高校に連れて行ってみた
「ところで、学校で思い出したけど、佳世は勉強順調なのか?」
と、晃兄ちゃん。
私と8つも年が離れてる晃兄ちゃんは、兄っていうより親の気持ちになってるみたい。
「まぁ、それなりに…?」
たぶん。
「・・・」
晃兄ちゃんは、無言で私をじっと見た。
私の返事が、晃兄ちゃんにとって、微妙だったんだろう。
「シロクロの事も大切だけど、佳世もまだ子どもなんだから、自分の事大切にしろよ。学校も明日から始まるんだろ?」
説教されてしまいました。
***
晃兄ちゃんの部屋から退散だー!!
『キュゥ~(おかーさん、おかえり~)』
『ピィ?(どうしたの?)』
部屋で待っていたクロとシロが迎えてくれたよ。
そうだ、シロとクロに言っておかなきゃ。
「シロ、クロ。あのね、明日から、私、学校に行くから」
『ピィ(へー)』
『キュッ!?(学校!?)』
「あ、シロとクロの学校とは違って、私のための学校なんだよ」
『ピィ(へー…)』
『キュゥ…(学校・・・)』
「・・・・・・」
だから明日からお留守番しててね、と言うつもりだったのに、二匹の様子を見ていたら、シロとクロも高校に連れて行っても良いのかも、なんて思えてきたよ。
***
翌日。
社会見学がてらってことで、こっそり、シロとクロも高校に連れて行くことにしました。
シロとクロがどれだけの人に見えるのか、見えないのか、見えて良いのか、良くないのか、さっぱり分からない。
だからとりあえず安全策で、シロとクロには学校カバンに隠れてもらってる。
とはいえ、珍しいらしく、首を出して、チラチラのぞいてるけど。
特にシロなんか、首どころか、体半分出してるもんね。
『ピー』
『キュ~』
以前初詣に行った時は車だったけど、今回は私は徒歩で出かけてるから、その分色んなものが目に付くみたいで、二匹でなんだかワクワクしてるんだよ。
だったら、もっともっとこれからお散歩に連れて行ってあげたいなぁ。
こんなにワクワクしてもらえたら、私まで嬉しく幸せになってくる。
わくわく。ワクワク。
***
高校に到着。
自分の席について、カバンを机に置いて…。
と、私にコソっと耳打ちしてきた人が。
「名前、なんていうの?」
ぎょっとして振り返ると、基本的にさっぱり話す機会の無い、メガネをかけた学級委員長の高橋さんがすぐ横に居た。
「え、三村 佳世 ・・・」
すると高橋さんは、真面目な表情のまま私の目を見つめて、それから私のカバンに目を落とした。
「え、三村さんじゃなくて、この子達の事だけど」
恐る恐るカバンを見る私。
シロは空気を読んだのか、カバンの中に隠れてる(でも上から見ると顔が見えてる)。
だけど、クロはのほほんと全身出てきてて、
『キュゥ~☆(こんにちわ~☆)』
とか挨拶してた。
ク、クロちゃん・・・。クロちゃーん・・・?
***
どうやら、学級委員長の高橋さんには見えるらしい。
「シロとクロって名前だよ・・・」
私がドキドキしながら教えると、高橋さんは全く驚きもせず、「ふーん」と答え、クロには「こんにちは、クロ」とか挨拶してる。
高橋さんは、シロが隠れているのも見ているみたいで、明らかに白色と黒色、どっちが『シロ』でどっちが『クロ』という名前なのか、悩みもしなかったみたい。
えぇ、そんな安直な名前をつけたのは私ですよ、はい。
『ピィ?(なになに、出ても良いの?)』
クロと高橋さんの交流を見て、シロまで半分カバンから出てきちゃった。
「シロ、こんにちは」
高橋さんは、シロにも挨拶してから、私の方に向き直った。
「ペットは連れてきちゃいけないのよ」
えっ!?
「ペ、ペットじゃないから!」
慌てて私はそう言った。
でも、もしかしてそういう分類に入っちゃうんだろうか。
高橋さんは真面目な眼差しでじっと私を見た。
「・・・・・・」
わぁ、怖いよぅ、どうしよう!?
「え、っと、隠れててもらうから! 今日は見逃して!」
やっぱり、シロとクロはお留守番してもらった方が良かったんだ。
「冗談よ」
真顔のままで、高橋さんは言った。
「だって、こういう系のは、それぞれだもの」
へ?
高橋さんが冗談言うの・・・?
じゃなくて、その後何か変な事を言ったよね、学級委員長!?
「まぁでも、ちょろちょろして迷子になったら困るから、三村さんの周りに居てもらってね」
「え・・・あ・・・・・・う・・」
ダメだ、話の展開についていけない。
「あ、黒板の準備しなきゃ。じゃあね」
「え・・・・・・・・・・・・うん・・・」
高橋学級委員長は、今日から週番(担当になった1週間、黒板消ししたり電気点けたり日誌を書いたりする)らしい。
いや、週番の事はどうでも良くてね・・・?
どうしよう。
想像以上に、見える人、多かったりするのだろうか?
・・・はて?
別に悩む事でもないんだろうか。
悩む事でも無いような気がしてきた。
誰に見えてても、いいよねぇ??




