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泣斬馬謖⑩

 「え~・・・皆さん。暑い中、、ご苦労様でございます。Z国のムヒ=チカラと申します。この度、ヴァグナード殿より世界会議の議長に指名を頂きました。つきましては本日より1年間、来年の9月16日までは私の指示、依頼、命令がヴァグナード殿の保証の下、絶対となります。」

ここでようやくざわつく開錠。ま、、そうなるわな。魔王に代わって独裁を貫きますと宣言したのだから。魔王の後ろ盾があるのだから、遠慮なく己の欲望を吐き出せる。

「それではひとつ目のお願いですが、食べ物を分けて下さい。豪勢なものは要りません。子供が絶えても安全な食料を分けて下さい。幸い、我々の国の人口はさほど多くはありませんので、、そこまで大量にはならないかと思いますが、保存の利くものであれば尚有り難いです。最低限の食べ物と水を宜しくお願い申し上げます。」

Z国王を誘導しているのはローグで間違いない。徐々にやり口が見えてきた。強制的に恵ませるのだ、強国から弱国に。

 「2つ目は、病院を建設して頂きたい。それとお医者様の派遣もお願いする。最優先で小児科。薬さえあれば助かるのに、医者さえいれば助かるのに、手術ひとつで完治するのに・・・・・・皆さんは弱り果てていく子供の手を握ることしかできない親の気持ちが分かりますか。信じて見つめてくる子供の視線が耐え切れず、逃げるように目を逸らす親の痛みが分かりますか。それが日常に組み込まれる国が現実に存在することを知っていますか。皆さんの国では簡単に治せる病でも、自国では生死に関わる大病となる。子供は夢であり、希望であり、未来です。我々の明日を照らす手助けをしては頂けないでしょうか。」

同族からのメッセージをどんな気持ちで訊いているかは、スライムには分からない。ここまで放置し続けてきた歴史にも興味はない。けれども皆が黙して耳を傾けている姿を見れば、人間族もまだまだ捨てたもんではないと思う(少なくともスライムよりは将来有望)。偶然に獲得した自国の経済的優位性を他国へ分配することに、もっと注力できるのではないかと期待させる。

 

 「3つ目、最後のお願いです。我が国の子供達に笑顔を届けてやってほしい。この国の人間では考えも及ばない方法を皆さんならば知っているかと存じます。情けないことに我々は子供に気を遣わせるばかりで、心から喜ばせることができないのです。ご自身のお子さん達を楽しませるように、我々の子供達にも夢や希望を、そして笑顔をくれてやってはくれませんか。」

ここでZ国王が深々と頭を下げた。それに倣ってヴァグナードも頭を垂れた。打合せにはなかったはずだ。感情が、本心が、心の底が体を動かしたのだろう。

 ・・・・・・反応がない。拍手が起こらない代わりに、罵声もなし。魔王によって支配を受ける人間界が、未知の方向へ船出した瞬間だった。

                                   【泣斬馬謖 終】

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