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聖なるダンプ  作者: クリストフ・ドメニコ・ケルビーニ
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第三話 救済院

あれからおれたちは、おとなしくなったあの化け物を何とか梱包し、ママーレがトラックですぐさま運ぶことになった。

速達だからだ。

ママーレとチャオマーは、化け物の箱にぬいぐるみや犬の写真を入れていた。

化け物があれで喜んでおとなしくなるとでも言うのだろうか、やはりこいつらは頭が変だ。

おれはママーレに言われて、手伝いについていくことになった。

トラックは市街地を走る。

「お前を家に置いていってもいろいろと不安だからな。チャオマーのやつは気が利くタイプじゃないし。

チャオマーってのはあのバールを持ったうるさい奴の名前だよ。チャオマー・ガレットだ。」

「そうなのか。」

まだあの化け物にぶん殴られそうになった時の恐怖がぬぐえない。

あんなやつはジャングルでは見たことがなかった。

気を紛らわそうと外を見ても、町の景色は妙なものだらけで、さらにおれの精神を摩耗させた。


その中でもひときわ妙なものが見えた。

10メートルほどの塔があり、そのうえで巨大な像か何かが高速回転している。

回転が速すぎて、像の形はよく分からない。

「あれはなんだ?」

「ありゃあ守護者の御神体だな。どこにでもあるよ。

熱心なやつは供え物をしたり礼拝しに行ったりしてる、まあ市民の心のよりどころだな。」

「あんな大きなものをどうやって回しているんだ?」

「像を作ってしかるべきところに置く、すると自然に回転し始めるんだ。

守護者さまのパワーがそうさせるんだとよ。

あの回転を発電機に応用しようとしたやつが大昔にいたんだ、像に磁石を付けたりコイルを設置したりしてな。

ただ、そういうことをしようとすると、なにかとんでもない災いが降りかかるらしい。

今の時代に、そんなことを試すバカはいないがね。」

「すごいな。」

おれはしばらく、像の神秘的な回転を見ていた。

どこからか、酷く傷ついたカラスがふらふら飛んできて、像の回転に巻き込まれていった。

カラスは一瞬で血煙に変わり、霧散した。

守護者のパワーが精神を救ってくれることをどこか期待していたおれの心は、哀れなカラスと共に粉々に打ち砕かれた。


「あの化け物はどこに運ぶんだ?」

「こいつはアキレア救済院の支部行きだな。」

「救済院?あの化け物を救うのか。」

「正確には違うな、救ったフリをする奴らだ。いわば誘拐のマッチポンプだな。」

「どういうことだ。」

「次元漁師は知ってるか?

簡単に言うと、別の次元に定置網みたいなものを張って漁をするやつらだ。

俺も詳しくは知らないが、有用なもの、やばいもの、いろいろ獲れるらしい。

そいつらの網に、知性を持った生き物の子供がかかることがある。

そういうやつらを買い取って、『私たちが悪人から救助しました。』と言って親元に返して謝礼を貰うやつらだ。

漁師の中には救済院と結託して、わざわざそいつらを狙って漁をするやつもいるって噂だぜ。」

「なんてやつらだ。」

あの化け物は被害者で、しかも子供だったとは。

おれは少し同情した。

「そんなことをしてバレないのか?」

「そこらへんを上手くやるのがあいつらの仕事だ。」


あのボロ屋を離れてから30分は経っていると思う。ママーレの運転は酷く粗い、尻が痛くなってきた。

さっきのバイクといい、こいつらに安全運転という概念はないのか。

「あそこらへんだ、見えるか?屋根のとんがったやつ、そこが救済院の支部だ。

あそこで引き渡すんだ。」

「見えんぞ。」

「あれだ、あれ?どうなってんだ?」

ママーレの指した先では、黒煙がもうもうと上がっていた。

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