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神社と入学と私とクラスのみんなと

継人兄ちゃんは、大学生だ。

基本、夜遅くまで起きて、遅くにしか起床しない夜型生活になってます。

だから、完全に朝はダメ。人間になれない感じ。


良い兄ちゃんだけど、朝は使えないんだよなぁ。


「わー、もう時間が無い~!!」

とにかく、試行錯誤したけど継人兄ちゃんは起きてくれない。取り付く島も無いってこういう状況だね! (ちっさいおっさんも頼りにできないし!)

などと言っている場合ではない。


私はとにかく家を出る準備(身支度とかご飯とか!)を大急ぎでやりながら、バタバタしつつ、ママに助けと協力を訴えた。

「ママー!! 朝に神社に行きたいんだけど、継人兄ちゃんが起きてくれないよ~!!」


ママはダイニングチェアに座ってテレビを見てたけど、

ふっと微笑んで、私に

「佳世」

と呼びかけた。


ん? なになに、こっちがちょっと改まっちゃうような、その雰囲気?


駆け回ってたのに思わず立ち止まってママを見つめたら、

ママはにっこり小首を少しかしげながら微笑んだ。

「時間は時に、お金で買えるのよ」


・・・へ?


まるで、神様からのご宣託のように、ママは私に言いました。

「タクシーを使いなさい。お正月に貰ったお年玉があなたにはあるでしょう」


えっ。


ママはうんうん頷いた。

「親は時に子どものために出費を惜しまないものよ」


うっ。



ついでにママは付け足した。

「継人は無理よ~、この寒いのに起きるわけないわよ~。

 万が一起きても、ぼーっとしてバイクで事故ったらどうするのよ、ダメよ~、危ないしダメ」



が、ガーン・・・。



****



いわれるままに、結局タクシーを使ってる私。

あぁ~想定外の出費…。

でも時間の方が惜しい時って確かにあるんだね。うぅ…。


ちなみに、ママはタクシーを家に呼ぶ電話だけかけてくれました。(早くしなきゃ学校に遅れちゃいそうだから)


運転手さんに、「どういうルートで行く?」って聞かれた。

「おまかせします、早いので」って答えてから、朝に貰ったメールの事を思い出して、慌てて「大通りじゃなくて、細い道使ってください!」って言い直した。


それが良かったのか、実際大通りを使ってたらどうなってたのかなんて私にはさっぱり分からないのだけど、何事もなくスムーズに、タクシーは神社まで私たちを連れてってくれた。(有料で)


帰りもすぐにタクシーが無いと困るし、長居もしない予定だから、タクシーの人には私たちを待っててもらうようお願いした。


とにかく、シロとクロもつれて、学校前に神社に来たぞ!

タクシーの待ち時間も運賃に入るから、急がなくっちゃー!!!


急いで本殿に向かって、手を合わせてお祈りした。


「えーと、神様、ちゃんと朝に来ましたぁっ!!

 それで、シロとクロを、シロとクロの学校に通わせたいです!

 シロとクロをシロとクロの学校に入学させてください。

 宜しくお願いしますっ!!

 あ、それから私も大学に受かりますように、お願いします」


ついでにちゃっかり自分のお願いもしておく私。


あぁ、もう本当、受験日がやってくるなぁ・・・

なんて顔を上げて思ってたら、

シャラって衣擦れの音を立てて私の傍に人が来た。


「おはようございます」

神社の巫女さんだ。


「こちらへどうぞ」


・・・ん? 巫女さんだよね・・・?


とにかく、ついていくことにしました。

もちろん、シロとクロも連れて。


***


神社の社務所の傍も通り過ぎて、小さいおやしろの前に連れて行かれました。


んんん・・・? ここは・・・?

こんなところにこんな小さなお社があったなんて。ドキドキ


風がサワサワなってて、鳥がピチュチュ~って鳴いてて、朝の光が木漏れ日で差し込んでてとてもきれいな場所なんだよ。

冬の朝で寒いけど、『ここ、いいなぁ』って清清しく思った。


「ではこちらに並んでください」

巫女さんに言われて、私と、シロとクロ、一線に横並びする。


「お名前は」

『ピィィ(シロです)』

『キュウ(クロです)』


「まぁ、快活なお名前ですね!」


えっと、それはどうもデス…。


…あれ、この人、普通にシロとクロを見てるし、会話もしてるなぁ…。


巫女さんは、パサパサと、手にもってた植物の葉っぱ(祈祷につかうやつみたい)をシロとクロに向かってふった。


「はい、じゃあお戻りください。

 保護者のあなたには、おしらせが渡されますから、帰りに受け取ってくださいね」



・・・・え、えと・・・はい・・・。


***



「で?」

と、私の仲良しグループの、みどりちゃんがものすごく真剣な目をして私に聞いた。


「それで、もらったのが、これなんだけど」

私は、大切にしまいこんだ薄い桃色の和紙を、そっと鞄から取り出して、皆に見せた。


ここは、私の高校の教室。

まだ授業は始まってない。


私とシロとクロは、朝にタクシーを飛ばして、初詣にも行った神社に行った。

そこで、神様に向かって『シロとクロの入学(ついでに私の大学受験合格)』をお願いした。

そしたら、巫女さんみたいな人に小さなお社の前まで連れて行かれて。

シロとクロは名前を聞かれて、巫女さんはちょっと葉っぱで払うような仕草をして。

で、戻って良いって言われたから本殿に戻った。

戻ったら、本殿の前で、まるでお正月の時のように、スーツをビシっときたサングラスの男の人に声をかけられて、

『神様からです』

って、この桃色の紙を渡された。


それからその人はサングラスを取った。そしたら現れた瞳は予想外に優しそうだった。

薄い茶色の瞳でさ。

なぜだか、全然見た目は違うのに、私は、夢に出てきた神様の後ろについていた、小さい子どもに似てるなぁ、なんて思ったんだ。


スーツの男前は、私に微笑んでこう言った。

『今すぐにタクシーであなたの学校へ向かうと、丁度良いですよ』


それでハッと思い出して、私はペコっと頭を下げて、シロとクロとともに、再びタクシーに乗り込んだんだった。

なんだか、ちょっとボーっとしてたみたい。


タクシーの運転手さんには「おや、早いね」って言われた。

私が思ってたより、早い時間に戻れたみたいで。


私はそのまま高校にタクシーで乗りつける、というセレブっぽいことしたのでした。

おかげで、お正月のお年玉から持ってきた樋口一葉さん(五千円札)は私のサイフから飛んでいっちゃったんだけどさ。しくしく。


到着時刻は、授業が始まる15分も前で余裕だった。

何が『丁度言い』のかは、私にはよく分からなかった。

タクシー代が、樋口一葉さん一枚で足りた事なのかなぁ?

正直、きっと無事にすんだから、何が良かったなんて、分からないって言うか、気付かないのかもしれないなぁ。


まぁ、それはさておき。


私は、授業開始前に、皆に相談する事にした。

せっかく15分も余裕あるんだし。


それに、『神様からのお手紙』の中身が、よく分からなかったんだ。


***



白龍のシロ、薄龍 幼年。入学を許可する。

黒龍のクロ、国龍 幼年。入学を許可する。


明朝、それぞれお弁当を持って自宅で待機する事。

(指導員が自宅まで送迎する)


***


私が持ってる桃色の和紙の内容を、皆がじーっと見てる。


誰かが「読んで」って言うから、「えーと・・・」って私は読み上げた。(「薄龍」「国龍」のとこは使われてる漢字の説明もしたよ)


「へー・・・。何がわかんないの? 入学オッケーなんでしょ?」

「それより、その巫女さんって、きっと、違うよね」

「違うって?」


学級委員長・高橋さんが、ちょっと考えて呟く。

「そうね、多分三村さん、幽体離脱状態になったのよね。

 巫女じゃなくて、多分、神様の一人と会ったのよね」


「え、希花きはなちゃん、どういうこと」

とは山田さん。

(ちなみに、自分は見えないけど、ちゃんと『うんうん』って話を聞いてくれる人)


「どういえば良いかな、

 三村さんは、実際には、神社本殿でお祈りしてた。

 その時、ちょっと意識が飛んで・・・夢見てる状態に近いというと良いのかしら。白昼夢というか。

 ちょっと意識がとんで、夢の中でお世話する神様の一人に会ってきた、って感じ。

 現実にするとほんのちょっとの、一瞬の事になるみたい。

 そして、意識が戻った時に、『神社の本殿の前に戻ってきた』ってハっとする、とかね。

 そういう状態だったんじゃないのかしら」


「へぇー」

とは、『見えていいなぁ~』っていいながらも、ちゃんと聞いてくれる一人の米倉さん。


「でも、実際、この紙は貰ったわけだろ?」と吉見くん。

ちなみに吉見くんも、先日、念力(?)使えるカミングアウトをした人だ。


「うん、そうよね」

とは高橋さん。

「で、入学はできたんでしょ、明日お迎えがくるんでしょ。

 何を相談したいの?」


「薄い龍と国の龍っての、なんだろうね?」

と、七海ななみちゃんが言い、結意ゆいちゃんと目を合わせて不思議がった。


ちなみに七海ななみちゃんは見えたりしないけど、すごい癒しパワーがある。

結意ゆいちゃんは、『見えたりするわけじゃないけど、なんか分かってたりする事が多いみたい』とか本人は言ってる。


すると、只今登校してきた久本くんが

「あー、龍の話!?」と寄ってきた。


ん? 久本くん?

私は思い出した。

「そーだ、久本くん、高橋さん、西野さん。朝にメールくれたよね、有難う」


高橋さんは「どういたしまして」とクールに答え、

西野さんは恥ずかしそうにちょっと肩をすくめた。

久本君は喜んだ。

「あ、ちゃんと届いた? さっすがオレ~!」


「どういうこと?」と尋ねてきた碧ちゃんや七海ちゃんたちに、「メルアド教えてないのにアドバイスみたいなメールが来た」事を教える。「なんか、メアドも分かったみたい」

「すごくない、久本」「すごいね」「危ない話な気もするけど」「いやー、久本は悪用とかしないでしょ」「まぁそうだとは思うけど」


吉見くんが話を戻す。「ひっさん(←久本くんのあだ名)、龍に詳しい?」


久本くんが笑った。「オレはドラゴンが好きで、でも龍も知ってる」


「薄い龍と国の龍って?」とは山田さん。


「それは知らない」と久本くん。


「知らない!?」と皆で突っ込む。


呆れたように、誰かがボソッと言った。

「それ、龍の種類だと思うよ。でも一般的な言い方じゃないね。

 意味として、

 薄龍は、たくさんいる風や煙のような特性の龍ってことだと思うし、

 国龍は、たぶん、一国を覆うほど大きくなる龍ってことだと思うな」


私の話題で集まっていた十数人が声の主を探してみると、窓際、分厚い地理参考書を黙々と読み進めていた長谷川くんがこちらをみて、少し遠い印象の薄い笑みを浮かべてた。


「あ、あと、送信後に名前入れ忘れたって気付いたんだけど、今朝メールしたうちの一人だから、僕」


「あ、あぁ!」

私は驚いた。長谷川君だったのか!!

長谷川君は一人でいることが多くて今まで本当に接点が無くて、まさか長谷川君からメールを貰う日が来るとは思ってなかった。

あのメールはすごくフレンドリーな印象だったのに、それが長谷川君だったというのも意外。

「それで朝に起きたよ、メールありがとう」


「どういたしまして」

超イケメンなのに(イケメンだから?)超愛想ない長谷川君は、自分の言うべき事は全て言ったとでも言うように、また参考書の世界に入っていった。


「・・・」

はー、みんな、知らないいろいろがあるんだなぁ。


「これで、問題は解決じゃないの、三村さん」

山犬ケンタロウを連れた斉藤君が声をかけてきて、私はハっと話題に引き戻された。


「え?」


「薄い龍と国の龍が何か。

 それに、分からなくても大して問題ない気がするよ、それこそシロやクロが学校で聞いてくればいいんじゃないのかな」

と斉藤君。


「あー」

私は天を仰いだ。


そして、私の相談に乗るために集まってくれた十数人に向かっていった。

「そうじゃなくて、『お弁当』のトコ!」


私はキョトンとした皆に向かって言った。

「『お弁当』っていうか、お弁当『箱』が何かがわかんないんだよー。シロの食べる煙とか、クロの食べる黒い何かとか・・・何に入れて持たせてあげたら良いのかなぁ」



みんなが『おぉう・・・そりゃ気がつかなかったわ』みたいな顔をして。


始業のチャイムが鳴り響いた。


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