シロとクロ、サンタさんを目撃する (注:画像アリ)
シロとクロが誕生してから数日が経ち、その間で、私を『おかーさん』と呼ばせることに成功した。
『キュゥ(訳:おかーさん、おかーさん)』
「ん? 何、クロ?」
『キュゥキュゥ(訳:窓の外に、変な人がいるよ)』
「何っ!!?」
変質者かっ!!!?
慌てて窓の外を見ようとしたけど、もう夜だしカーテンが閉めてある。
あれ?
不思議に思いながら、一応カーテンを開けて窓の外を見てみたら。
向かいの家の屋根、赤い服を着て白いお髭のサンタさんが、屋根の上から滑り落ちそうになっているところだった。
あぁ、あのサンタさんは、向かいのお家の女の子に、プレゼントを届けに行っている最中なのだよ、クロさんや。
雪も降ってるのに、サンタさんも頑張ってるよねぇ、大変だよねぇ…。
ていうか、カーテン閉めてるのになんでクロは分かったの? すごいなぁ…。
とか言ってる場合ではない。
慌てて助けに行ってみた。
シロとクロもついてきちゃった。
あれ? シロとクロ、出てきて大丈夫なのかな? と今更気がついた私。
この数日間、家族にも会わせなかったんだ。
正直、皆に見えるのか、見えないほうが普通なのか、よく分からないし迷っちゃうんだよね…。
もし皆に見えるなら、皆がどういう反応するのかも分からなくて。
まぁ、それは、今は置いておこう。
サンタさんを助けなきゃ。
「えーと、えーと…」
どう声をかけていいのか迷った末、見たままをいう事にした。
「山本さんちのサンタさん、大丈夫ですか…?」
山本さんちのサンタさんは、子ども部屋が二階なので、わざわざ屋根に登って窓からプレゼントを届けてくれるらしい。
ちなみにウチに来るサンタさんは、玄関から入っきて居間にプレゼントを置いていく様子。
サンタさんにも色々あるのだ。
「あ、カ、カヨちゃんか…!! た、助けて!!!」
とにかく、屋根に立てかけてあった長梯子を山本サンタさんの傍に持っていって、立てかけなおしてあげた。
「あ、ありがとう…!!」
『キュ~!?(訳:赤い服着てる! 白いおヒゲ!?)』
『ピィ~!!(訳:サンタさんって言うんだ!!!)』
クロとシロがわくわくして話し掛けたけど、山本サンタさんは、それに気付いている様子がなかった。
少なくとも、山本サンタさんには、シロとクロは見えないし、声も聞こえないのかな?
とにかく寒いので、助けた事だし、自分の家に戻る事にした。
「お気をつけて…サンタさん、お仕事がんばってくださいね」
「ありがとう、カヨちゃんも、メリークリスマス!! ホッホーイ」
さすがはサンタさん、深夜なのに陽気だ。
自分の部屋に戻って、窓から向かいのサンタさんの無事を確認した後(山本さんちの奥さんの助けによって窓から侵入完了してた)、こっちに手を振る山本サンタさんと奥さん。手を振りかえして、カーテンを閉めなおした。
うーん、分かった事が二つ。
一つ。山本家のサンタさんは、結構体を張って頑張っている。
一つ。シロとクロは、少なくとも、山本サンタさんには見えないし聞こえていないらしい。
あ、それから、もう一つ。
クロは、カーテンを閉めていたのに、窓の外の様子が分かった。
「クロ、どうして、窓の外の事が分かったの?」
『キュ?』
クロは首をクニっと傾げた。この動作、たびたび目にするけど、やっぱり可愛いなぁ。
『ピィピピピ(訳:空気の歪みが発生したから、分かったんじゃないかな?)』
「シロも見えたの?」
『ピー…ピィピィ(訳:うーんと、クロに言われて見たら、見えたよ)』
「ふぅん?」
『ピィピィピィ(訳:サンタさんが落ちそうになって大変になったから、空気がちょっと暗くなってたんだよ)』
「へー」
『キュッキュキュキュ!!!(訳:おかーさん、おかーさん!! サンタさんって、赤いね!!)』
そ、そうだね、赤いね。服がね。
ついでに、サンタクロースとクリスマスについて教えておこうかな?
「サンタさんは、本当はサンタクロースっていう名前でね、クリスマスの前の晩に、寝ている子どもたちにプレゼントを届けるんだよ」
『ピィー!!』
『キュゥ~!!』
わぁ、シロとクロがキラキラした目で話を聞いているぞ。
「で、明日がクリスマスの日だから、今ぐらいに、サンタさんは子どもたちにプレゼントを配ってるんだよ」
『ピピピィ!!!』
『キュゥ!! キュゥ!!』
シロとクロがとてもワクワクしだしたぞ。
「ただし、どうも、子どもの数も多いから、色んなサンタさんが手分けして、お家や子どもに合わせてプレゼントを配ったりしてるんだって。手紙がある場合もあるし、プレゼントじゃなくて、寝ている時に頭を撫でてくれたりしてる時もあるんだって」
『ピィ、ピィピィ』
『キュゥー!!』
シロとクロがソワソワしだしたぞ。
「でも、寝ている時にサンタさんはやってくるから、子どもは、サンタさんの姿を見れないんだよね」
『ピ!! ピピピ!!(訳:でも、でも見たよ!!)』
『キュゥ!!(訳:サンタさん、見たよ!!)』
「あれは、山本さんちの女の子、ヒナちゃんって名前なんだけど、ヒナちゃんがもう寝てるから、ヒナちゃんにプレゼントを持ってきたサンタさんなんだよ。見れたのはラッキーだよね。ただ、自分に来るサンタさんはなかなか見れないんだって」
『ピィ!! ピィピィ(訳:なるほど!! なるほど!!)』
『キュゥ~! キュゥキュゥ(訳:サンタさん! サンタさん!!)』
わぁ、思った以上に興奮してるよ。あまりの興奮ぶりになんだか心配になってくるなぁ。
『ピィ~!! ピピッ!?(訳:あっ、じゃあ、シロとクロももう寝た方が良い!!?)』
『キュゥ!! キュウキュゥウ!?(訳:本当だ~、早く寝ないと、サンタさん困っちゃうよね!?)』
可愛い。可愛いぞ、シロとクロ。
「うんそうだね、もう寝ちゃったら?」
ちなみにシロとクロは、適当にテーブルの上とかで眠る。
シロは丸まって寝るんだけど、クロはぼーっと伸びて寝てる。
二匹って、多分、龍としての種類がきっと違うよね? それとも、単に性格の違いなのかなぁ??
二匹ともソワソワワクワクして眠る体勢に入りだした。
だけど、ものすごく興奮しちゃって、なかなか寝付けないみたいだ。
私は受験勉強をするから、まだまだ起きてるけどね?
しばらく放っておいて勉強してて、ふと気付いたら、二匹とも寝てた。
ちょっと頬杖ついて、その様子を眺めちゃった。
そして、翌朝。
『ピィ! ピィピィ!!!(訳:これなに、これなに!?)』
『キュウキュウ!!(訳:サンタさんから? ねぇ、サンタさんから?)』
クリスマスプレゼントにそれぞれ専用の寝床を貰って、ものすごく喜んだシロとクロ。
うんうん、良かったね。
ちなみに私は、新しいパスケースと、昨晩助けた山本サンタさんからもシャンメリー1本もらったのでした。