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STAGE1:戦士と白龍

 この世には光と闇がある。人々は光を浴び、文明と共にその長い歴史を歩んできた。人類が栄光を謳歌する一方で、闇が光を蝕まんとしていた。その名はシェイド――有史以前より存在していたとされる、影と隙間より出でる邪悪なる怪物。人々の怒りや憎しみ、悲しみ、妬み等――負の感情を糧とし、ときには人を食らう。影を踏めば魔の者に食われ、隙間を覗けばそこには魔の者たちがうごめいている。――決して覗いてはいけない。決して近付いてはならない。


「キャアアアアアア!!」


 星空が見下ろす夜の町、今日もどこかで誰かが悲鳴を上げる。そんな非力な人々に、怪物どもは容赦なくキバを剥き襲いかかる。そして今まさにこの女性を食わんとしていた。このままでは帰らぬ人となるだろう。だが――そんな女性のを救うように、すばやく振るわれた剣戟が怪物どもを殲滅していく。ゾンビのような動きをしていた人型の怪物がゆっくりと崩れ、霧散する。


「ここは危険だ! 早く逃げろ!」


 女性を救ったのは、大剣と盾で武装した壮年の男性だった。見た目から察するに恐らく40代。しかし無駄な贅肉はなく、すらりとしていながら鍛え上げられた屈強な肉体を持ち、さながら勇敢な戦士のようだ。その傍らには、己の身の丈をゆうに超える大きさの――白い龍を従えていた。


「……行くぞ!」


 漂う威圧感。圧倒的な強さ。その叫び声ひとつだけでもこの男がただものではないことがうかがい知れる。冷静だがしかし、熱いものを秘めた目つきの男は均整の取れた動きと巧みな技で瞬く間に敵をなで斬りし、消滅させていく。残ったのは一匹だけだ。


「あとは一匹だけか。行くぞ、白いの!」


 白龍が雄叫びを上げた。一匹だけ残った怪物はすくみ上がり、その隙を狙って男は飛び上がり――同時に白龍は青白い炎を吐き出す。赤と青の炎を纏ったまま、男は剣を敵めがけて突き出し――そのまま突撃。貫いて着地した刹那、怪物は大爆発し砕け散った。


「……ふう。こんなものかね」


 戦いが終わり、男が安堵の息を吐く。その息には襲われていた人を救うことが出来てよかった、という安心感も含まれていた。そのとき、男の身の丈を超える巨体を誇っていた白龍の体が光に包まれたかと思えば縮んでいき――。やがて妖艶な女性へと姿を変えた。髪は白銀色でその長さは膝下まであり、瞳は切れ長で血のような赤色。細い瞳孔が物々しい。肌も透き通るような色白で、背も高い。足もすらりと長く、太すぎず細すぎずのほどよい肉つきの肢体。何より胸がでかい。ただ、残念なことにマントを羽織っていてそその下に隠れたグラマラスな肢体を拝む事は出来なかった。そのマントはグレーで少しボロボロ。渦を巻く東洋の龍を模した幾何学的な模様が入っていた。


「……ずいぶん腕を上げたのぅ、明雄。いや、元からこうだったか?」

「へへ、まあな。これでも鍛えてますから」

「フッ。私に会うまでパートナーができなかったくせに」

「何をーう!」


 白龍が化身した女性にからかわれ、明雄と呼ばれた男性が冗談半分で怒る。が、すぐに笑顔になった。


「さて、もう夜も更けた。そろそろ行くとするかの」

「ああ、喜んで。速く帰らなきゃ女房に怒られちまうよぉ」

「そうなっても私は知らんぞ」

「ひでぇ! なんでだよ」

「お主のヨメだろう。自分で何とかせい」

「へーい……」


 さながら寸劇のようなやりとりを交わした後、明雄と白髪の女性はその場をあとにする。シェイドはまだまだ潜んでいる。戦いも続く――。彼らはどこへ向かい、誰がために戦うのだろうか?



 ――これは、東條健とうじょう たけるがエスパーとなるより8年前の物語である。

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