大山鳴動9
「久しいな。ティナ。」
「はい。」
「体は壊してないか。」
「はい。」
「後ろのお二人は、ご友人か。」
「はい。」
「覚悟は、できているのだな。」
「はい。」
「では、『契印の間』へ。」
「はい。」
たったこれだけ。長老の家の奥へと歩いていく。後方にて待機してたローグとガイアも続く。
奥の部屋の中央には幼子を抱く女神だろうか、銅像が立っており、その前には椅子が一つ置かれていた。黙って腰掛けるティナ。よく見ればその椅子を中心に、床には魔法陣が描かれていた。
「ご友人。ティナと別れのご挨拶を。」
長老に促されたローグとガイアが歩を進める。ティナに向かってではなく、長老の方へ。
「2人共!」
ティナの制止をローグが右手で抑えた。違うんだ、心配しないで、と。
「なぁ、爺さん。ティナを石にするんだろう。」
長老とガイアでは背丈が倍あるように見えた。
「左様。」
「俺達も石にしてくれよ。」
「ちょっ、何を言い出すの!?」
慌てるティナをまたもやローグが止めた。
「ガイア、ティナの横に並べば、魔法陣の中にいれば石になれるってギードが言ってた。」
まるで告げ口をする子供だ。
「なんでぇ、それだけでいいのかよ。」
そう言うとティナを真ん中に、向かって左側にガイア、右側にローグが並んだ。
「よいのだな・・・いつ戻れるか分からんのだぞ。」
ティナとて説得したが、訊くような奴等ではない。しかも質の悪いことに、問答無用、半ば感情的に跳ね除ける奴と、優しく落ち着いた、冷静な頑固が同じ意見。加えてティナの罰に対して根本的に納得していない2名。あまり刺激するとこの家ごと、どころか魔女の国ごと破壊しかねない。もはや魔女の国に、2人に対できる法力を持つ者はいない。万が一そうなった時、どちらにつくかと問われれば、迷うことなく魔界に戻るつもりだった。そうなる前に―
「長老。始めて下さい。」
三体の石像。左の石像は大剣を肩に乗せ、右の石像は居合いの構え。二体とも笑顔。どうして格好なんかつけてお茶落けているのか。対照的に真ん中の石像の頬には一筋の涙が伝っていた。それでもその顔は、美しい微笑みを携えていた。
【大山鳴動 終】




