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姫君の羽

大変お待たせいたしました。

1話書きあがりましたので更新します。

 人間界へと戻り、洞窟内で見つけたホオズキによく似てる変わった植物をお土産として花菱に渡し、珍しい魔法をかけてくれていた件のお礼などをしていると、風呂上りに食べるらしいちょっとした果物っぽいモノを収穫したルゥが、にやにやしながら戻ってくる。


「どうしたんだ? 何かやたらとご機嫌っぽいけど」


「え? 機嫌ならすっごく悪いけど何か?」


 微かに胃にピリッとした感覚があったので、機嫌が悪いのは確かみたいだ。でもだとすれば、どうしてにやにやしているのだろうか?


「笑顔ではないところがポイントですね」


「……ふむ」


 コリルのつぶやきに考えてみるが、ルゥの機嫌は天気のように変わるので、その行為は無駄だなという結論にすぐたどりつく。なのでミドたちへのお土産である、洞窟で採掘した宝石っぽい石を配ることにする。


「食べ物じゃなくてゴメンな」


「すごい、魔法石……これなら加工すれば武器になるわ、ありがと、カズトさま♪」


「あ、ミドずるい! わたしもその青いのがいい!」


「それじゃあわたしはこっちの緑の!」


 みんなで取り合いになっているので、なんとか喜んでもらえたみたいだ。


 この石を採掘するのも結構大変だったし、ってか、そもそもどうしてあんなことに……


「それじゃあ帰るわよ」


「んっ?」


 嫌な記憶の再生が、ルゥの言葉で中断される。


「姫君の羽も試しに使ってみなきゃだし、もうすぐアニメも始まるし……」


「羽を試しに使ってみるって話なのに、帰るのか?」


「えぇ」


 てっきりウチで最強の回復役である花菱が居るココで俺が餌食になるのだと思っていたのだが、ルゥの考えは違うようだ。


「でもここの方が安全じゃないか? 天井も壁もないわけだし」


「天井も壁も無いってことは、誰に見られてるかわからないってことじゃない。それに姫君の羽は対象者を強制拘束するモノだから、危なくなんてないわよ」


 俺の足元でうとうとしていたミルカをおんぶし、ルゥは歩き出す。


「そ、そう……それじゃあ花菱、また明日。ミドたちも、また明日な」


 笑顔で手を振ってくれる花菱たちに見送られつつ、コリルを抱っこしてルゥのあとを追いかける。


「ふぅ……私は、気が進みませんわね」


「……?」


 隣に居たエルトは、何やら暗めの表情をしつつ、ため息を吐いていた。


「どういう意味だ?」


「私にはオチが見えているという意味ですわ。で、ルゥは冷静さを失っていて、結果を見誤っている……どうした方が私に得なのか、悩みますわね」


「わたしはプラスにもマイナスにもならないと思いますので、姫君の羽の実験さえ出来ればいいと思います」


「あなたはそうでしょうけど……うーん」


 会話的にコリルも『オチ』とやらが見えているらしいのだが、俺にさっぱり理解出来ない。ピヨの羽を試しに使ってみる件に関して話しているんだろうけど……


「何ごちゃごちゃ話してるのよ?」


「い、いや、別に?」


 学園内へと入り、屋上への出入り口のドアへ鍵をかけ、階段を下る。


 やっぱり室内は暑いな、なんて思いながら廊下を歩いていると、俺たちの教室に灯りが点いているのに気づく。誰か居るのだろうかと思っていると、鍵が開く音が聞こえ、ドアが開くと同時にタオルで首筋を拭きながら、雨澄が出てきた。


「ん? 式原……屋上行ってたの?」


「うん……雨澄は、トレーニングか何か?」


「まぁね、今日はちょっとやり過ぎて疲れたわ……」


 鍵を開けて教室から出てきたということは、中で着替えてたのかも?


「あぁそうだ、これ、お土産」


 雨澄にも、ミドたちに上げたのと同じ石を手渡す。


「お土産? ……へー、魔法石? どこか行ってたの?」


「さっきまで魔法界に行ってたんだよ」


「ちょっ……それなら先に言いなさいよ、あたしも付いて行ったのに」


「あ、いや、ごめん」


 ルゥに黙ってろって言われたから、というのは内緒にしておこう。


「ねぇ狐、次に魔法界へ行くときは必ず声をかけるから、ちょっと実験に協力してくれない?」


 ……ん?


「実験? 何の実験よ?」


「カズトが新しい武器を見つけたから、それを試させて欲しいのよ」


「お、おいルゥ、何を言い出してるんだよ?」


「別に傷つけようって話じゃないし、狐ならある程度強さを把握してるわけだから、ちゃんとした実験になるでしょ?」


「そ、それは、そうかもだけど……」


 俺がそう言い淀んでしまうと、ルゥが雨澄へどういうモノか説明を始めるので、それ以上は何も言えなくなる。


 手の内は晒すものじゃない、みたいなコト言ってたのに今回はこれだ。ルゥが雨澄のことを信用したということなのか、別の思惑があるのか、もしくはピヨの羽は隠すようなモノではないということか……


「ふーん、その肩の鳥はなんだろうって思ってたけど、そういうことね」


「で、協力してくれるの?」


「そうね、魔力がほとんど残ってない状態だけど、それでいいならどうぞ」


 雨澄の返事に、ルゥがこちらに視線を送る。


「ほ、本当にいいのか?」


「別に危なくないんでしょ? それに今後、ひょっとしたら式原と戦う可能性だってあるわけだし、ソレがどういうモノか知っておいても損じゃないし」


 お互いにメリットがあるなら、いいのか。


「ん……?」


 ふと、エルトの視線が気になる。少し眠たげで、悩んでいる風にも見える。


 そういえばさっきオチがどうのと言ってたような……あ、もしかして?


「……」


 ちらりと雨澄のスカートへと視線を送る。いつも通り短めであり、その下にはしっかりとレギンスも装備されていた。


 これならもしピヨの羽で拘束された雨澄が転んだりしても、パンツが見えたり、なんてトラブルは起きない、かな?


「あるじ様は日々進歩なされているようです」


「そのようですわね」


「「「ん……?」」」


 コリルとエルトの会話に、首を傾げる俺とルゥと雨澄。


「お腹空いているし、実験するなら早くしてくれない?」


「お、おう」


 抱っこしていたコリルを下ろし、腰にあったピヨの羽を一枚手に取る。


「それじゃあ、刺すぞ?」


「どーぞ」


 雨澄の影は俺の足元にあったので、持っていたピヨの羽をそのまま落とした。


 まるで重さを感じなかったその羽は、吸い込まれるように真っ直ぐと影へ落ち、突き刺さる。するとすぐさま影から輝くリボンが複数飛出し、雨澄へと絡みつく。


「くっ……ちょっ、意外と縛りがキツっ……って、どこ触ってるのよ!? ふぁあっ!?」


 ちょっとえっちな声が上がると同時に、雨澄は廊下へと転んでしまう。リボンは首や腕、腹や太ももと本当に複数個所へ絡みついており、バランスを崩したようだ。


「ちょっ……式原っ! 見てないでどうにかしなさいよっ!! あっ……そこ、ダメっ……」


 リボンは雨澄の制服の中やスカートの中にも侵入していき、大変なことになっている。


「え、えっと、どうすればいいんだ? コリル、このリボンどうやったら解けるんだ?」


「効果が切れるまで待つしかありません」


「マジで!?」


「はい……あれ? 説明し忘れてましたか?」


「思いっきりし忘れてるよ!」


 とりあえずリボンを引きちぎろうと手を伸ばすが、どこを掴めばいいのかわからない。ぐるぐると絡むように巻き付いていて、必ず身体を触ってしまう感じだ。


「う、雨澄、どこなら触っていい?」


「え? 死にたいって?」


 どうすればいいんだよ!


「うぅっ……解けないっ、魔力が使えないし、どうなってんのよっ……!」


「なるほど、魔力が封印される特典もついてくるみたいですね。これですと、ルゥさんやエルトさんでも使われたら危ないかもしれません」


「七羽、動けば動くほどそのリボンは絡みつくみたいですわよ」


 エルトの助言に、雨澄はピタリと動きを止める。そして俺を睨む。


「に、睨まれても、俺にはどうしようもないんだけど……」


「ねぇ狐、どうやってもそれは解けないの?」


「……ちょっと、本気で無理っぽい」


 俺からすれば手も足も出ないくらい強い雨澄を、完璧に抑え込んでいるリボン……ひょっとしなくても俺は、とんでもないモノを手に入れてしまったんじゃないのか?


「ピヨッ」


 ピヨもなんとなく嬉しそうな声を上げつつ頬を摺り寄せてきていて、俺も、つい微笑んでしまう。


 この羽があれば俺も戦い方を増やせて、もっと強くなれるかもしれない!


「し、式原、くん?」


 その声に顔を上げると、頬が引きつっている雛祭の姿があり、その背後には泡波の姿も見つけられた。


「よ、よう、おかえり?」


 雛祭は実家へ帰省、泡波は北極だかへ行っていたはずだが、戻ってきたみたいだ。


「あ、あのー、式原くん? 何を、なさってるんですか?」


「何をって……あっ」


 今の自分の状況をやっと理解する。足元には拘束された風の雨澄がいて、俺はそれをにやにや微笑みながら見下ろしている……感じになっていたはずだ。


「違う、本当に違うんだ、これは、そのぉ……」


「何が違うんですか?」


 あ、やばい、黒い方の雛祭スマイルだ。


「わたしと雛祭さんが居ないことをいいことにやりたい放題……さすが、やるね」


「だから違うんだよぉ!?」


 慌ててピヨと実験についての説明を始める。


「こ、これは予想しないオチでしたわ……」


「はい、てっきりどうやっても雨澄さんがえっちな展開になってあるじ様が怒られるパターンだと思っていましたけど、左斜め上な展開でしたね」


「ま、カズトならこんなオチってところじゃないの?」


 ルゥたちはまったくフォローをしてくれる気はないみたいで、雨澄の周りに座って談笑を始めている。ひどい。


「というわけで、今、こんな感じになってたって展開なんだよ」


「そうですかそうですか、よくわかりました」


「その笑顔、絶対にわかってないよな!?」


「いえいえ、わかっていますよ。ですがもうちょっと詳しく話を訊きたい部分もありますので、とりあえず式原くんのお部屋に行きましょうか? ちょうどお土産もありますし」


「賛成。わたしもお土産があるから丁度いい」


「決定ですね」


 決定してしまったらしく、ルゥたちも立ち上がって帰る準備を始めている。


「では七羽は私がお連れしますわ」


 雨澄の身体を、まるで王子様のようにエルトが抱き上げた。


「あ、ありがと」


「それじゃ、帰るわよ」


 ルゥの声にみんな帰り始めるのだが、俺の足は一歩も動かない。きっとこの後、胃が痛い展開になるのはわかりきっているから、だと思う。


「あるじ様、世の中諦めが肝心な時もあります」


「コリル……」


「と言いましても、部屋に到着する頃には雛祭さんにも冷静さが戻っていると思いますし、もう一度きちんと説明すれば大丈夫です」


「……そう、だな」


 コリルを抱っこし、俺も歩き始める。


 そうだよな、雛祭と泡波なら、ちゃんとわかってくれるよな。


「まぁ、ダメな時は全力で謝りましょう」


「……」


「ピヨッ」


 俺はとてつもない力と引き換えに、大切な何かを失ってしまったのかもしれないと、そんな風に思ってしまうのだった。


現在、本業の制作のため、

不定期更新とさせていただいております。


この状況は7月上旬くらいまで続く見込みです。

お待ちいただいている皆さまには申し訳ございませんが、

ご了承いただけますよう、お願いいたします。

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