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見えてる人から見た寸劇の詳細

クラスの中で、見えている人たちにはこんな風に見えていた。みたい。


はじまり。


私こと三村佳世が、小さい方の斉藤君の連れている黒い山犬(?)『ケンタロウ』に殴りかかったぁ!


斉藤君が、体を張ってそれを止めたぁ! (ついでに私の友達の池田唯意ちゃんも私を止めたぁ!)


そして三人ともが状況にはっと気付いたぁ!


そしてなにやらクサイ芝居が始まったぁ!


***


斉藤君 「え、えっと、次、三村さんの、セリフだよ」


三村佳世が固まっている。


クラスの男子の一人は思った。

“そこで、「ごめーん、忘れちゃったぁ!」って言えばなんとかなるぞ、三村!”


が、白いヒモみたいな小さな龍が、三村佳世の近くにふよふよと漂って言った。

『ピィ…ピィピィピピィ?(えっと・・・私は至って冷静よ!)』


三村佳世 「え・・・・と、私は至って、冷静よ!」


“え、セリフを言っちゃうの!?”

劇が終わるどころか、逆に始まってしまった。

男子は、斉藤の置かれた状況に同情した。


***


斉藤実さいとう みのるが頑張った!

「え、そうじゃないよ、三村さん・・・!」


白い龍も頑張った!

『ピ、ピピピ・・・ ピピピピッ!?』


三村佳世が復唱!

「え、あ、『大丈夫! 私の方は大丈夫よ!!?』」



“えっ、大丈夫じゃないから!”

いろんな声が聞こえる女子は両耳の上を両手でこすった。

“どう終わらせるの、その小芝居~?”


『聞こえる』だけで『見えない』彼女だが、三村佳世と池田唯意と斉藤実の様子は誰にだって見える。


三村佳世がセリフを言い直したことで斉藤実が動揺している。

それを見て池田唯意が事態を収めようと口を開きかけている。

ちなみに三村佳世はもう頭が真っ白の様子。


どれだけこの小芝居の真実が分かっている人間がいるかは不明だが、クラス中の目が注がれているのは間違いない。


“あ~あ。まぁ、良いけど…”

と、『聞こえる』彼女は思った。


どう事態が収まるのかは分からないが、後で、あの三人に、自分は『聞こえる』のだと打ち明けにいくのは良いかもしれない。


だって、『聞こえる』事を話し合ったり相談したり、確認しあったりできる人が欲しかったのだから。


***


池田唯意が言った。

「大丈夫、なのね、良かった、じゃあ、とりあえず、落ち着きましょう?」


セリフのようでいながら三村佳世と斉藤実へのメッセージにもなっている。

“グッジョブ、池田ちゃん!”

と女子の一人が思った。


彼女には、小さな白い光が、ふわふわと三村佳世の傍に漂っているのが見えている。


白い光が瞬いた。


そして、三村佳世が口を開く。

多分、白い光は、三村佳世をサポートしている。


「うん、座ってご飯を食べ・・・ましょう・・・」

三村佳世は、途中で首を傾げながら言った。

混乱しつつも、サポートされていたセリフに疑問を感じたみたいだ。

やっと、『これで良いのかな』と、冷静さが戻ってきたみたいだ。


“いつまで続けんの、それ”

と、白い光に向かって彼女はメッセージを送ってみた。


チカッ、チカッ、チカッ!


慌てたように白い光は瞬いて、うろうろと三村佳世周辺を漂った。

どうやら白い光もイッパイイッパイらしい。


“あ、悪いことしちゃったな”

彼女は、邪魔にならないよう、そっと見守る事にした。


***


黒い山犬『ケンタロウ』の周りにいた濃青紫の光が、ふわっと浮かび上がって言葉を伝えた。

『キュゥキュウキュウ(ご飯、ご飯をいただきます!)』

たぶん、セリフの続きをサポートしたつもりらしい。


三村佳世の耳にその言葉ははっきり届いているらしく、三村佳世はぎょっとしてその濃青紫色の光を凝視する。


白い光が慌てたようにフワフワ上下に移動している。

『ピィ、ピィピィピィ(えっと、ええっと、いただきます)』


三村佳世が何かを言う前に、斉藤実が頑張った。

「えっと・・・! 違う違う、そうじゃないって・・・」

斉藤実は一生懸命、この小芝居を止めようとしている。


『ピ・・・! ピィピィピィピィ・・・(えっと、えっと、えっと、おいしいご飯は白いご飯!)』

『キュゥ・・キュゥキュウ(違うよシロちゃん、シロちゃんのご飯は湯気だよねー?)』


三村佳世が「うっ」と呻いた。


“ダメだ、サポート軍が超混乱してる”

“うーん、助ける?”

“どうやって?”

“う・・・、もうちょっとあれをまとめてもらわないと手の出しようが・・・”

“だよねぇ・・・”


目線を交わすだけで会話できちゃうクラスの二人が目線で会話中。


その時、別の男子と女子が注目の三人に声をかけた。

「あー、有志の劇か、頑張れよ~。斉藤たちだったんだ~」

「あ、そっかー。大変ね~、あ、でも強制じゃないんだっけ? 無理なら出ないんでしょ?」

なんとか助けてやろうと思っている人が他にもいた様子だ。


三村佳世たちはひきつりつつ笑顔になりながら、まだ小芝居を頑張って続けようとしている。


いい加減、打ち切れば良いのに…と思うのだが。


“ところで、あれ、何に見えてる?”

“どれ?”

“三村さんの周りに、白い光と青紫の光あるんだけど”

“あ、そう見えるんだー。アタシには、あれ、白い龍と黒い龍に見えるよ”

“へー。三村さんのサポートかな?”

“そうじゃないかなー? 傍にいるし。ちなみに、龍だけどめっちゃちっちゃい。赤ちゃん、産まれたてかな?”

“ふーん、そっか。そして、その可愛いサポートが三村さんを惑わして、この茶番劇が未だに続いているわけなんだな”

“可哀想な事言わないでよ。めっちゃ必死よ、あの龍の赤ちゃんたち。特に白い方。健気だわ”

“報われてないけど”



『キュゥキュゥ、キュウッ♪(食べた後は皆でお散歩にだねっ♪)』

『ピ・・・!? ピピピ・・・!? ピィ!! ピピピッ(えっ・・・!? お散歩・・・!? じゃなくて!! えっと、ごちそうさま!』


「うぅっ・・・!!」

またもや言葉に詰まる三村佳世。


だから、いい加減そろそろその小芝居を打ち切れば良いのに・・・。



“三村さんも見える人だったんだなぁ。違うと思ってたのに”

“え、見えて納得だよー。だって、三村さんのお兄さん、アカネヒメの恋人だよー?”

“え? 誰が何? アカネヒメって誰?”

“あれ。知らないの? 意外ー。ここら地域の守護神じゃん。アカネヒメ。でっかい朱雀”

“マジでー?”

“あれ、見たこと無い?”

“いや、だって俺、朱雀とか龍とかで見えないし”

“そっかそっか。あ、ちなみに、ウチらの年代にやたら『不思議ちゃん』多いのは、アカネヒメの影響なんだよ”

“なんで?”

“アカネヒメが三村さんのお兄ちゃんのところに降りてきちゃって、影響がもろに出てンの。普通は神様エリア?とかから見守ってるだけじゃん? それがアタシたちのすぐ傍にいるんだし、そりゃ影響でるよね”

“まじか。そんなの良いのか?”

“んー、少なくとも吉見っちには良かったんじゃないのー? 分かり合える友達いっぱい出てきてさ”

“あれ、俺だけなんか違う扱い?”

“だってアンタは天然でしょ。アタシたちも天然っちゃ天然だけど”

“えー・・・・疎外感ー・・・”

“何いってんのよ、アタシがいるじゃん!”

“・・・ぇえー・・・”

“・・・吉見っち・・・?”


目線で会話していた二人は、いつの間にかじとーっとお互いを冷たい目で見つめている。


***


シロとクロのサポートがあまりにも突拍子ない内容になってきて、言葉に詰まって困ってたら、

唯意ちゃんが私の目をジっと見つめて言った。

「あーやっぱり、上手くいかないねー、私たち辞退した方が良いよね~」

口調は穏やかなのに、目がすごく私に訴えている!


そうだ、ここで終わり!


「そうだよねー!! 無理だねー!!」

一生懸命、唯意ちゃんの発言に乗っかった。同時に斉藤君も乗っかってて。


やっと小芝居を打ち切ることができました。


うぅ、唯意ちゃん、斉藤くん、なんかごめんね。

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