最後、瞳に映したのは
近藤さんという光を失ってから、ついにこんなところまで来ちまった。
しかし大鳥さんと、俺たちの国、蝦夷共和国を作り上げようと誓い合ったからにはこの戦、負けるわけにはいかない。
まだ俺にはやらねばならないことがある。
「我この柵にありて、退く者を斬る!」
先に散っていったやつらの分も、残ったコイツらとともに生きようと。
それが俺の勤めだと。
ドンッ
「ぐぁっ・・・・・・」
俺は、銃弾に打たれた。
誰が撃ったものかわわからない。
だが、こんなところで死ぬわけにはいかねえんだよ!!
最後の力を振り絞り、刀を片手に立ち上がった。
"ザシュッ"
「おらおら、そんなもんか!かかってきやがれぇえええ!」
視界がぼやけ、揺れる。
鮮血が、止まることなく流れ続ける。
「き、貴様何者だ!!!」
新政府軍の兵士は、その気迫に怯えていた。
「新撰組、・・・・・・・副長、土方歳三!参る!」
一歩踏み出そうとしたとき、限界がきた。
力が、入らない。
「く・・・・・・そが・・・・・・」
なあ近藤さん、俺はあんたの役にたっていただろうか。
心を鬼にして、新撰組の前に憚る敵を粛清してきた。
でもあんたは、その度に悔しそうな顔をして拳握りしめてたよなぁ・・・・・・。
心の優しいあんたには、もしかしたらそれが苦だったのかもしれねえ。
でも、あんたを武士にするためだったら、俺はなんだってできたんだ。
「綺麗な、そらだな・・・・・・」
平助も、山南さんも、総司も、近藤さんも、俺がそっちいったらきっともう来たのかって笑うんだろう・・・・・・。
最後に映ったのは、真っ青な空。
それは、試衛館にいたときとかわらないどこまでも続く空。
そっちにいったら、また一緒に盃をかわそう。
また一緒に、日の本の行く末を語り尽くそう。
よしや身は蝦夷が島辺に朽ちぬとも魂は東の君やまもらむ
土方歳三、明治2年5月11日、函館一本木関門にて戦死。