8. 柊蒼視点1 (中学時代)
僕は、中学一年生の二学期に星園中学に転校してきた。
その時に出会ったのが乙瀬莉乃だった。
僕の席は乙瀬さんの隣だった。
だから、教科書が届くまでは彼女に見せてもらっていた。
だが、それ以外に特に関わりはなかった。
話すこともあまりなかったし。
彼女は思っていることが顔にでやすい人だった。
特に、僕が学年1位になった時はすごかった。
彼女は明らかに顔をひきつらせながら、
「おめでとう」
と言った。
僕は何も知らなかったから、何でこんな顔しているんだろうと疑問に思った。
だが、周りに聞けば、今まで乙瀬さんが首位をキープしていたといことを知った。
なるほど...
悔しいから、あの顔になっていたわけか...
彼女は顔にすべて出ていることに気づいていないのか?
いくら、表情が分かりやすいにしても...
分かりやすすぎないか?
その日から彼女に興味が湧いていた。
次のテストでも僕は1位だった。
その頃には、席替えをしており彼女とは離れていた。
チラッと彼女の方を見ると、悔しそうな、少し悲しそうな顔をしていた。
三学期の初めのテストでも、結果は同じだった。
僕は今回も彼女がどんな顔をしているのか気になって見てみると......彼女は僕の方にツカツカと歩いて来ていた。
そして、
「どれくらい、勉強している?」
と言った。
「えっ?
そっそんなに勉強してないよ。」
と僕が返すと、ふるふると震えていた。
えっ?
どうしたんだ?
もしかして、泣いている?
前回もちょっと泣きそうだっし...
「乙瀬さん、大丈夫?」
「.........」
「大丈夫だもん...」
「教えてくれて、ありがとう..」
と彼女は涙目で言うと去ろうとした。
したのかだが、急いだせいか転ろんでしまった。
僕は、
「大丈夫?」
と言って、手を差し伸べた。
彼女は、
「ありがとう...」
と言って手をとった。
彼女の顔は涙で目がうるうるとしているし頬が火照っていた....
かっかわいい....
その時になって、僕はようやく気づいた。
乙瀬さんのことが好きなんだと。
初めは、あんなに気持ちが表情にでる人がいるんだと驚いていた。
けれど、気がづけば彼女のクルクルとよく変わる顔を見ては今は嬉しいんだろうな悲しいんだろうななどと考えるようになっていた。
その後、乙瀬さんは急いで自分の席に戻ろうとしてまた転けていた。
周りが、「乙瀬さん大丈夫?」
と驚いている。
彼女は顔を真っ赤にしながら、
「大丈夫!」
と言ったが、立とうとしてスベシャッとまたまた転んでいた。