表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現実はそう甘くはない。  作者: さくらりん
5/7

「「「「「かんぱーい!」」」」」

「…乾杯。」

「いやー、1か月ぶりか?この集まりも。」

「なかなか休み会わないもんな。」

「そりゃそうだ。ほぼ同じ職場だ。」


ゲラゲラ笑い声が響く。今は夕方なのに、店の奥から罵声が聞こえる。


「父さん、定休日ってなに?」

「息子よ。知らなくてもいいことってあるんだぞ。」

「いや、でも、なんか、男の人泣いてない?」

「「「「「触れてはいけない領域と言うものがあるんだ。」」」」」


親父たちの真面目な顔に頷くしかない。


「で、なんで息子さんいるんすか?」

「あー、こいつも、ついに仲間入りってことよ。」

「「「「ようそこ!大人の入り口へ!」」」」

「なんだよ、大人の入り口って。」

「少年の夢をボロボロにされたんだろ?」

「あれきっついよなぁ。」

「いたいけな少年の夢だっつーの。」

「俺は海賊王で、奥さんにばれたとき3時間拘束されて話されたっす。からだ作りから、カイケツビョウの恐ろしさ、海の怖さ。もう、途中から怪談話だったっすよ。」

「俺は魔王だったなぁ。魔力なしって鼻で笑われながら、あんたが魔王になる前にあたしが殺してやるっていわれたわ。」

「お前の奥さんこえーな。俺はハーレムだったぞ?次の日なぜか、5人の女の子に囲まれてボロくそに言われたがな。」

「「「「鍛冶屋のエロガキってお前か?!」」」」


酒がはいった親父どものテンションは上がる。


「ハーレムは夢だろぅ。かわいいこに囲まれるんだぞ?」

「で、鬼にかこまれたってか。」

「お前の嫁も含まれてんだぞ?まぁ、確かに女は可愛いだけじゃないことを思い知らされたな。」

「ねぇ、みんなはなんで夢をすてたの?」

「捨てたって訳じゃないけど、現実見るようにはなったな。」

「俺の夢は将軍だったし、努力はしたぞ?で、将軍より街警備のが性にあってるっておもっただけだな。」

「俺はまだハーレムを諦めたわけではないっ!」

「「「「黙れ!酔っぱらい!」」」」

「先輩、奥さんにめっちゃ管理されてたっすよね?」

「だな。むしろ、調教だな。」

「じゃぁ、なんでこんなこと言えるの?」

「「「「大人の入り口から離れられないだけ。」」」」


酒が進む。飯も進む。会話が進む。ほとんどがくだらなくて、どうしようもない話だけど、すごく楽しそうな姿に、ちょっと憧れた。


「まぁ、なんだ。何をしたいかは、知らないが、ちゃんと努力すればいいんじゃねぇか?」

「だな。何にも考えてないから、女性陣もぐだぐだ言ってくるんだしな。」

「相談したら、親身になってくれっだろ。」

「「「「「一生からかわれるけどな。」」」」」


お開きとなり、お店のおばさんに「あんな大人たちには絶対になるな。」と釘を刺されて、店を出た。


「ちょっとは納得できたか?」

「正直微妙。」

「まぁ、そんなもんだろ。でも、努力してみてから、また母さんに言われたこと、俺らが言ってたこともう一度思い出せればいいかもな。」

親子二人で家路へ。昨日よりもここがゲームじゃなくて、現実なんだって思える。

「で?フラれた子とどこまでしたんだ?」

「あ?!酔っぱらい!何いってやがる!」

「え?何もしてねーの?知識とられただけ?マジお前俺の子か?!」

「うっせー、エロ親父!母さんに今日聞いたことチクってやる。」

「え?まって?どのこと?ちょーっと、まって。お話ししよう?」


家に帰って母さんの前で正座をする父さんの横で、お土産がないと妹に説教される俺は、もう少し今を知ることにする。知識チートをつかうのか、つかわないのかだけじゃない。自分が将来どうなりたいかを考えなくちゃいけない。


でももう決まってることがひとつ。


優しい奥さんがほしい。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ