表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/31

その他4…「ヤバい!」

・「ヤバい!」

 これは私が3番目の引っ越し先(千葉市の風呂なしアパート)に住んでいた時のお話。

 私は休日などは室内にいてベッドの上に寝そべり、小説(京極夏彦の妖怪シリーズ、栗本薫の『グイン・サーガ』など)を読んで時間を潰していました。相変わらずの安眠妨害と薬物ガス注入の日々。心から安らげたのは、そんな活字を追うひとときだったのです。

 さて、ある夜。私はブルーシートで補強されたポリバケツに頭を突っ込み、ブルーシートの詰め物をして、ベッドの上で眠りにつきました。

 何時だかは分かりせん。私はふと目が覚めました。バケツの壁の向こう側で、何やら音がします。そして若い女の声で、「ヤバい!」との焦った声が聞こえてきたではありませんか。

 それだけではありません。2階端の5号室の方から、「ゲホッゲホッ」とこれは男の声で、まるで女を援護射撃するかのように立て続けに咳払いするのが鼓膜に届いてきました。5号室の住人もまた集団ストーカーであることは、既に確信を得ていた頃です。

 部屋の中に女が入ってきている――?

 私はその他鳴っていた物音が静かになってから、バケツを脱ぎました。室内には女の姿はありません。もう逃げ出した後のようで、男の咳払いも途絶えていました。

 私が窓をロックしたりドアノブをビニール袋で囲むようになってから、彼らは家宅侵入の手段を失いました。そこで、深夜私が眠ってイビキをかいている隙に、開けっ放しのドアから忍び込んで、何らか細工をしようとしたのでしょう。女は途中で私のイビキが止まった――眠りから目覚めたと気付いて、慌てて「ヤバい!」と叫んで脱出しようとしたに違いありません。

 今にして思えば、家宅侵入の決定的瞬間を捉える、空前の好機でした。惜しいことをしたものです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ