名前をつけてあげました
小さな二匹の龍は、私が手を開けても逃げて行かなかった。
私の傍で、ふよふよ浮かんでる。
可愛い。素敵過ぎる。
生まれて初めて見たのが私だろうから、もう私を親と思ってるのかもしれない。
そのうち「おかーさん」と呼ばせよう。
よし。
でも、どうして電子レンジから龍が生まれて来たのかなぁ。
正確に言えば、茶わん蒸しの煙と焦げから生まれてきたわけだけど。
あれかな、『化学が引き起こした奇跡!!』とか。
『禁断の科学テクノロジーが生み出した生命の神秘!!』とか。
なんか変。まぁどうでもいいや。私、文系だし。
二匹の龍だけど、鳴き声が二匹でちょっと違うのが分かった。
白い方は、『ピィピィ』で、
黒い方は、『キュゥキュゥ』。
二匹とも同時に生まれたみたいだけど、色も違うし、やっぱり色々違うのかもしれない。
声も、白い方がちょっと高いみたい。黒い方は、白よりもちょっと深い声かなぁ。
それはさておき、まずはやっぱり名前をつけたいよね。
二匹に、名前をつけると教えてあげたら、ワクワクして待ってるみたい。
二匹の周りが、わくわく、わくわく、って、震えてるように見えるんだよね。かわいいなぁ。
あ、でも、名前の意味は分かってるんだね。謎。
とにかく、期待されてるし、張り切ってつけなくちゃ。
白と黒だから、その特徴は入れておきたい。
あと、東洋龍でしょ。カッコイイ名前も憧れるんだよね。漢字で、日本っぽい名前とか、良いよね。
『キュゥキュゥ』
『ピィピィ』
悩んでると、黒い龍と白い龍がちょっと鳴いて存在をアピールしてきた。
あぁ可愛い。何したって可愛いよ。
うん、鳴き声から、「キューちゃん(黒い龍)」「ピーちゃん(白い龍)」とかも、ありかな?
それで、二匹まとめて「キューピー☆」なんちゃって…。
ううん、龍にそれは無いわ、やめとこう。
それからいろいろ真面目に悩んだ。
で、決めた名前を、二匹に告げた。
「白い龍と黒い龍だから…『四朗』に『九郎』!」
ジャジャーン、どうだ!? と思ったのに、
黒い龍:『キュー(訳:ふぅん)』
白い龍:『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ケッ!!!』
白い龍に反抗された。
…「ケッ」って? 「ケッ」て言ったよ、白い龍が!?
白い龍:『ピ! ッピッピピピピピピ ピーピーピーッ! ケッ!(訳:二匹しかいないのに、なーにが『四郎』に『九郎』だ。バカバーカ!)』
黒い龍:『キュ、キュウゥ…(オロオロ)』
ほぼ「ピ」オンリーなのに、馬鹿にされている事が良く分かる不思議。白い龍って、思ったより攻撃的な性格だったみたい。
そして、黒い龍がオロオロしているのもよく分かる。黒い子はおとなしいのかな?
うーん、四朗と九郎。「シロウ」「クロウ」で色の音も入ってるし、漢字だし、良いと思ったんだけど。
本当は「龍四郎」とか「龍九郎」とか、頭にもう一つ漢字入れてもいいかなーとか思ったんだけどさ。
可愛さもアピールしたいし、すると漢字三文字は濃すぎかなあ、とか思い切ってスッキリさせたんだけど。
とにかく、生まれた直後に、白いのがグレてしまった。
「じゃあ…、『シロ』に『クロ』」
白い龍:『ピィ(訳:うん、いーよ)』
黒い龍:『キュゥ!?(訳:えっ、良いの!?』
白い龍がピーピー言わなくなったので、これに決定。
命名。
白い龍:シロ
黒い龍:クロ