泣斬馬謖⑤
ホーリーナイトVSホワイトドラゴン。俗にいう金の取れる対戦だ。様子見、初弾の探り合いなんてことはしない。変身早々、挨拶代わりの凍える吹雪。ご挨拶というよりかは、ガイアの需要に応えたのかもしれない。受けるか、かわすか。ここは神々しい白銀の盾で竜のブレスを受け流した。どっしり腰を落として足を踏ん張り、吹雪をしかと受け止める。周囲の大地はあっという間に白く染め上げられ、大盾も雪が積もったように分厚くなったが、ガイア本人は無事な様子。ブレスが途切れるや否や盾を放り投げ、ドラゴンに正面から突っ込んでいった。その手に握るは白銀の大剣。
ホワイトドラゴンと目線を合わせながら、かどうかは不明だが、睨め付けながら突進するガイア。握る大剣の刀身部分は白いベールに覆われている。黒だろうが白だろうが、防御特化だろうと魔法剣士だろうと、ガイア自身の根本的な戦い方に変わりはないようだ。一方のホワイトドラゴン、どう迎え撃つのか。範囲が広く威力も高いブレス攻撃は竜族の象徴。脅威且つ万能に思えるがその実、大口空けた無防備状態を曝け出しての攻撃である。従って中距離砲としては優秀でも、間合いを詰められた状況では案外、使い勝手が悪い。なんだかんだ、多様できないのが辛い所である。
接近を拒むようにホワイトドラゴンの右腕がガイアを襲う。が、振り下ろされた右腕を完璧に見切って、寸分の無駄なく一撃をかわすガイア。続く左腕も同様。幸か不幸か、ドラゴンとの戦いにも慣れたものである。近距離で飛んでくるのは腕か尻尾。予測しやすい上に、スピードもさほど速い訳でもない。そして懐に潜り込んでしまえばこっちのものだ。竜の背に乗ったガイアが、ベールに包まれたもはや剣なのか棍棒なのか分からぬ武器を2発、3発と足下に叩き付けた。力一杯、まるでは畑を耕すように。
闇属性を理由に魔女の国を追われ、魔女を理由に人間界を追われ、魔族に闇堕ちした自分を己で問い詰めた。
重く、低く、鈍い音は鳴ったが、竜の悲鳴は訊こえない。効いているのかいないのか、身体をよじらせながら尻尾を振り回したが当たらず。ガイアは悠々と地面に着地した。
「竜族ってのは不器用な種族だよな。数える程しか戦ったことがねぇのに、次の攻撃が手に取るように分かる。特殊能力さえ見破っちまえば、後はその鱗をどうにかするだけだ。」
ガイアの勝利宣言である。
スノーブレスは避けられた、近接戦闘も分が悪い。ホワイトドラゴンに反撃の芽はないように思われた。だからこその勝利宣言。敗因は殺傷能力の低さ。ガイアだからそう見えてしまうというのは百も承知だが、ホーリーナイトと比較して手数の少なさと威力の低さが如実に顕れた形だ。これであれば白魔女の方が可能性は高かったかもしれない。今からでも戻った方が勝負になりそうな気がする。ガイアにまんまとドラゴンの弱点を見抜かれてしまっている。互いに手の内を知り尽くすというのは、互いの弱点を把握していることと同義。ところがガイアの奴は黒騎士ではなかった。アンフェアな条件であれば勝機は薄い。
だがすぐそこに、逆転の布石が敷かれていた。ホワイトドラゴンの尾が鋭く地面を叩くと、突然の爆発が起こった。白化粧をした大地と、ガイアが放っぽった大盾が爆風を巻き上げた。吹雪は凍結効果だけに非ず。二段構えだとしたら―そら当然だが―頭脳戦は白魔女に軍配が上がる。




