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第8話

「…………」


 ……え~と、今はどういう状況だ? 意味が分からなすぎてパニックなんだが。

 これは夢か? そうだ、そうに違いない!

 とりあえず頬を引っ張ってみよう。

 イテテッ!

 少し強く引っ張りすぎたな。

 これで目が覚めてベッドの上……ということはないか。どうやら現実のようだ。


 こうなったらまずは落ち着け。そして状況整理だ。

 現在の状況、俺が全裸で風呂に浸かっている横で奈央がシャンプーで頭を泡立ている。もちろん邪魔なのでバスタオルはどけて、だ。

 つまり一糸纏わぬ姿……全裸。

 俺は風呂の時にバスタオルを持って入らないので体を隠すことも出来ない。いや、別に上半身は見られても恥ずかしくないけど。

 俺の体はよく鍛えられて引き締まっているからな。むしろ見せたいぐらいだ。

 ……さすがにそれは言い過ぎだな。俺にそんな趣味はない。まだ混乱しているみたいだ。


 それにしても奈央は綺麗な体をしているな。予想通り着痩せするタイプとかではなく普通におっぱいは小さいが問題はない。

 俺は巨乳、貧乳どっちでもイケるからな。垂れているおっぱいだけはNGだが。

 お尻は小ぶりながらも引き締まっており、足はスラッと伸びていて美しい。あの足で踏まれると気持ち良さそうだな。

 どことは言わないが。


「……あの、お兄ちゃん。さっきから舐め回すような視線を感じるんだけど」


 奈央が頭のシャンプーを洗い落としたところで視線だけこっちに向けて遠慮がちに言ってきた。

 体が僅かにだが震えている。今日会ったばかりの男に裸を見られて恥ずかしいのだろう。

 いや、怖い可能性もあるか。この状況、襲われてもおかしくないからな。

 襲わないけどね? 襲わないはずだ。襲わないと思いたい。

 何、この意味の分からない三段活用は? 段々、自信がなくなっているじゃないか。


「失礼だな。見惚れていただけだ。舐め回すような視線なんてしていない」


「……見ていたことは否定しないんだ」


 そりゃ、実際に見ていたからな。

 下手な言い訳は男らしくないからしない主義だ。


「ていうか、何で俺と一緒に入っているんだよ? 誘った覚えはないぞ」


「さっき私も鈴音さんに酒をかけられてね。それで『運が良いことにシュウくんも入っているから、兄妹で仲良くお風呂に浸かってきたら?』って言われて」


 やっぱりまだ暴走していたのか。あの人、酒癖が悪くて酔うとすぐに人に酒をかけるからな。困ったものだ。

 ていうか、運が良いことにってどういう意味だよ。全く意味が分からない。むしろ逆だろ。


「断らなかったのか?」


「断ろうとしたんだけど、強引に押し切られちゃってね」


 手でボディーソープを泡立てながら奈央は苦笑する。

 その姿は容易に想像できるな。

 俺も断ろうとして押し切られるなんてよくあることだし。

 ……悪い人ではないんだけどな。相手が本当に嫌がることは絶対しないし。


「綾音はとめなかったのか?」


「その時、食器を片付けていていなかった」


「透さんは?」


「兄妹だったら問題ないだろう、だって」


 いや、問題あるだろ。俺達は兄妹といっても今日会っはばかりなんだぞ。仮にそうじゃなかったとしても高校二年生という時点でマズイ。透さんって基本的には常識人なのに変なところで抜けているよな。まぁ、そうじゃなかったらあんな変わった人と結婚しないか。


「まぁ、日本には裸の付き合いというものがあるしな。背中でも洗おうか?」


 そう言うと奈央は手で自分のおっぱいを隠しながらジト目で俺を見てくる。

 何か変なことでも言ったか?


「……どさくさに紛れて胸とか揉んだりしないよね?」


 ……俺の信用度、低いな。そんな疑われることをした記憶はないんだが。

 もしかして今も普通に奈央の裸を見ているからか?


「それは自意識過剰だ。揉めるほど大きくないだろ」


「……殴っていい?」


 奈央が右手を力強く握りしめる。

 その目は明らかに本気だ。奈央に胸の話は禁句だったか。次からは気を付けよう。


「安心しろ。代わりにお尻をどさくさに紛れて揉むから」


「どこにも安心できる要素がないから!」


「嘘だ。妹にそんなことするわけないだろ」


「今日会ったばかりの女を妹と思うことは出来ない、とか言っていたような気がするんだけど?」


 ああ、そんなことも言ったような気がしないこともないな。確か家に帰ってきて奈央の荷物を運ぶ時だったか。


「それは昔の話だ。今はもう奈央を妹だと思っている」


「……言われてから数時間しか経ってないんだけど。この短時間の間にどんな心境の変化があったのよ?」


 男子三日会わざれば刮目して見よ、と言うが俺の場合は三時間もあれば成長する。分かりやすく言うと妹を性的な対象として見れるほどに。

 より正確に言うなら禁断の恋とか興奮するな、と思っただけでまだ奈央を妹として認識できているわけではない。


「ただの冗談だから気にするな。まぁ、奈央がOKだったら本当に揉んでいたけど」


「セクハラ発言を何でそこまで爽やかに言えるのか私には不思議だよ」


 不思議って言われても困るな。俺は普通にしているだけだ。

 むしろ他にどんな言い方をすればいいんだ?


「で、どうする?」


「いや、どうもしないから」


 ハッキリと断られた。残念だ。

 とはいえ本人が嫌がっていることをするわけにはいかない。今回は諦めるか。


「あ、でも私がお兄ちゃんの背中を洗うのなら良いよ……?」


 奈央がシャワーで体を洗いながら恥ずかしそうに頬を赤らめる。

 可愛すぎる。妹じゃなかったら今すぐ告白しているレベルだ。

 普段なら喜び勇んで背中を洗ってもらうところなんだが今は無理だ。何故なら俺はバスタオルを持っていない。

 つまりアレを隠すことが出来ない。さすがにそれは恥ずかし過ぎる。


「……誠に遺憾ながら今回は断らせてもらおう」


「そこまで悔しがるようなことなの!?」


 そりゃ、そうだろう。美少女に背中を洗ってもらうなんて男からしたら最高に幸せなことだ。

 だがチャンスは今回だけではないはず。次のチャンスは逃さないようにしないと。

 そのためにもバスタオルはちゃんと持って入るようにしよう。


「それより体を洗い終わったなら変わってくれ」


「……え? まだ洗ってなかったの?」


 汚いものを見るような目で奈央が風呂を見てくる。

 女の子からしたら男が入った後の風呂に入るのが嫌なのは分かるが、そこまで警戒しなくてもいいだろ。傷付くぞ。


「大丈夫だ。ちゃんとシャワーを浴びてから風呂に入ったから」


「そうなんだ」


 奈央は安心すると体をバスタオルで隠しながら俺と場所を交替する。

 今さらバスタオルなんかいらないだろ。もう見られているんだから。

 まぁ、露骨な裸よりも少しぐらい隠れている方が興奮するけど。チラリズム的な意味で。

 見えそうで見えないギリギリのラインが一番だ。


「あ、俺の筋肉は好きなだけ見てもいいけど下半身は見るなよ」


「……見ないよ」


 シャワーからお湯を出したところで思い出したように言うと、奈央は恥ずかしそうに顔を背ける。

 その頬は僅かに赤い。風呂に浸かっているからではなく羞恥が原因だろう。


「シュウくん!」


 いきなり綾音が凄い勢いで風呂場の扉を開けてきた。

 何か目が怖いんだけど……。


「綾音も俺達と一緒に風呂に入りきたのか?」


「そうじゃなくて何で奈央ちゃんと一緒に入っているのよ!?」


 ああ、鈴音さんから事情を聞いて焦って止めに来たのか。遅かったな。


「別に兄妹なんだから問題ないだろ?実際、変なことはしてないし」


「そういう問題じゃ……」


 急に綾音の動きが固まった。

 その視線は俺の股間部分に固定されている。そんなに気にしなくてもいいだろ。小学生ぐらいまではよく一緒に風呂に入っていたんだから。


「キャァァァッ!変態ぃぃぃぃっ!」


 綾音が顔から湯気が出るんじゃないかと言うほど顔を真っ赤にして悲鳴を上げながら走り去っていく。

 俺は即座に「自分から覗いておいて変態はないだろ!」と叫ぶが綾音には届いていないだろう。

 それにしても変態は酷いな。こんな状況なんだから仕方ないだろ。

8話終了です。


では感想待ってます。

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