シロとクロ、私の家族と会う
新年ですね。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
山本さんちのサンタさんには、シロとクロが見えなかったみたい。
だから、他の人には見えないのかも。
じゃあ安心して、シロとクロも連れて、階下の居間に行ってしまおう!
と思ったら。
「あ。龍が二匹いる」
部屋を出て速攻、すぐ上の兄ちゃんにシロとクロを発見された。
超ビックリです。
***
まさか見えちゃうなんて。
あれ? じゃあ、やっぱり皆に見えるの? クリスマスイブの山本サンタさんは単に暗くて気付かなかっただけ?
それとも、見える人と見えない人がいるの?
ドキドキ…
私が返事に困ってたら、クロまで一緒にドキドキしてる。
シロは、『ピ(あ、人間の男だ)』って冷静にコメントしてる。シロって、肝が据わってる。
「ふーん、生まれたて? 小さいなー」
継人兄ちゃんは、淡々と話しかけてくる。
『ピ(や、どもども)』と、返事するのはシロ。
そこで、継人兄ちゃんは、私とクロが、ドキドキ様子を見守っていることに気がついた。
「あれ・・・? あ、そうか」
継人兄ちゃんは、自分で考えて自分で答えに気づいたらしく、
「大丈夫、安心しろよ」
継人兄ちゃんは、右手で自分の左肩をちょっと触ってから言った。
「俺だって、肩に『ちっさいおっさん』乗ってるし」
ぴょこーん!!
継人兄ちゃんの背中に隠れていたらしい(!?)、小さいおっさんが兄ちゃんの肩によじ登ってきた!!
まーじーでー!!!?
『ちっさいおっさん』現れたー!
***
継人兄ちゃん曰く、
「え? でもさ、俺の友達、結構、肩にちっさいおっさん乗ってるヤツ、多いよ?」
て事です。
本当か。
龍の誕生を目撃(?)してシロとクロなんて名前つけて可愛がってる私が言うのもなんだけど、「マジかっ?」ってドキドキするわ!!
「本当本当。でさ、俺と、友達と会うじゃん? で、俺たちは俺たちでしゃべってるんだけど、ちっさいおっさんはちっさいおっさん同士でしゃべってるんだよね」
まじですか、継人兄ちゃんよ。
でも、龍に『おかーさん』とか呼ばせてる私が「まじですか」とか思っちゃうのもなんか変な気がするなぁ。
「ていうか、あれ? そっか、カヨの前ではみんな隠れてたんだっけ」
何を言い出すんですか、継人兄ちゃん。
「ま、とにかく食べに行こうぜー。母ちゃんとか遅れると怒るぞ」
『グルッグー』
ほら、遠慮せずあんたも行こうぜ。
みたいな素敵なウィンクを、継人兄ちゃんの肩に乗ったちっさいおっさんが私たちに送った。
おぉおおおう・・・。
***
居間についたよ。
「おや、龍が、二匹もいるな?」
「あらー、まぁまぁまぁ、まぁまぁまぁまぁ」
と、パパとママ。
『ピ! ピッピピピピピ!!(どもども、シロです)』
『キュ、キュウ…(えっと、クロ、です…)』
「おーおーおー、あははははは」
「まぁまぁまぁまぁまぁまぁまぁ」
「え…えっと、おはよ…」
私は、どう言って良いのかわかんなくて、ふつーの挨拶しか出てこない。
っていうか、間違いなく、見えてるよね、見えてるしね。
でもでも、なに、この、「あぁ、また見たよ」みたいな反応は?
「えっと、パパとママにも、何か、不思議な動物?みたいなの、いるの?」
「いないいない」
「そーよねぇ」
え、いないのに、そんな反応をするの?
よくわかんない…。
そこに。
「年賀状です、旦那様、奥様」
正月そうそう、ビシっとスーツを着た美人さんが、年賀状を持って居間に現れた。
ぽかーん・・・
誰この人。
***
パパとママがにこにこして「あら、アカネちゃん、有難う」と受け取っている。
いや、だから、誰ですか、この人?
「あっ、晃様!」
スーツ姿のお姉さまが、ぱっと声を上げて急に女らしさを醸し出した。
「晃様の年賀状でございます」
「あぁ、ありがとう」
にっこりと現れたのは、一番上のお兄ちゃん、晃兄ちゃん。
ぽかーん
***
「紹介しよう、佳世」
晃兄ちゃんが真面目くさって言った。
「朱音だ。佳世で言うところのシロとクロな感じの、俺の朱音」
あれ、私、馬鹿になったかな…
意味が分かりません…
ぽかーん、としている隣で、私の分も年賀状を受け取ったらしい継人兄ちゃんが、私に年賀状を「ほい」とか渡してくれました。
いや、誰かもっと説明プリーズ。
***
正月番組を見ながら、和やかに食事が進む食卓。
あぁ、シロとクロにもごはんがいるなぁ…と思ったら、シロは湯飲みの湯気を食べてるし、クロは勝手に台所の水回りでウロウロしている。
『ピィ(湯気おいしいね~)』
『キュッキュ(このあたりいっぱい食べるもの、あるー!!)』
クロは、風水的に良くない(?)暗い空気とかなんかよく分からないもの食べるみたい。
だから、あのあたりは今、風水的にちょっと良くない感じになってたんだろうか。
「あらあら、特にクロちゃん、たくさん食べてね?」
『キュ~♪(は~い♪)』
ママ、分かって言ってる? 言ってるよね?
継人兄ちゃんは、肩のちっさいおっさんに頼まれて、時々豆とかをおっさんに運んであげている。
晃兄ちゃんはフツーなんだけど、その隣に、スーツ着た美人な朱音さんが座ってにこにこしている。
えぇ? 去年まで、っていうか、昨日まで、こんな人家にいなかったよね?
それとも引きこもりになってて、単に出会ってなかっただけ?
「えぇえええええ・・・と」
私はおそるおそる、口を開いた。
「晃兄ちゃんと朱音さん、あの、どういったご関係で・・・?」
正直、どんな聞き方していいのかさっぱりわかりません。
***
二人はきょとーんとしたが、朱音さんの方がにっこり笑った。
「あ、では新年おめでたいということで、姿を戻させていただいてもよろしいでしょうか?」
「あぁ、でも、気をつけてね」
とは晃兄ちゃん。
なんのこっちゃ。
と思ったら、
バサァァアアアア…
居間に突如、黄金の光が満ち溢れ、黄金色の羽根がバササ…と舞い降った。
『私、朱雀ですの』
光の後、居間のテーブル上空に、覆い尽くさんばかりの大きさの赤い色した鳥が現れてた。
えぇえええええええええええええええ!?
えっとー。
『ピー(わぁ、鳥だ)』
『キュゥ~(大きくて赤いね~)』
えっとー・・・。
隣の継人兄ちゃんが、私に
「と、そういうわけで」
と、言った。
えっとー・・・。