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長谷川君の応援に湖へ

八月。


私と、結意ちゃんと、七海ちゃんと、杏ちゃん、米倉さんとで、なぜか、とある湖にきています。

(ちなみに碧ちゃん、西野さん、山田さんにも声をかけたけど、三人は都合が悪くて無理でした)


「なんでこのクソ暑い時に屋外にいるのかなぁ、私たち」

と杏ちゃんは言いました。


「なんでヨットなのかなぁ、長谷川君」

と結意ちゃんも、うだる暑さにすでに嫌気がさしている顔で言いました。


「あっ、長谷川君いたよ。長谷川君~ガンバレ~」

と七海ちゃんが可愛く長谷川君に手を振っています。


「暑…」

私はウチワを持って来なかった事を後悔しつつ、手で仰ぎながら呟きました。


「長谷川君って文系だと思ってた」

日傘差しつつ、すでに暑さで草地にしゃがみこみながら、米倉さんは言いました。


善良な七海ちゃん以外、暑さに弱っている女子大学生5人組。


なんでこんな湖にいるかって?


私たちもびっくりしたよ。

七海ちゃんが言いだしたんだよ。

「長谷川君がね、県大会の試合があるから、是非見に来て欲しいって連絡あったの~。皆で行こうよ、ねぇ、楽しそうだよ」


長谷川君は、いつのまにか七海ちゃん個人に連絡を取っていたようです。


***


ちなみに、結意ちゃんが私と二人きりの時に、

「メーリングリストで長谷川君が七海ちゃんに応援メッセージ出した時に、なんか違和感があったんだよねぇ…なんかそういう事しそうにないから。…そういう事だったんだねぇ…」

とか言ってました。


いや、私は何も気づいてなかったけどね。

だってシロとクロで神社に朝に行かなくちゃってメールをくれた時、めちゃくちゃフレンドリーな雰囲気だったもの。メールは。

(後でそれが長谷川君からのメールだと分かってびっくりしたんだけどさ)

だから文面ではそういう人なんだと思ってたんだ。

でもそれだけではなかったらしい。


どうやら長谷川くんは七海ちゃんが好きなようだ。

そして七海ちゃんに応援に来てと頼んだらしい。


七海ちゃんがどうなのかはイマイチ分からないけど、七海ちゃんに邪気の全くない笑顔で「行こうよ、ねっ」とかワクワクして言われると同じ女子なのに断れない私たち。

罪づくりな笑顔だよ、七海ちゃん。

まぁそんなわけで、この真夏に、七海ちゃんに声掛けられて応援などに来てしまったわけさ!!


なんてね。

実は、長谷川君は私にもメッセージをくれていました。

『シロが三村さんに、見せたいものがあるって言ってるから、ぜひ来て』って。


シロはどうやら、私に繋がれる人たちにメッセージを伝えてもらうという手段を覚えたようです。

(頭の良い子だ、うん)


で、仲良しメンバーに加えて、その時ちょうど遊ぶ約束してて会う事になった山田さんと米倉さんとに話して誘ったんだ。


で、今、ここにいます。


***


「佳世ちゃん、シロのメッセージってなんだろう。私、正直そっちが目当てだよ」

と座り込んでペットボトルのお茶を飲みながら米倉さんが言いました。


私もついでに座ると、結意ちゃんも杏ちゃんも並んで座る。

七海ちゃんだけちょっとだけ坂を降りた位置でにこにこ立って試合前の様子を眺めています。

日傘を差してワンピース姿の七海ちゃんは可愛いなぁ。

とか暑さに弱っている私たちはオヤジ目線。


じゃなくて。


「うん、なんだろうね」と私。


「見えない佳世ちゃんにも分かるメッセージだから、私も一緒に見れたらいいなと思ってるんだ」と米倉さん。


「そうだねー。私たち、結局みんな、分からないもんね」と結意ちゃん。


「そうだね。見える人たちってうらやましいなって、やっぱり思っちゃうな」と杏ちゃん。


そこに。


キャアアアアア!!!

と、黄色い歓声が上がった。


ん? なんだ? と亀のように首を伸ばして歓声をした方を見る私たち。


そこには、七海ちゃんに向けて、まぶしい笑顔で手を上げるイケメン長谷川君の姿がありました。


こんな風に笑えたんだなぁ、と、その場に座っていた私たち全員は思ったという。


***


長谷川君が笑ったから、どうやら長谷川君目当てのギャラリーが黄色い悲鳴を上げたらしい。


それは別に全然良いんだけど。


「うわ、マズイ」と結意ちゃんが慌てて立って、七海ちゃんの傍にいった。


「うわ、怖」と杏ちゃん。


「・・・・女って怖いね」と米倉さん。


「うん。うんうん」と頷く私。私たちも立って、七海ちゃんの傍にいって日傘でちょっとガードしてみたりする。

誰をって? 七海ちゃんをさ。


「あ、皆、長谷川君が手を振ってくれるよー」とはなぜか気付かない七海ちゃん。



うん、長谷川君が七海ちゃんにとっても素敵な男前笑顔を向けて手を振ったから、長谷川君ギャラリーたちに敵と認識されちゃったのだ、私たち。

恐ろしい恐ろしい…。


めちゃくちゃ睨んでくるし!


自覚しろ! 長谷川君! こんな目立つところで破顔しないで~!


米倉さんがボソっと言った。

「見えないものが見えるくせに、普通分かることが分からないってどうなの。気になる子に敵をつくるとかさ…」


「あぁ、良い事言うね、よねちゃん」と結意ちゃん。「まぁでも、長谷川くんマイペースだし、そういうの気がつかないのか…」


「え?」とキョトンとする七海ちゃん。


「見えないものが見えるからって、人より優秀とかじゃないんだなって、分かるよね」なんて結意ちゃんが苦笑する。

「そういうの見えない、フツーの私たちの方が、フツーに分かる事いっぱいあるね」


「わー、結意ちゃん、良い事言う」とは私。「なんか今、目からウロコ落ちた」


「あはは」



遠くの怖い女性陣から、

『誰あれ!? 他所の大学のコでしょ? 何あれ!?』って騒いでいるのが聞こえる。『何あれ、ムカツク!』


さすがに七海ちゃんもその様子に気づいて、びっくりしてる。

だって応援に来てって言われて笑顔で応援して反感買うなんて七海ちゃんには思いもよらないことだもんね。


そりゃそうだね。


「七海ちゃん、ちょっと、場所変えよう」って、結意ちゃんは日傘で声のしてくる方を七海ちゃんから隠しながら言う。


「向こうに行ってみよ、全体がもっと見えるかも!」と杏ちゃん。


杏ちゃんが言う方は、確かにここより全体が見えて、言葉通りにオススメな場所でもあるんだ。


良く分かってないながらもちょっと不安そうな七海ちゃんは私たちの大切な友達で、そんな目にさらしたくないもんね。


というわけで、移動、移動。


***


私たちは場所をうつして、全体がよく見えるポジションまで来た。


と思ったら、私の携帯にメールが入った。

「あれ?」

長谷川君だ。


『空に注目』


「へ?」

「どしたの?」

「長谷川君からメールで、『空に注目』って」

「じゃぁシロから?」

「たぶん」

「試合前なのにそういうのはマメよね、長谷川君」

「ポイント回復?」

「ちょっと回復」

「良かったね長谷川君」

「えーと、何の話…?」

「イケメンって大変ね、でも見なおしたわって話」

「えー…と」

「あはははは」


パァン♪

と音が鳴った。

競技スタートだ。


ワァっと声援があがる。


私は眼下のボートが動きだすのを見て、それから、にくいぐらいに晴れ渡っている空を見上げた。

まぶしい。青い。白い・・・雲!


「シロだ!」

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