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僕は今、異世界にいるようです

「あなたの名前は?」

「竹内省吾です……」


 さながら刑事ドラマの取り調べといったような趣だった。


「なぜ東地区のあの廃屋にいたんです?」

「わかりません……」


 それこそ警察官のような制服を着た、しかし同じ年頃の少女と受け答えをしながら、省吾は考えていた。なぜこんなことになっているのだろうと。


「では、あなたの住所は?」

「はあ。多分ここから見て、異世界に住んでいます……」


 尖った耳のその少女は、怪訝な顔で省吾を見た。

 そう、彼、竹内省吾は今、おそらくは異世界にいるのだった。



 あれは省吾の感覚で、まだ数時間前の出来事だ。省吾は文化祭前日の夕方、クラスの出し物として用意していた作品を台無しにしてしまった。専用の紙で作った高校校舎の大型の立体模型の一部を、転んだ身体の下敷きにしてしまったのだった。


「ど、どうしよう……っ」


 幸か不幸か、誰もその現場にはいなかった。へたり込んだその目の前には、めたくそに潰れた高校名物、図書館タワーを模した紙細工の残骸が残っているのみだ。


 わかっている。誰も庇ってはくれない。それだけのことをしたのだし、省吾は一人ぼっちだからだ。


 しかしつらいのは、一人ぼっちの人間が寄る辺もないままに責められる心細さを、誰も理解してくれないことだ。


 悩んだ挙句、省吾は一目散に逃げ出した。

 四階男子トイレの一番奥の個室。そこで彼は頭を抱えた。頭の中でひたすらごめんなさいを繰り返し、泣かないように堪えていた。


 そして、いつの間にか異世界にいた。

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