再会
シロとクロが帰って来ないよぅ。うわぁああん。
「佳世!!! 合格おめでとう!!!」
「・・・ぅー」
受験日から数日後。
晃兄ちゃんが出張から帰って来ました。
「佳世さま!! 合格おめでとうございます!!」
朱音さんも連れて。
「・・・ぅうー」
「暗い! なんだ、全然嬉しそうじゃないなぁ」
だって、シロとクロが全然帰って来ないんだもん・・・。
***
私のどんよりした空気をものともしない晃兄ちゃんと朱音さん。
「ま、合格できて良かったな、佳世。
本命はギリギリアウトかと心配してたんだが」
何を何気に言ってくれるんですか、晃兄ちゃん。
確かにギリギリアウトラインだったけど奇跡的に受かったんだよ!!
受験時の私は、この人生で一番脳みそ使ってたよ!!
ちなみに、受かって嬉しかったけど、シロとクロでどんよりしっぱなしの私。
そんなだから、パパもママも継人兄ちゃんも、そっとしといてくれてます。
でも、しばらく出張で家の空気を読んでない晃兄ちゃんはそんな雰囲気を吹き飛ばす勢いです。
晃兄ちゃん・・・。嬉しいけどシロとクロのこと、覚えてる?
「晃、おかえりなさい! お茶入れましょう、さっそく食べて良いかしらっ♪」
明るくなった空気に、ママは土産の羊羹をチェックしてうきうきしてます。
「・・・・・・」
なんだか気分が乗れない私の手を、そっと両手で包みこんだ人がいました。
「佳世さま」
朱音さんです。
「心配など無用ですわ。ほら、シロとクロもおりますわよ」
えっ
にっこりほほ笑む朱音さん。
パチパチと瞬きを繰り返しながらその笑顔を見てたら、
『ピィ~!!』
『キュゥー!!』
声が! 聞こえたよ!
「えっ、シロ、クロ!?」
『ピィピィピィ!!(おかーさん! シロだよ!!)』
『キュッ、キュッキュー!!(わーいわーい、お祝いだねっ!!)』
朱音さんの左側にシロ、右側にクロが!
「シロー!!! クロー!!! おかえり、ずっと心配してたよー!!」
うわぁあん。
『ピィ、ピィ~!!(よかった、ずっといたよ、おかーさん!)』
『キュッキュ~♪(学校楽しかったよー!!)』
私は両手を広げ・・・ようとしたけど無理だった。
朱音さんが、にこにこしながら、私の手を握ったままなんだ。
グッ・・(動かそうとする私)
グッ・・・(にこやかに抑え込んでる朱音さん)
「・・・・」
あ、あのぅ・・・朱音さん?
***
私が動けないもんで、シロとクロが私の両ほほにすり寄って来たよ。
「シロー、クロー!! 本当に、ずっと長くいなかったね、寂しかったよー!! 学校どうだった、楽しかった!?」
『キュゥ~(大学って広くて面白い~)』
ん? クロちゃんがよく分からない事言ってるぞ。
『ピィ、ピィピィピィ(おかーさん、ずっと心配してたね、私たちもずっとおかーさん心配してたよ)』
ん? シロちゃんが言ってる事も、なんかイマイチ不思議だぞ。
目の前の朱音さんが、
「私からの、合格のお祝いですわ」
私の手を、ちょっときゅっと握って、そう言うんだ。
「・・・・・・」
私はシロとクロが再び傍に来てくれてものすごく嬉しくなった一方で、その朱音さんの言葉に、ふと不安を抱いたんだ。
なんだろう、ちゃんと言葉にできるほどはっきり分からないんだけど。
でも・・・
きゅっと手を握っててくれる朱音さん。
朱音さんが握ってくれてから、現れ出たシロとクロ。
『ピィ、ピィピィピィ~(私たちの学校、雲の上にあるんだよ。私ね、雲がつくれるようになったよ)』
とシロがちょっと自慢げに報告してくれる。
『キュゥ、キュゥキュゥキュゥ(見て見ておかーさん、クロ、すごく大きくなったよ!)』
確かに、シロに比べても、大きく育ってるクロ。ちょっと見てないだけなのに、前に比べて1.4倍ぐらい大きくなってる。
『ピィ、ピィピィ、ピィピィピィ(学校で、赤い龍のハツキちゃんとか、碧の龍のホンウーくんとか、お友達いっぱいできた)』
『キュゥ、キュゥー!! (今度先生が、すごいもの食べさせてくれるってー!!)』
『ピィ、ピィピィ。ピピピィピィ。(食べられるの、クロだけだけどね。おかーさん、クロが食べると、お掃除になるんだって。龍の先生も喜んでて、クロはちょっとお仕事してるんだよ)』
『キュゥキュッ、キュゥキュウキュキュ~♪(いっぱい食べて大きくなって、もっとたくさん食べられるようになるんだ~♪)』
え、えーと・・・。
えーと・・・。
「はい、どうぞ」
朱音さんが、私の両手を放してくれたよ。
私はやっとシロとクロに手を伸ばした。
両手それぞれに、シロとクロがつかまってくる。
両手を目の前に持ってきた。
「シロ、クロ、会いたかったよー。元気で良かったよぅ」
『ピィピィピィ(ずっといたよ、おかーさん)』
『キュゥキュゥキュゥ(ずっと、傍にいたよ、おかーさん)』
シロは私を真っ直ぐ見詰めて。
クロはちょっと小首を傾げて。
うわぁあん、と私は泣いた。
そうか、ずっと傍にいたんだ。
そう安心したから。
そっか、私が、見えてなかったんだ。
そう、分かったから。
朱音さんと、晃兄ちゃん、そしてママまでもが私をじっと暖かく見守ってた。
そっか、みんな、分かってたんだ。
シロとクロがちゃんといることも。
私が見えなくなったってことも。
大学受験の合格のお祝いに、晃兄ちゃんと朱音さんが、帰ってきてくれたのは、もう一度シロとクロに会わせてくれるためだったんだ。




