帰って来ない
明日は、シロとクロが初めて自分たちの学校に行く日。
神様からのお手紙には、お迎えが来るっていうから、ちゃんと起きてお見送りしなくちゃ。
・・・でも、そういえば、何時に起きれば良いんだろう・・・・。
まぁ、朝の6時ぐらいに起きてたら、間違いないよね。うん。
***
と、昨晩思って目覚ましをちゃんとセットして、6時に起きてみたら、すでにお迎えは終わった後だったらしい。
シロもクロも、部屋にいなくなってました。
・・・ガーン・・・。
***
まさか、初めての日のお見送りができないとは。。。
ちょっと凹むなぁ。
いったい何時だったんだろう・・・。6時でいなくなってたってことは、5時とか?
うーん、起きるのちょっと無理だったかも・・・。
とにかく私は、フツーに学校に行く事にした。
シロとクロ、帰ってきたら、たくさん話を聞かせてくれるかな。
帰ってくるの、楽しみだな。
***
学校で、シロとクロを気にしてくれている友達に、『朝6時に起きたけどお迎えに間に合わなかったよ~』って話をして。
ふつーに授業を受けて。
で、帰宅。
いつ帰ってくるのかな。
ずっと気にしながら、テレビを見たり、ごはん食べたり、お風呂入ったり、受験勉強したり・・・。
「・・・・シロ、クロ・・・?」
すっかり夜も更けた深夜に、私はカーテンを開けて窓の外の暗い冬の空を見上げた。
シロとクロが帰ってこない。
***
心配でその日はずっと勉強しながら徹夜した。
徹夜なんて今までした事がなかったんだけど。
明るくなるのってやっぱり分かるんだね。
カーテンの外が明るくなってきたから、カーテンを開けて、世の中が朝に変わっていくのを見詰めてた。
「シロー・・・、クロー・・・」
呟いたけど、答える声は無い。
心配になってきた。
どうしてシロとクロは帰ってこないんだろう。
・・・そうだ、神様に聞きに行かなくちゃ。
シロとクロの学校って、行ったら長い間帰ってこないタイプの学校だったんだろうか。
***
早朝に私がゴソゴソしてたから、継人兄ちゃんが気付いていたみたい。
制服をきつつ、神社にも行く用意をして、部屋の扉を開けたら継人兄ちゃんが扉の前に立ってて超驚いた!
「うわぁあああ!!!」
「元気だなー、お前、佳世」
「そんなとこに立ってたら驚くに決まってるよ!!」
「んー・・・。どうした?」
「へ?」
というか継人兄ちゃん、昨日と服が同じだね!?
もしかして、継人兄ちゃんも徹夜? 大学生は本当に昼夜逆転生活だねぇ・・。
「いや、なんか、うーん」
継人兄ちゃんは、寝ぼけているのか、なんだかあいまいな言葉を言う。
「いや、なにか、こんな朝から出かけるのか?」
「うん、神社に行こうと思って」
「・・・んー・・・そうだよなぁ・・・」
「継人兄ちゃん、寝ぼけてる・・・?」
あ、寝てないみたいだから寝ぼけてるわけじゃないよね・・・?
徹夜状態でぼーっとしてるのかな?
「うん・・・そっか、気をつけてな」
継人兄ちゃんは、そう言った。
なんだろう。なんだか、気になるなぁ。
「・・・あ、そうだ、継人兄ちゃん、バイクで神社まで送ってよ」
「無理」
これには速攻返事が来た。
「今から寝るし、眠いし無理」
「・・・役立たずー・・・・!」
「何言ってんだ、大学生活なんてこんなもんだ」
本当かよー!! と思わずムっとむくれた私に、なんと継人兄ちゃんはポケットから千円札をくれた。
「タクシー代、ちょっとやるよ」
「え? へ? なんで? ありがとう」
「うん」
継人兄ちゃんは、やっぱりぼーっとしながら、自分の部屋に帰っていった。
私は継人兄ちゃんの部屋の扉を見詰めて、それから貰った千円札を見詰めて、
「よく分かんないけどラッキー」って思った。
***
朝。
ママにも、「シロとクロが帰ってこないから、心配だから神社に行って聞いてから学校に行く!」って報告したら、
ママもお小遣いに千円くれた。
あれ? なんでだろ、でもラッキー。
というわけで、リッチにタクシーで神社にGo!
***
冬の朝、キリっとした空気の神社に着いたよ。
神社にお参りして、祈りながら神様に聞いてみる。
『シロとクロが、シロとクロの学校に行ったのだけど帰って来ません。
心配です。
シロとクロ、いつ学校から帰って来ますか?
大丈夫ですか?』
鳥がピチュチュチュ・・・って鳴いてる。
冬の朝の神社は私以外にお参りしている人はいなくて、私はずっと神社の本殿でお祈りしてるのに、何も起こらない。
誰にも声をかけられないし、肩もたたかれないんだ。
「・・・・」
私は顔を上げて、周囲を見回してみた。
朝の清涼な空気、キラキラした朝日。
でも、私の質問に答えるものは、何も来なかったんだ。
***
どうしよう。
タクシーでまた直接学校に行ったけど、ずっと気持ちが晴れない。
どうしよう。
シロとクロ、いつ、帰ってくるんだろう。
どうして神様からお返事が無いんだろう。
今まで、自分が聞いてない時でさえ、お手紙貰ったりしたのに。
学校の授業もちゃんと受けたけど、ふとしたハズミでシロとクロを思い出して心配になる。
最近は授業中もずっとシロやクロが教室をウロウロしてたし、ずっと目にしてたのに。
***
「うーん・・・龍の学校って、一日単位で帰ってくるものじゃないのかしら」
休憩時間、目に見えて暗い私に事情を聞いた結意ちゃんが、そんな風に言った。
「そうなのかなぁ・・・でも、じゃあ、いつ帰ってくるのかなぁ・・・」
「うーん・・・分かる人に聞いた方が良いよね」
「うん」
そこで、私は『分かる人たち』に休憩時間のたびに捕まえて聞いてみたんだけど、みんなあいまいに「うーん」って答えるだけなんだ。
皆わからないの?
でも、そうだよね・・・。
本当は、おかーさんである、私がちゃんと分かっておく事だったのに・・・。
***
3日経ってもシロとクロは帰ってこなかった。
私は、晃兄ちゃんにも電話した。
『そっか』
と、電話の向こうで、晃兄ちゃんは言った。
『うん・・・あ、朱音に聞いておくよ』
晃兄ちゃんもすぐに分からないんだ・・・。
私は泣きそうにしょんぼりした。
「龍の学校って、そんなに1回1回、長いのかなぁ。
それとも、シロとクロ、迷子になったりとか、何かあったのかなぁ。
心配だよぅ」
『・・・・・心配する事は何もないよ』
そう晃兄ちゃんは言ってくれた。
『そんなに心配すると、シロとクロも心配するぞ』
「へ・・・?」
『そういうモンだよ』
良く分からない・・・。
それでも、私は
「うん」
と返事してた。晃兄ちゃんが言うなら、そうなんだろう、と思った。
だって、晃兄ちゃんは、私よりずっとそういうの分かってる人だと思うから。
『そうそう、佳世、明後日が受験日なのか』
「うん、そう。本命のトコ」
『んー・・・・頑張れよ』
「・・・・うん。
それより、シロとクロのこと、よろしくね。
絶対、すぐに、朱音さんに聞いてよね!!」
『・・・・・・・・』
あれ? なんで無言?
ブツッ!!
「えぇっ!! 何、なんで!?」
晃兄ちゃんに、電話切られたー!!
か、かけ直してやるー!!!
すぐにリダイヤルしたのに、晃兄ちゃん、出てくれない!
「えー!!? なんでー!!!?」
混乱してたら、メールが来た。
===
あ。悪い。ごめんごめん。
じゃ、受験頑張れよ
===
・・・なんか冷たい!?
気のせいー!?
***
次の日も。その次の日も。
シロとクロは帰って来なかった。
誰もどうしてか分からなくて、私はただ心配して待ってるしかない。
それでもやることはちゃんとやらなきゃって、
ものすごく暗い気分をひきずりながらも、私は本命の大学の入学試験を受けた。




