2-4 物的証拠
無事開催された体育祭。ちょっとしたモメごとはあれど、新種目目白押し。
1.10m走
2.クラス対抗カラオケ
3.学年別クラスリレー
次はどんな種目なのか
MC「クラス対抗リレーの前に少しトラブルがあり、長引いたこともありこの後はお昼休憩とします。生徒の皆さん。お弁当持ってきてますか?学校の近くの商店街からキッチンカーが来ております。お弁当持ってない生徒や足りないと思った生徒は、こちらのキッチンカーでお買い求めください」
生徒会と一部の生徒たちによる、商店街にポスターとチラシの配布をした際に、料理の提供をお願いできないかと聞いて回った。精肉店やおでん専門店に喫茶店。それから居酒屋も参加した。
キッチンカーは、魔王株式会社がこれまで依頼のあった企業から借りたもの。子どもたちのためならばと企業は喜んで貸し出してくれた。そこへ、商店街の各店舗が出店すると言うもの。
無料とはいかないが、子どもでも買える金額で販売をしてくれることに。
精肉店からは、ひとくちトンカツと唐揚げ3個入りをセットで150円で販売。
おでん専門店は、王道の「大根・卵・こんにゃく」の他に子供も好きな「餅巾着・ウインナー巻」を追加して、セット販売をしている。王道100円。追加2品を1品30円で販売。大人からも大人気である。
喫茶店からは、ナポリタン大盛を200円。
居酒屋からは、お通しで人気の「枝豆」「冷奴」「ポテトサラダ」を各50円で販売。
MC「喫茶店に長蛇の列が出来てますね。もぐもぐ。ごくん。私も食べたいのであとで並びます」
ちょっと目線を変えてみよう。
学年主任たちはどうしてるだろうか。
教頭から職員室に呼び出されてるようだ。
彼らは必死に抵抗し言い訳をしている。昨日までは、信用されていた教師たちが頭を垂れ苦悶の様子。
声は聞こえないが、ガラス越しにその様子が見て取れる。
MC「先ほど、ナポリタンの大盛を戴きました。美味しかったです。近いうちにお邪魔しますね。では、あと20分ほどで競技再開します。再会最初の競技は、クラス対抗似顔絵コンテストです。お腹いっぱいでも集中力さえあればなんとかなりそうな。そんな競技です。詳細は、追ってお知らせします」
そう伝えると、生徒たちは、いつもと違う体育祭を楽しみ、生徒会からの要望にも真っすぐに応える。
再開
クラス対抗似顔絵コンテストの詳細は、学年に関係なくクラスごとに、B5サイズのコピー用紙に、左右の眉毛・左右の目・鼻・口・左右の耳を各1人ずつで描き、A0サイズの画用紙に輪郭と髪型を描き、装飾品を複数人で描いたのを輪郭の描かれたA0サイズの画用紙に張り付け、上手く描けたクラスが優勝となる。用意されてない福笑いのような感じである。各パーツを描く際は、相談などはせずに作ることが求められる。
MC「はじめまーす。まずは、輪郭と髪型を描いてください」
輪郭と髪型は全員が見ることが出来る。
MC「では、カンニングせずに各パーツを書いてくださーい」
この時間はなかなかシュールである。参加していない生徒は何が起きてるのかよくわからないため何をしてていいのか分からない。
MC「書けましたか~?書けましたら体育座りで待たされてる生徒の皆さんに掲げてください」
掲げられても各パーツだけなので特に面白いわけでも魅入るほどでもない。
MC「では、A0の大型画用紙が貼られている場所へ移動お願いします」
参加した生徒たちは、脚立に昇り待つ。
MC「次に、左眉を両面テープで貼ってください。描いたあなたが思う場所です」
次々と顔のパーツを貼り付けていく。
するとこんな声が。
生徒「アタシ足を怪我していて脚立に上がれないので下から指示してもいいですか?」
MC「分かりました。同じように脚立に上がるのが怖いなどありましたら、私に見えるように手を挙げてください。その後クラスを言われた人は、別の人にお願いして指示を出してください」
さすが生徒会副会長。機転が利く。
どんどんとパーツが埋まり顔が出来上がる。
MC「出来上がったクラスは、タイトルを絵の下に書いてください」
タイトルは何でも良い。架空の人物であっても名前を入れても良い。
MC「では、校長先生と教頭先生。そして、美術の先生方も採点してください」
この体育祭では、生徒が主体になるのではなく、教師たちもかなり忙しい。脚立に上がるというのも運動であり、美術関連は初期のオリンピックを参考に採用した。
大事なのは、生徒が嫌々参加するのではなく、楽しんで参加することが大事なのである。ということを生徒会から学ぶ。
MC「結果発表です。結果発表は、校長先生にお願いしましょう。そして、校長先生には寸評をお願いします」
悩んだ結果。
校長「1年C組の『田中弥生』。輪郭と髪型から連想したのでしょうが、人らしい人の顔に出来上がったのは、クラスの仲が良いのだと感じました。少ない情報からよくぞ描きましたね。3年生はふざけた部分が見受けられましたが、それも良い思い出となるでしょう」
MC「校長先生ありがとうございました。優勝は、1年C組でした。みなさんおめでとうございます。C組のみなさんには、図書カードをお配りします」
最後の競技となるところで、不破派欲汚から生徒会長へ箱が手渡された。
生徒会長「これは?」
不破派欲汚「これは、学年主任たちが校内に取り付けていた盗聴器とカメラです。これをどうするかは、生徒会長に委ねたく思います。まだ未成年のあなた方には荷の重い物だと思いますが。これの中に記録された音声や動画や画像は、こちらでも保管してあります。そちらが、削除を依頼していただければ削除いたします。物的証拠として役立つと思いお渡ししました」
生徒会長「そ。そんな重要なものを。僕たちで」
不破派欲汚「わかります。心苦しいでしょうし荷が重いことでしょう」
生徒会長「ですがどうしてここまでしてくれるのですか?」
不破派欲汚「我が社は魔王株式会社ですよ。魔王は誰かの敵になるのが必然。今回だと恨みを持つのは学年主任たちでしょう。それらを管理する者たちも裁かれることでしょう」
生徒会長「あの」
不破派欲汚「どうかしましたか」
生徒会長「これが公表されたら来年定年の校長先生に悪いです。あの。校長先生が退職された後でも良いでしょうか」
不破派欲汚「もちろんです。それを決めるのは生徒会です。公表しなくても良いかと考えています。生徒会は後で緊急招集し全校生徒と話し合った方が良いでしょう。それが生徒会のある形なのです」
生徒会長「そうか。ボクが決めなくても」
不破派欲汚「そうです。もう少し肩の力を抜いて柔軟な考え方をしましょう」
音声や動画・画像は、魔王株式会社にて大事に保管された。
のちに、生徒会は翌年の夏休み前に市の教育委員会に提出し、事が大きいことだと認知される。当事者の学年主任らには大きな罰則を与えられ退職していった。
生徒会では、二期を努め学校初の良識な生徒会だったと評価された。




