表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/34

テレビの中の朱音さん

あっという間にもう2月。

大学受験シーズン真っ只中で、なんだか妙に私も殺気立ってる。


そんなピリピリした中で、ママと一緒にお昼を食べながら、居間のテレビを見てて。


『では登場していただきましょう! 人気急上昇、アカネさんです!!!』


『こんにちは』


ブホーッ!!!


私は、飲みかけてた味噌汁を盛大に吹き出した。


『ピィッ!?』

『キュッ!?』

シロとクロが、私の驚いた様子に驚いてる。


ママが叱った。

「ちょっと、佳世! 汚いわよ!!」


でもママ、そんな事は問題じゃないです!!


朱音さんが、晃兄ちゃんに惚れてる朱雀という朱音さんが、テレビに出てるヨー!!?



***


テレビで朱音さんがものすごく、ちやほやされてる!


『キュゥ~(朱音さんだぁ~)』

と、クロ。


そうね、朱音さん、なんて素敵な笑顔なのっ!! って、いや問題はそこじゃなくって!!


『ピィピィピィ(なんでそんなトコにいるんだろ)』

全く同感だよ、シロ!! おかーさんも、同感だよ!!


「ママ、ママ、ママ!」

私はママを連呼した。


ママは怒った。

「佳世、アゴにワカメがついてるわよ! お年頃の女の子が、なんてみっともない。

 早く拭きなさい、顔もテーブルも!!」


うわぁ怒ってる。

急いで台所で顔をきれいにして、台フキンでさっさとテーブルを拭かなくっちゃ。


***


顔とテーブルをキレイにしたら、

「なんかね」

と、ママは説明を始めてくれた。


「晃の東京出張ついでに、晃と朱音さんとで東京デートしてたらしいのよ~」


はぁ、そうですか。


「じゃあ、朱音さんがスカウトされちゃったんだって」


へぇー、東京っぽいですね。


「で。今」

ママは、そういって、ツイとテレビ画面を指差した。


いや、ママ。一番聞きたいトコが、ざっくり省略されてるって。


***


仕方ないから、こっちから質問。

「えーと。晃兄ちゃんは、何て?」


「えー、良いんじゃない? 晃がイヤがったら、朱音さんだってテレビになんか出ないわよ~」


「え、じゃあ、むしろ晃兄ちゃんが、朱音さんにテレビに出て欲しかったってこと?」


「んー、二人から聞いた話だと、朱音さんが乗り気だったし、晃もそれで良いって事みたいよ」


「朱音さんが乗り気・・・」

朱音さん・・・。まさか芸能界入りするなんて。

「でもあの人、朱雀なんだし、テレビに出ちゃって良いのかな・・・?」


「本人が出たいって言うなら良いじゃない」

ママは真顔で言った。

「スカウトの人が朱音さんをベタ褒めしたんだって。

 それで朱音さんも、『私の容姿や笑顔で皆が楽しくなるのでしたら是非勤めさせていただきますわ』って」


あぁ~、その思考回路は、なんだか納得~。


ママは続ける。

「それで、あっという間にテレビに出ちゃって、あっという間に人気が出ちゃって、もうトントントーンと、有名人」


うわぁ、すごい。

さすが朱雀な朱音さん、と言うべきか・・・。


まぁ私が今自分の事でイッパイイッパイになってたけど、でもまさかこんな事になっているとは。

世の中のスピードって本当に速いなぁ。


しみじみ。


『ピィィ(しみじみ)』

『キュ~???』


***


なんだかテレビの中の朱音さんは、本当に素敵です。


にっこり笑顔はあでやかながらどこか優しさを滲ませて、それでいて答える声からは元気を貰えそう。


あぁ、なんだか同性ながら見とれちゃう。


こんな人が恋人だなんて、晃兄ちゃんもなんて幸せ者なんだ。


そーいえば、年齢とかどうしてんだろ。実は朱音さん、推定年齢○千年だったような・・・。



ハッ!!?


私は気付いた!


『ピ!!?』

シロが私の驚いた動きに驚いた!!


『キュゥ??』

クロはよく分かっていなかった!!


「ママ、ママ、ママ、マママ!」


「マが一つ多いわ、佳世」


「ママママ! どうすんの、朱音さん! この人、何年経っても姿きっと変わんないのに!」


ママは変な顔で私を見つめた。よく分かっていないみたい。


「だって、ママ! 人気でて何年も経っても、年とらないのよ、皆におかしいって気付かれちゃうよ!」


ママは首を傾げた。何をそんなに大変がっているのか分からない、といった風だ。


「10年経っても、20年経っても、変わらないんだよ! それってやっぱりマズイんじゃないの、それなのにテレビに出ちゃって・・・・」


「ぷっ」

可笑しそうに、ママが吹き出した。


その反応に驚いた私に向かって、ママは平然とこう言った。

「だいじょーぶよ、佳世。数年ぐらいしたら、晃と電撃結婚でもして、芸能界さっさと引退すれば良いんだから」


・・・ん?


ママはうんうんと頷いている。

「気にしなくて大丈夫、大丈夫」


・・・・。


あぁ、朱音さんは、伝説の人になるのね・・・(?)


『キュ~?(芸能界って何かなぁ?)』

『ピィピィ(きっと、学校みたいなところだよ)』

『キュ~♪(そっか~♪)』


***


テレビの中の朱音さんは本当に素敵できれいで輝いていた。


なんだか私も輝きたいなぁ、なんて気分になってて。


ぼ~っとテレビの朱音さんを眺めていたら、ママが独り言みたいにポソっと言った。


「テレビに出ちゃったら、きっと全国、晃や継人や佳世みたいな子どもたちが、増えるのねぇ・・・」


「・・・ママ?」


「ご飯食べたら、片付けちゃんとしなさいよ」


ママもぼうっとテレビの朱音さんを見ていて。


私は、

そうだった、また受験勉強の追い込みに入らなくちゃと、

立ち上がって器や箸を台所に運ぼうとして。


そうか、

ママも、それからきっとパパも、

朱音さんが晃兄ちゃんの傍に来たことで、色んな影響が出て、

普通は見えないと言われてきたものが『見えたり』『聞こえたり』する人が増えてるって、

きっと、

ずーっと、知ってたんだなぁと、

思ったんだった。


***


さ、追い込み勉強、しよーっと・・・


『ピ、ピィ(あ、勉強かぁ)』

『キュッキュッ!(がんばれ、おかーさん!)』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ