仲間モンスターとして勇者に同行するスライムと、泣斬馬謖(きゅうざんばしょく)
【仲間モンスターとして勇者に同行するスライムと、泣斬馬謖】
三人の石像。左の石像は大剣を肩に乗せ、右の石像は居合いの構え。二人共笑顔。どうして格好なんかつけてお茶落らけているのか。対照的に真ん中の石像の頬には一筋の涙が伝っていた。それでもその顔は、美しい微笑みを携えていた。
これより、スライムの独断と偏見で封印を解く。できればもっとずっと早く目覚めさせたかったのだが、解呪に足りる法力を蓄えるのに1年近くかかってしまった。その間に長老が封印を自ら解いてくれていれば話は早かったのだが、そう都合良くはいかなかった。さて、3人を呼び戻す理由なのだが、スライムの代わりに説明してくれる人物の所へ連れていくのが、課せられた任務である。
迷彩魔法をかけてもらっているので、魔女の国の住人にスライムの姿は見えていない。それでも足音は訊こえてしまうので(スライムに足はないが)、慎重に長老の家に忍び込んだ。留守のようで、玄関の鍵も開いていた。不用心なのか、そもそもこの国には空き巣なんて者が存在しないのか。魔法使いであれば、やろうと思えば、ひょいと開錠なんか朝飯前のような気はする。それでも、契印の間に続く扉には施錠がされていた。とはいえ所詮は木の扉。スライムと言えど、ぶち破ることができた。
知識と相応の法力が備わっていれば、石化を解くことはさほど難しくはない。三十秒、魔法の力で魔法陣の一部を削ってやるだけ。ただし問題がひとつ。陣を穿つ騒音が洒落にならないということ。どういう原理でそんな音が鳴るのかは知らないが、金属を金属で削っているかのような耳障りな高音が、国中に鳴り響いた。
近くにいたのかテレポートか、十六秒で長老が部屋に駆け込んできた。
「何者じゃ!」
解呪の魔法を使う際に迷彩魔法はとっくに解けているので、スライムというのは見れば分かろう。もうじき終わるから、大人しくそこで待っているがいい。大魔王復活である。
うわぁーとか。、ぐわぁーとか、きゃぁーという叫び声と共に、解呪が完了した。そんなに喜んでもらえるとこちらも照れてしまう。
「す、凄い音だね・・・・・・」
「ふ、ふざけるな・・・何の音だ、ったく・・・・・・」
「もう、鼓膜が・・・・・・」
ふむ、3人とも無事のようだな。まずは第一関門突破だ。問題はここから。
「な、何と言う事を!」
さすがは偉大な魔女の国の長老、状況把握の速いこと。そうなると私の出る幕はない。スライムはティナの背後に隠れよう。感動とはいかないかもしれないが、再会には違いない。
「ティナ、説明しなさい。どうやって石化を解いたのだ。」
「分かりません。」
「誰が封印を解除したのだ。」
「分かりません。」
「石化している者が魔法を唱えることは不可能・・・かと言ってスライムが?ありえない。そんな低俗なモンスターがどうにかできるはずがない。」
随分と失礼なことをブツブツ仰っているがやはりというべきか、痺れを切らしたのはガイアだった。
「んなこたぁ、どうだっていい。爺さん、どうすんだ?もう1回俺達を石にするか?それとも黙って見送るかい?」
とっくに剣を納めたローグに対して大剣を肩に乗せたままのガイアの挑発的な発言に、ティナと話していた時よりも憎しみを込めて長老が睨んだ。
「魔法陣を描き直すのには時間がかかる。それまではお主達を村の外に出すわけにはいかぬ。」
「んじゃ、黙って見送るしかねぇな。」
「許さんぞ。」
長老が杖を構えた。戦闘態勢、ということだろう。どう転んでも勝てる見込みがないのに、その姿勢だけは立派なものだ。
三人プラス一匹の体が光に包まれる。それをまず察したのはローグ。
「ごめんなさい、長老さん。ティナのことは心配しないで下さい。」
続いてティナ。
「さようなら、お義父さん。」
一方でガイアはひとり戦う気満々で大剣を握っているが、転送開始―どうだろう、空気は読めていただろうか。タイミングは合っていただろうか。これで良かったのだろうか。




