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灯台のひと夏  作者: 塔上月扉
3/14

3 騒がしい

 もともと無人島な上に、ここへ来ると誰にも知らせていないから、当然ながら誰も来ない。来る予定もない。

 たまに気まぐれで鳥が一羽だけでやってくる。

 羽を休めにきたり、岩の上で勝手に遊んで帰ったり。

 鳥の種類はあまり知らないけれど、白い大きな鳥はカモメだろうか?

 餌はあげない。一度でも餌をやると、この小島も灯台も鳥の巣にされてしまうから。でもたまに一匹でふらりと立ち寄ることぐらいは見ないふりをしてあげよう。

 おそらくはカモメだろうと思う白い大きな鳥。小さな灰色っぽい鳥もたまにやって来る。かわいいけれど、何の鳥かはまったくわからない。

 けっこうおしゃべりで鳴き声がかわいらしい。

 寝ているところを、鳴き声で起こされることもしばしば。鳥の声は小さなさえずりなのに、よく耳に入ってくる。澄んでいるからだろうか。

 無人島なのに意外に音が多い。

 島の岸壁にぶつかる波の音は一日中聞こえ続けている。

 風が強い日には、風が塔にぶつかる音がする。窓も扉も塔自体も風に揺れる。

 それから招待してもいないのにやって来て歌う小鳥。

 鳥が鳴くのは、ここに餌があると仲間に知らせたり、危険を知らせたり、恋の歌を歌ったりするためだったはず。他の鳥もいない小島にふらりと一羽でやってきて、なぜ鳴いているのか……。ひとり言か鼻歌か知らないが、迷惑なことだ。

 無人のはずの小島は、波に風に鳥にと、今日も騒がしい。

 だが夜が訪れると、鳥の声は聞こえなくなる。

 代わりに月と星が加わる。

 夜になると、波の音、風の音に、月の光がゆっくりと降り注ぐ音と、星が瞬く音が混ざっているように感じられる。

 耳を澄ますと、砂時計の砂が落ちるような静かな気配。

 昼には聞こえない、夜だけの音の気配がたしかにするのだ。

 薄明かりが水平線の色を変え始めると、不思議とその音の気配は止まる。

 だから夜の音は、確実に鳴っているのだと思う。


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