みんな、すごい。
バタバタと一人が、七海ちゃんを探しに教室をかけて出て行ってくれて、私もついていこうと思ったら、いつの間にか、ちょっと仲良しの碧ちゃんがそばにいて、
「左手の上にいるんだよね?」
って確認して、
「えーと、元気になあれ」
って、両手で包むような動きと共に、まるでおまじないのような事を言った。
私はキョトンとして碧ちゃんを見る。
「んー・・・ダメもとで・・・ちょっとは、回復する、カモ?」
「井上さん、分かるの?」とは西野さん。
「んー・・・わかんない」と、碧ちゃん。「でも、こうすると効く・・・カモ?」
そうこうしているうちに、バタバタと廊下を走って、呼びに行ってくれた峰さんと共に、結意ちゃんと七海ちゃんが来てくれた。
ついでに、掃除終了のチャイムが鳴って、みんなわらわら教室に戻ってきてる。
学級委員長の高橋さんも後ろの扉から教室に入ろうとして来て・・・目を丸くして、私たちを見た。
「何してる・・・三村、どうした!」
はっと振り返ると、前の扉から岸田先生が入ってくるところだった。これから、ホームルームの時間になるんだ。
岸田先生は、私が泣いてるのに気付いて一瞬身を引いた。
私がとっさに答えられないでいると、クラスの男子の吉見くんがこう言った。
「先生、今、来たら邪魔です~」
「・・・あ!? 吉見、お前・・・!」
「先生、生徒の自主性を重んじて、少し職員室に忘れ物でも取りに帰ってください!」
きっぱりはっきりそんな事を言ったのは、学級委員の高橋さん。
岸田先生は茫然としたけど、高橋さんは、生真面目な様子で礼儀正しく頭さえ下げた。
「お願いします」
「はー!?」
岸田先生は動揺しながら、
「オ、オレの寛大さに感謝しろ」
と捨て台詞を残しながら、去っていってくれた。
なんだか色々信じられない。
みんな、すごい・・・?
七海ちゃんが、私の傍に押しやられるようにやってきて、
「えー? なんで泣いてるの、大丈夫~?」
と自分も泣きそうな顔をして言った。
私はまた涙腺がどっとゆるんで、七海ちゃんと結意ちゃん、そして周りに心配してくれて集まってくれた皆に、龍が見えて、クロがお腹痛いって言って動かない、っていう話を繰り返した。
「えっと、私も、実は、分からないっていうか、なんだけど」
七海ちゃんはそう言った。
「知り合いのおじさんが言うには、えっと、癒し系らしくて、えっと、やってみるね」
効果があったら良いんだけど・・・と七海ちゃんはそう言って、結意ちゃんも頷いてた。
「七海ちゃん、自分は分からないんだもんね」
「相沢さん(←七海ちゃんの名字)で、大丈夫、って」
「え、それ、精霊が言ってるの? 西野さん」
「西野さん、マジすごい」
「わ」
と、吉見くんが声をあげた。
「すごく、キレイ!」
と、窓の方でこっちの様子を見てたうちの一人の、小川さんが喜んだ。
七海ちゃんは、私の左手を両手で上と下から包み込むように持って、まるで祈るような姿勢をとったんだ。
手のひらが、ほんわりと暖かくなって、神社で使われる鈴見たいなきれいな細かい音がシャーンって、どこか遠くで鳴ったような気がした。
西野さんが、両手で耳の上をおさえながら、ちょっと幸せそうに笑ってて。
「相沢さん、すごいなぁ」
なんて呟いてる。
学級委員の高橋さんが
「もう大丈夫そう」
と近寄ってきて、言ってくれて。
「マジかよー」
なんて、教室の誰かが驚いてて。
山田さんは首をやっぱり傾げながら。
「大丈夫なの?」
私たちのことを心配してくれてて。
『ピィピィ!(クロ!クロ!)』
「クロ、大丈夫?」
『・・・・・・キュゥ・・・・・・・・』
手のひらの上のクロが、ちょっとだけ、動いて、ちょっとだけ、声を出したんだ。
クスクスと、
「食べ過ぎね。生まれたてなのに、そんなに食べると、消化ができなくて辛くなっちゃうのよ?」
なんて、高橋さんが、笑ってる。
高橋さんは、直接、クロに話しかけてる。
「希花ちゃんも見えてるんだね! えー、なんか、良いなぁ・・・!!」
感心したように米倉さんが目を丸くして、それから口をとがらせた。
「クロ、大丈夫?」
『キュゥ・・・・(おなか、パンパン・・・・)』
『ピィ・・・(クロ・・・)』
私は七海ちゃんを見た。
七海ちゃんは、確かに自分ではよく分かっていないみたいで、「どう?」と心配そうに私に聞いた。
「うん、ありがとう、ちょっと、回復したみたいで、動いたよ・・・ぅ」
ボロボロに泣いていた私はすっかり泣きモードになっちゃってるらしく、また涙が出てきた。
「え、じゃあ、もうちょっと、やってみるね?」
七海ちゃんは、そういってもうちょっと続けてくれた。
ぽわぽわした暖かさが手のひらにあって。
『ピ・・・ピィ、ピィピィ(あ、おかーさん、クロ寝ちゃった・・・)』
シロが教えてくれたように、クロは私の手のひらの上でスゥスゥ眠っちゃってた。
も、もう、大丈夫、だよね・・・?
「七海ちゃん、ありがとう、なんか、クロ、眠ったみたい」
「ホント? 大丈夫?」
「うん、寝息立ててる・・・」
「よしよしー。一安心だね」
結意ちゃんが、私と七海ちゃん二人の頭を撫でた。
結意ちゃん、やっぱり分かる人・・・?
あぁでも、もう、自分が見えるって言っちゃったら、誰がどうかなんて、もう本当にどうでも良いことかもしれないなぁ。




