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ハルシャ=ナーマ  作者: 菩薩
嚆矢の章
8/32

第8話 ハイパーリーブ

同時刻、スルメ倶楽部は北の森で焚火を囲んでいた。

出発した時間が夕方ともあって、北の森特有の針葉樹林が見えた頃には、蒼白い月が顔を出してしまっていたのだ。

そのため大した獲物も取れず、パーティーはサンバドル村で手に入れたボノンゴの丸焼きを齧りつつ明日の打ち合わせに徹していた。不意に猫娘が立ち上がり、ズボンのポケットから真珠の様な白く輝く玉を数十個地面にばら撒いた。瞠目し、何度も頬をつねるアーシャ。


アーシャ「す、すごい……! 森の中に真珠が……フレイアさんどこで見つけたんですか!?」


フレイア「違うニャ。それはリーブニャ」


アーシャ「リーブ!? 何ですそれ! とってもお金になりそうですね!」


息巻いて猫娘に詰め寄るアーシャに、スルメを湯に浸し出汁を取っていたハゲスルメマンが答えた。


ハゲスルメマン「そうか、アーシャくんはまだ戦士になって間もないからリーブを知らんのだな」


ハゲスルメマン「森羅万象全ての動物が体内で生成する生命力の塊、それがリーブだ。モンスターを倒せば肝臓辺りからボロボロ出てくるぞ、明日試してみたまえ」


リーブは商人の間でもメジャーな商品で、輝きが強い物ほど高額で取引されるらしい。

世界には特に輝きの強いハイパーリーブが21個あり集めると願いが3つ叶うのだ、とハゲスルメマンは説明の最後につけ加えた。


クラリス「ま、そんな代物滅多に手に入らないし、14個はLunaticの奴らがくすねていっちまったんだけどね。あと7個、どこに隠されているんだか」


ハイパーリーブの所持数が多い分だけ、ギルドの名声も比例して上がってゆく。

Lunaticは実力だけでなく、他ギルドからハイパーリーブを奪う狡猾さも兼ね備えていたのだ。


アーシャ「で、でもハイパーリーブを集めれば願いごとが叶うんですよね? ね?」


アーシャが何を望んでいるか、他の4人はすぐに悟ったがあえて返答しなかった。ほとんどのハイパーリーブをLunaticが保有している以上、奪うとあれば戦いは免れない。友を取り戻すため、友と殺し合わねばならぬとはなんたる皮肉か。

アーシャもそのことを理解していた。理解はしていたが、口に出すとそれが現実になってしまう気がした。

義の闘将が悔しそうに唇を噛み締める。


足利義輝「友を裏切る者なぞ、またいつか同じことを繰り返すに決まっておる。拙者が貴様なら、とうに斬り捨てている」


目を閉じた彼の瞼に、自分が討たれた時の光景が鮮明に浮かんだ。良き臣下であり良き友であった、松永久秀。その久秀が畳を盾に、自分を害そうと刃を向けている。

将軍を討つ喜悦に双眸は爛々と輝き、時折だらしなく開いた口からは哄笑が漏れ、卑劣さに満ちた表情をしていた。


足利義輝「久秀……義を知らぬ哀れな男よ。貴様が今どこで何をしているか、拙者は皆目見当もつかぬ」


足利義輝「だが拙者は信じるぞ。きっと貴様が改心し、新しい主君に揺るがぬ忠誠を誓っていると……」


熱い涙が義輝の頬に伝う。気づいたクラリスが物珍しげに覗き込んだ。


クラリス「へー。義輝って意外と泣くキャラなのね。なに、アーシャに同情してるの?」


クラリス「あたしはもうそんなの飽きるまでやられたから、痛くも痒くもないんだけど」


無表情でボノンゴの身体に串を刺し、焚き火に突っ込む。肉の焼ける香ばしい薫りに包まれ、アーシャは地面に広がるフェルトの敷物に身体を預けた。

夢を見るのが、怖かった。

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