3. 一緒にクールビューティになろう
校内案内の後はそのまま下校だった。
皆、荷物を持って早々に帰ろうとしている。だか、混雑していてなかなか前に進めない。
今日は、教科書が配られたからみんな結構な量の荷物を持っている。
しかも、一年生の教室は4階にあるが下駄箱は1階だ。なかなか大変である。
やっと、2階に到達した。
あと少しだ。
そう思った時、前方にある人物を見つけた。
その人物は同じクラスの有沢早矢香ちゃんだった。一番始めに自己紹介をしていたから、彼女のことはよく覚えていた。
せっかくだから、少しでも仲良くなりたいそう思って、私は彼女に話しかけようとした...
のだが、よそ見をしていたせいか躓いて転びそうになってしまった。しかし、転ぶことはなかった。その代わりに前の人の腕を力強く掴んでしまった...
ちなみに、その人は早矢香ちゃんではない...
「ごめんなさい。
大丈夫ですか?」私は急いで謝った。
「大丈夫ですよ。」前の人は振り返ってそう言った。
あっ、クラスメートの永安寺夕陽くんだ..
彼も私のことが分かったようで、
「あっ、同じクラスの乙瀬さんだよね?」
と言った。
「あっ、うん。
永安寺くんだよね?
転けそうになっちゃて、思いっきりつかんじゃったけと痛くない?
本当にごめんなさい。」
と私は再び謝った。
すると、彼は
「全然大丈夫だよ~
そっちこそ大丈夫?」と言った。
私は驚愕した...
彼は私にキャラを奪われたのに、こんなに優しいだなんて....
何てことだ..
私は呆気にとられてしまった。
きっと、ポカーンとした顔をしているだろう。
「お~い?」
「大丈夫?」
彼だってクールビューティになりたかったはずなのに...
よくよく考えたら、クールビューティなキャラってロングヘアだけじゃなくてショートヘアーでもいたような...
永安寺くんの髪型はショートヘアーといってもいいんじゃないか?
っていうか、髪の毛が短ければショートヘアーなんじゃないか....
別に、キャラ被りは二人ぐらいならいいのでは..
私は考えこんでしまって、また躓いてしまった。
あっ、今度こそ転ぶ...
そう思った瞬間だった。
彼が私の腕を引っ張って支えてくれたのだ。
「ねぇ、本当にだいじょうぶ?」
私は感動してしまった。
なんて優しい人なんだろう...
私がキャラを奪われたら、きっと助けないだろ。
私は決意した。
別におなじキャラの一人や二人居てもいいはずだ。
私は、感謝と決意を胸に
「うん、ありがとう。
一緒にクールビューティになろう!」
と言った。