試されているような
あの後はソレイユさんがわたしの汚れた服や乱れた髪を整えてくれて、わたしはアイラン国にいた時よりも綺麗な姿になっていた。ソレイユさんに「とてもお綺麗です」と言われ…何だか少し照れくさくなる
……そういえば、わたしが聞きたかったこと、まだ何も聞いてなかったな…今はソレイユさんしかいないし、ソレイユさんに聞いてみよう…
「あの…質問をいくつかしてもいいですか?」
少し緊張しながらもわたしはそう言った。さっきみたいに誤魔化されないといいけど…
「私が答えられる範囲のものならなんなりと」
良かった、ソレイユさんは答えてくれそう……まず聞きたいのは、今わたしがいる場所は一体どこなのか。ガーベラ国にいるのはわかったけど…ガーベラ国のどこなのかが気になる。わたしはソレイユさんに「…ここはどこなんですか?」と聞いた、するとソレイユさんは戸惑うことなく話し出した
「ここはガーベラ国の王宮で、ここはお客様用の部屋でございます」
なるほど…ならわたし最初から客として扱われてたのかな…?あのソルっていう王子はよく分からないな…怖いし…
「じゃあ、その…なんでわたしはここに連れて来られたんですか?」
「それはソル様にお聞きするのが1番かと」
た、確かに…こんなことソレイユさんに聞くもんじゃなかったな…何だか少し申し訳ない…
「えっと、じゃあその…わたし…今日ずっとここにいないといけないんですか?」
「それもソル様にお聞きするのが1番かと。」
「そ、そうですか…なら、ソル…様はどこに?」
わたしがそう言うと、ソレイユさんは少しの間をあけた
「詳しくは知りませんが、恐らく自室にいるかと。」
自室…?確か自分の部屋ってことだよね…でもわたしここのこと全然知らないし…申し訳ないけど、ソレイユさんに案内してもらおう…
「案内…してくれませんか?」
わたしがそう言うとソレイユさんは「分かりました」の一言だけを言って、客間の部屋の扉を開け、部屋を出て行った。わたしもそれに続き、客間の部屋を後にした
✱ ✱ ✱
「ここです」
ソレイユさんはそう言って自分よりもはるかにデカい扉の前で止まった。正にいかにもって感じだ
わたしが扉をじーっと見ていると、ソレイユさんが扉をノックした。
「失礼します。エルノア様をお連れしました」
ソレイユさんがそう言うと、部屋の中から「入れ」と声が聞こえた。するとソレイユさんは「私はここにいますので」と言って大きな扉をゆっくりと開けた。この先にあの男がいる…そう思うと、あの威圧感を思い出して冷や汗をかく
✱ ✱ ✱
部屋の中に入ると、高級そうな机に両腕を置いて足を組みながら椅子に座っているソルがいた。
「わざわざ俺の部屋にまで来て…何の用だ?」
聞いてくれるんだ…とは思いつつ、わたしは唾を飲み込み、勇気をだして声を出した
「実は、ソル様に聞きたいことがありまして…いくつか質問をしても良いでしょうか?」
「許可する。言ってみろ」
この人王子なのに王様みたいな雰囲気だな…まあ許可もらえたしいっか
「あなたはわたしを助けてくれて、ここに連れてきてくれましたが……その理由を教えてくれませんか?」
「理由を知ってどうするんだ?話したら何か俺にメリットはあるか?」
「あなたにお礼をしたいのです。あなたが助けてくれなければわたしはあのまま死んでいましたし…それなりのことは…」
「お前のような子供に何ができると言うんだ?俺を満足させれるとでも言うのか?」
ソルの返しに、思わず息が詰まる。
ソルの言葉には言葉でなら答えられることは出来るけど、行動で答えることは難しい…なんて言ったらいいんだろうか?
「わたしにできることがあればなんでも」って言うのもいいけど……ソルが何を考えてるか分からない今の状態でこれを言うのはかなり怖い…
「…では、ソル様は今望んでることはありますか?」
「俺の望んでることだと…?」
ソルはわたしの言葉を聞いて眉を寄せ、先程よりも鋭い目つきでこちらを見てきた
「はい、もしソル様の望んでるものが、わたしに出来るようなことであればお手伝いします」
わたしみたいな子供には、これが限界だった。
わたしの話を聞いて、ソルは少しの間黙り込んだが…ゆっくりと口を開けた
「お前のような子供に、俺の望みを叶えられるとは到底思えないな」
「なら証明します!わ、わたしは昔から本を読んでたので、それなりの知識は持っているつもりです……もしあなたの期待に応えられなければわたしの身分は関係なく、どうこうしてもらっても構いません。だから…」
だからどうか、うちに返さないでほしい……
わたしは精一杯頭を下げ、ソルの返事を待った。ソルの顔は見えないが相変わらずこちらに視線を向けていることは分かった
「…そこまで言うなら許可してやらないこともない、だが1週間だ。1週間の間に俺の望みを叶えろ、それが出来ないなら…お前にはその辺で野垂れ死んでもらう」
わたしはソルの言葉に表情をパァっと明るくした、けど…1週間か……1週間でこの人の望みを叶えられるのだろうか…
「…分かりました、それで…その、ソル様の望みとは…?」
「…最近、他国からの嫌がらせが多くてな」
他国からの嫌がらせ…?
「それって…具体的にどんな嫌がらせをされているのですか?」
「そうだな…下らない事だが、物を盗まれたり、民への無差別な暴力、あとは俺の良くない噂を色んなところに広めたり…まあそんなとこだ」
確かに、正直言って下らない…なんで他国の人はこんなことをするんだろう…?いや、それより……
「何故、他国の人がやってると分かるのですか?」
「それに関しては詳しく話せないが、簡単に言うと…向こうのミスだな。いつもアイツらは兵士が駆けつける度に逃げる…だが時々証拠を残していくんだ。まるでわざと教えてるかのように…」
「(尚更分からない…一体何が目的なんだろう…)」
「だから、お前にはこの衝動を収めて欲しい」
わたしはソルの言ったことを脳内でもう一度確認し、思わず「は?」と言ってしまった…
「ふん、やはりお子様には難しいか、まあ無理ならいいんだぞ?俺は全く構わない」
こんなこと口が裂けても言えないけど、わたしこの人の態度ほんっとうに嫌いだ!子供だからってなめられてる…ッ
「やります!1週間の間に、わたしがなんとかしてみせます!!」
わたしは感情に身を任せてしまい、うっかりそんなことを言ってしまった
「そうか、ならお前がこの国で出歩きすることを許可しよう。よろしく頼むぞ、シャマラン殿」
ニヤリと笑った彼は、まるでわたしを試しているかのような…わたしを怪しんでいるかのような…そんな目だった。
でも出歩きすることを許可されたことは嬉しいしホッとした
「…先に言っとくが、俺はお前にチャンスを与えただけであって、期待はしていない。分かったな?」
「わ、分かりました…光栄に思います…」
わたし、本当になめられてるなぁ…それにこれは、この人の望みと言うより…わたしを試す試験のような感じがする…更には、1週間も面倒見てくれるなんて…とてもだが1泊することしか許さない王子様とは思えない……けどこれは本当に光栄なことだ。この人に期待はされてなくとも、期待に応えるつもりでわたしは動く
「(何がなんでもうちには帰りたくないし、何より帰れない…!
絶対にこの人に認めてもらわないと……)」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
(※少し変更を行いました)