺は死んだんだな」
「ん?あぁ、そうさ。ギリギリだったけど、なんとか浄化転生可能期間まで生きてくれたよ。ホント、お疲れさん」
人の死を喜びやがって…。グラサンスーツでオールバックなんて格好してるから、そんなこと言ってるとどっかのマフィアみたいだぞ?
「しっかし、君も短命な人生を送るねぇ。今回の死亡年齢は、確か47だっけ?」
「一度目は誰のせいだ?誰の?」
お前のせいだろうが。
「…悪かったって。だから魂の浄化無しで転生させてあげたんじゃないか?」
「それがお前らの仕事なんだろ?人を凡ミスで殺しやがって」
最初はさ、ただの事故で死んだんだ、て思ったら悲しかったけど不運だったって理解はできたんだよ。けどさ、初めてこいつに会って話した時に教えてくれやがったけど俺が死んだ事故、こいつらのミスで起きたんだと。
つまり間接的とはいえ、こいつらに俺は殺されたんだよ。納得できるか。
「17だぞ?まだ大人になってなかったっての!」
確か因果の調律で失敗したとか何とかだったと思う。初めて会ったときに、そう言われて土下座されたがそのときは俺もよくわかってなかったら、許してしまった。
今思えばふざけんなって話だよ。
その後俺はそのお詫びとして、浄化無し、つまりは記憶とか経験は残ったままで異世界に転生することになった。
えっ、テンプレかよって?確かに当時は本当にこんなこともあるんだなぁ、て思ったけどね。
「で何のようだ?わざわざまた呼び出して」
俺、無事人生を全うしたってことでしょ?前もこんな生活感のあまりない部屋で会ったけど、何でまた同じようなとこに?
「いやね、こちらの事情で迷惑をかけちゃったし。しかもしっかりと人生を全うしてもらったわけだから、最後にもう少しお詫びをしようと思ってね?」
「…というと?」
「うん。ここでね、もう自由にのんびりと好きに生活していいよ」
うん良くわからない。もっとちゃんと説明せい。
「ちゃんと?うーん、そうだなぁ。ゲームでいうクリア後みたいな?それに飽きたら浄化転生してもらう感じだね。死ぬまでにやり残したこといっぱいあるでしょ?」
あぁ、なるほど。エンディング後のDLCやサブイベ回収みたいだと思っておけばいいか。
うん、それなら心は決まっている。さて答えるならお早めに、即答しましょう。せーの、
「断る」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
初投稿です。手探りながらも頑張って生きたいと思いますのでよろしくお願います。