受験問題
[問題] 次の文章を読んで、設問に答えなさい。
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そろそろ時間が来る、待ちに待った場所に行くことができる。
「正子さん、そんなに期待をしては、当てが外れるかもしれませんよ」
老紳士が目を細めて私に言ったが、私はその言葉にさえ期待を膨らませた。
私はぶらついた足をバタバタと動かした。
「もう一度お話を聞かせてください」
私は、昨日出会ったばかりのこの老紳士にすっかり心を許し、このようにせがんだ。
「蜜蜂の女王様のお話を」
「ふむ、あなたは好奇心が強くていらっしゃる」
老紳士はこう言って、印象の良い微笑みを私に返した。
「せっかくですから、違うお話をいたしましょう。蜜蜂のコーデリアのお話は、もう正子さんはすっかり覚えていらっしゃるようだ。違いませんか」
確かに一度ですっかり覚えたが、何度聞いてもきっと面白いだろう、けれど、確かに新しいお話はその上をいくものかもしれない。
その可能性は私の心を弾ませた。
「はい、ぜひ」
私は居住まいを正して老紳士に向き直ってお話を乞うた。
老紳士は私の礼儀正しさに和やかに頷いて口を開いた。
「不思議の国のアリスというお話ですよ」
まさか、自分が誘拐されているとは思いもしていなかった私は、何の恐怖心も無く、大層目を輝かせてそのお話に引き込まれた。
まるで野兎の穴に飛び込むアリスという異国の少女のように。
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問1.「不思議の国のアリス」の概要を、あなたが知っている知識も踏まえて80文字程度で表しなさい。
問2-1.私(正子)からみた「私」と「老紳士」の関係を80文字程度で表しなさい。
問2-2.問題2-1での回答の理由を120文字程度で表しなさい。
(以下略)
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[問題] 次の文章を読んで、設問に答えなさい。
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同じ成分で作られ同じ工程を得てつくられる無機質な物体でさえ、微量な差異で性能に違いが出ている事はいわずとしれた事実である。
例えばパソコンに使用するメモリーチップ(注1)で考えよう。
メモリーチップが100ある中で、どれをとっても同じ品質であろうか。
誤解しないで欲しいのだが、100のそれらは全ては性能基準を満たしている状態だ。
ただ、それら全てが同じ使用条件で使われた結果が同じであるかというとそうではない。寿命が尽きる時刻が秒単位で正確に一致するかと言うと、そうではない。
なぜか。
結局、微細にでも個体差が生まれているからと考えざるを得ない。
これと同じ事が全ての事にいえる。
さて人間に置き換えるとどうであろうか。
同素材、同工程から生み出される無機物でさえそうであるのに、そうではない人間の差異などとんでもない。
同じものが同じように見えているわけでない。
聞こえているわけではない。
味わえているわけでも、嗅げているわけでも、感じているわけでもない。
人間は、同じものがあっても、同じようには知らない。
…
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「・・・・・」
受験番号329、三村佳世!
文系です!
いつのまにかガリガリ集中してました。
シロとクロのことはちょっと頭から離れました。
でもなんだか変な文章問題。ふっとシロとクロについて思い出したりしました。
いやいや、今は集中しなくっちゃ。
ガリガリガリ。
試験科目が一つ終わるたび、息を吐きました。
集中しすぎて顔がほてってました。
ふと。
休憩でトイレの鏡見ながら、やっぱりシロとクロを思い出しました。
帰って来ない、シロとクロ。
国語の試験に出てきた問題が頭をかすめていきました。
"人間は、同じものがあっても、同じようには知らない。"
「・・・・・・」
どうしてこんなに印象に残ったのか分からないけど、なぜかシロとクロを思うとそんな風に感じられて、
訪れる寂しさを振り払うように顔のほてりをふりはらって。
受験本番を、私は精いっぱい頑張ったのでした。




