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卒業式前日 夕日に友情を深める私たち(大げさ?)

もう明日が卒業式。

とはいっても、結構自由な私の学校は、全然練習とかしなくって、人数も多いから、卒業証書も、教室で受け取るみたいで、緊張感は全然ないんだけどね。


でも、明日が卒業式かぁ。

そう思うと、やっぱりさびしいよね。

あたりまえだった毎日が、もう戻れない時間になっちゃうんだもんね。


なんて思っちゃうのは、今が夕暮れ時なんていう感傷的になりやすい時間帯だからかなぁ。


もう進学先も決まったし、私は結意ちゃんと七海ちゃん、そして西野さんと街でブラブラ買い物してる。

結意ちゃんと七海ちゃんとは前からよく遊んでたけど、シロとクロの事で、西野さんとも遊びに行くようになったんだよ。


見える夕日がきれいだったから、皆でキレイだキレイだって、まるで時間を惜しむように夕日をたたえて、やっぱり皆で感傷的になっちゃって、皆で卒業の話をしてたら、シロがこう聞いてきた。

『ピィ、ピィピィピィ?(おかーさん、卒業式って何するの?)』


「んーと、そうだなぁ。話を聞いたり、卒業しましたって証明の紙もらったり、あとは皆でワイワイお別れを惜しみあう・・・かなぁ」

と私。


西野さんが、聞こえない結意ちゃんと七海ちゃんに、シロの質問を通訳してくれてる。


『ピィ?(何のためにあるの?)』

と、シロは不思議そう。

『キュゥ?(ご飯を食べるためにあるの?)』

と、クロ。


いや、クロ、それは違う…と思うけど…。(断言できない私)


「えっとー」

私は考えてみてから、シロとクロに答えた。

「今まで良く頑張った、終わりーって、はっきりさせるために、するんだよ」


『ピィ・・・(???)』

『キュゥ・・・(終わるために、するの?)』


「うん。次が始まるから。高校は、終わるんだよ」


うーん、こんな答えで良いのかな?

でも改めて聞かれて答えるのって難しいカモ?

シロとクロが求めてる答えが何かわからないし。


『ピィ・・・』

『キュゥ・・・・(終わるのは、良い事なの?)』


「え? うーん」

いつもはのほほんとしているクロが、今日はシロよりも難しい事聞いて来るなぁ。


「終わるのは・・・」

私は、真面目に聞いて来ているシロとクロのために、やっぱり真面目に答えようと思った。

「んー・・・」

それでも、分からなかった。

「良い事でも、悪い事でも、ない気がするなぁ・・・」


『ピィ・・・』

『キュゥキュゥ?(良い事でも悪い事でもないことってあるの)』


シロはじっと私の話を聞いてた。

クロはやっぱり重ねて不思議そうだった。


私はやっぱり注意深く考えながら、言った。

「うん、良い事でも悪い事でも、ない事だよ」って答えた。

どっちでもない。ただ、通過点なだけでさ。

重要な日だけど、でも、分かりやすく形にした日なだけでさ。変わらない時間の一つなんじゃないかな、なんてね。


くすくすと、西野さんに通訳してもらってた七海ちゃんが笑う。

結意ちゃんも、

「なんか禅問答してるみたいな事いうね、佳世ちゃん」

てからかうように言った。

西野さんも、ちょっと面白そうに笑ってる。


「えぇ?」

そうかなぁ。

「じゃあ、皆はどう答えるの?」


「んー・・・悲しいけど、必要な事、かな」とは結意ちゃん。


『キュゥ?(どうして悲しいの?)』


私が通訳したら、結意ちゃんは、

「皆バラバラになって、毎日会えないから、寂しいよね」って答えた。


うん、そうだよね。


「あれ?」と七海ちゃんが、不思議そうに言った。

「よねちゃんからの連絡、来てない?」


「え?」とは私。

「米倉さんのメーリングリストのことね?」とは西野さん。

「あぁ。佳世ちゃんにも連絡したよね」とは結意ちゃん。


「あぁ、知ってる・・・けど?」と私。


米倉さんは、パソコンにものすごく詳しくて、私たちの学年用にメーリングリストと、パスワードつきホームページを作って、学年全員に連絡してくれた。

(メーリングリストって私知らなかったんだけど、一つのアドレスに送ると、皆に連絡がいくメールアドレスのことだった)


なんでも、『いろんなサービスがあるけど、自分で作った方が安心だし、これならいつまでも残せるし』って。

自分でパソコン作って、そこでいろいろ管理して運営するんだって。

詳しく知らなかったけど、米倉さん、すごい人だったんだなぁ。

(あ、ちなみに見えない人だけど、「いいなぁ」って言いながら、私たちの話を聞いてくれる一人)


余談だけど、その連絡を結意ちゃんから貰った時、

シロが『見てくる~』とか謎な事を言って、私の携帯画面にスッと入って姿を消したからびっくりしたんだよ。


クロは私の傍にいて、

『キュゥ~(シロちゃん、すごい)』とか言ってた。

クロにはできないことみたい・・・。

というより、シロ、一体いつのまにそんな技を身につけたの・・・。ドキドキ。


そして、数分後に携帯画面から出てきたシロは、

『ピッピ~♪(すごく、ふわふわ過ごしやすい場所だった~)』とか上機嫌でした。

意味が良く分からなかったけど、おかーさんとして

「よかったね」

と答えておきました。


その後も、シロはクロに、『ふわふわポワポワ、でもちゃんと覆いがしてあった』と、上機嫌でクロにたくさん報告してた。

クロは『きゅぅ~(へぇ~)』ってやっぱりホワホワして聞いてました。

クロには素敵さが分かったみたいです。



で、その米倉さんがどうしたのかな、ってキョトンとしてたら、七海ちゃんがちょっと不思議そうに、でもどこか確かめるように言うんだ。

「え、だって、卒業しても、連絡も取りあえるから、変わらないよ」


七海ちゃんの捕えように、私も、結意ちゃんも、西野さんもちょっとびっくりした。


「え、もう、遊べないの?」

なんて七海ちゃんが言う。


「えぇっ!! 遊ぼうよ! 遊ぶよ! ねぇ、佳世ちゃん、この子ったら!」と結意ちゃんが最後ちょっと芝居かかって言う。

「そ、そうだよ、変わんないね、ね、西野さん!」

「え・・・う、うん・・・うん、そう思う」


最近遊ぶようになった西野さんは、私たちの突然の演技入りセリフのノリにはまだついてこれないみたいだ。

でも、三人でうんうんうなずきあって、七海ちゃんを見る。


七海ちゃんは、えへへ、と笑って、

「そうだよね、変わらないよ」

なんて笑うんだ。


ちょっと七海ちゃんの様子に私たちは焦ってドキドキして、とりあえず丸く収まったようで三人目を合わせて安心したんだけど。


でも、七海ちゃんの様子を見てて、本当にそうかもな、って気になってきたんだ。

同じように思ったみたいで、結意ちゃんはそれを言葉にした。


「明日卒業式だけど、何も変わらないのかもね」って。


「いるところが、バラバラになっちゃうだけ・・・かな」

と私。


西野さんが、ちょっと考えるような間を置いて、こう言った。

「皆外に散らばっていくけど、でもそれだけなのかもしれないね」


うん。


「シロとクロも、明日、卒業式出るんでしょ?」

と結意ちゃん。


「うん、シロもクロも一緒だよ」


「写真、良かったね」と西野さん。


「うん、あれ、宝物」と私。


「私も、あれ、宝物に認定!」と七海ちゃん。


あははと結意ちゃんも笑う。



先週、吉見君に代わって数学の春日部先生が、私たち全員の写真を撮ってくれた。


そして、その写真はすぐにプリントアウトされて、クラス全員に配られた。

だって、春日部先生が撮った写真には、私たち全員は勿論のこと。シロもクロも、山犬のケンタロウも。今まで見た事のない、紫や白い光や、知らないオジサンなんかまで映ってたんだよ!!


私にはシロとクロとケンタロウしか見えてなかったけど、他にもそんな存在はいたんだって。

私も、ほんのちょっとしか見えてないんだって、それ見てはっきり分かったよ。


『見えない』人たちは、シロとクロたちを目にできてキャーキャー騒いでた。そうだよね。私だってビックリするのに!!


でも、高橋学級委員長が、写真が配られた時にちょっと考えてたのが気になったんだ。


そしたらそんな風に皆が騒いでいる中、イケメン長谷川君がなぜか教壇に立って、片手を上げて、

「お願いというか注意があるんだけど」と言いだしたので皆驚いて静まった。(目立つ事を避ける、自ら日陰を探して隠れるタイプだし、長谷川君)

「この写真、あくまで記念で、外に出さない。皆で守ろうよ」


約束を?

それとも、シロやクロたちのことを?


「賛成」と高橋学級委員長が言った。


「大切なものは、秘密にして、守りましょ」

高橋学級委員長は皆を見回して言った。


「例えば、シロとクロの事を話して、三村さんに迷惑かけちゃいけないわ。

私たちは『シロやクロみたいな存在がいる』って分かったけど、知らない人だってたくさんいるもの。分からない人に、本当だっていっても難しいもの。知る時に知るものなんだもの。

私たちは良かったけど、本当に全ての人全てが、こんな風に『自分に分からない事も受け入れる』なんてなかなかできるものじゃないと思う」


私たちはその話を静かに聞いてしまっていた。

本当だ、本当にそうだなぁって、私はびっくりして聞いていた。


だって、私も、自分がシロとクロが見えたから、こんな風にこんな事があるっていうのが分かったし、他の人たちもそういうことがあるんだっていうのも分かったんだ。

それを思い出したんだ。

今は、皆分かってくれてるのが当たり前で、それが自然だと思ってるけど。


でも私だって、シロとクロが生まれた時、他の人にも見えるのか見えないのか、自分がおかしい人って思われないかとか、すごく気になった。

見えるか見えないかを探ってた。


家では、継人兄ちゃんがすぐにシロとクロを見つけてそれを口にしたから、自分だけじゃないんだって、すぐ分かったから良かったんだけど。


学校では分からなかった。

たまたまクロがお腹痛くなって私がパニックを起こして、それでやっぱりシロとクロは皆に見えてるわけじゃないって分かった。

自分が変な人に思われちゃうって、どうしようって思った。

でも西野さんが自分も『声が聞こえる』ってカミングアウトして、私の味方になってくれたんだ。私の言ってる事は本当だって。

だから、皆、信じてくれたんだ。他にも『分かる』人もたくさんいたから。



そうだ。ここだから、皆分かってくれたのかも。

学校を出ると、そうじゃないのかもしれない。


継人兄ちゃんからも聞いたけど、私たちは朱雀の朱音さんの影響を受けて『分かる』人たちが増えているみたいだって。

それは朱音さんのいるこの地域だからこそなのかもしれない。


朱音さんは、今やテレビに出てるから、全国に影響が出るかもねって、前にママが呟いてたけど。

たぶん、そんなにすぐは出ないと思うよ、って継人兄ちゃんは話してた。

とはいえ確かに、ポツポツ、影響を受ける人も出てくるだろうね、とは、言ってたけどね。


「みんな、良い? 学級委員からの、お願いです」

と、高橋学級委員長はこう言った。


「分かった。ていうか、俺の事も、秘密でヨロシク」

と、念力使える吉見くんも言った。


「えっと、それは、『こういう人がいるよ』って人に言うのもダメなの?」と山田さんが聞いた。


「んー・・・できれば、事前に俺に聞いて欲しい」と吉見君が答えた。


「じゃあメアド教えてよ」

と言う山田さんに米倉さんが、

「あぁ、じゃあ、私、メーリングリスト作るから、皆、使って」と言った。

「シロとクロの話とか、私、聞きたいもん。そういう話、そこに皆で投稿してよ。確認もそれでできるじゃない」


「んー・・・じゃぁ、秘密で賛成」

誰かが言って、誰かが賛同した。


写真は、だから、知っている私たちの、秘密の写真になった。


そして、少なくとも私と七海ちゃんにとって、宝物になったんだ。



写真の事を思い出して、その時思ったことも思い出して。

私は、今いる、結意ちゃんと七海ちゃんと西野さんに、

「ねぇ、いつまでも友達でいてね」ってお願いしてた。

私はなんだかやっぱり感傷的になってるみたいだ。


「当たり前だよぅ! 勿論だよ!」と七海ちゃんが言って私の手をぎゅっとにぎった。

「うんうん、佳世ちゃん、そうよそうよ」と、またちょっと芝居かかって結意ちゃんが言ってそれに手を重ねる。

西野さんはちょっと恥ずかしそうに、

「うん、どうぞよろしくね」って言って、やっぱりちょっと恥ずかしそうに、さらに手を重ねた。


『ピィ~(私も乗る~)』

『キュッキュ~(わ~い♪)』


シロとクロもその手の上に乗っかった。


「あ、シロとクロも手の上に乗ったよ」

「やったやった! いつまでもよろしくね!」

「いえーい!」

「あはははは」


私たちは手をぶんぶんを振りあった。

生温かい目で道行く人が私たちの様子を見てたけど、気にしない。


だって今が大事だし!


なんてはしゃいでいる私たちは、やっぱり沈み行く太陽のオレンジ色に照らされて、ものすごく感傷的になってたのかもしれないね。


でも、それはそれでいいやって、思ったんだよ。

ここに皆といて良かったって、そんな風にさえ思っちゃったんだよ。

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