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大山鳴動7


 ローグとガイアが棒立ちで、相対する敵の方から迫ってくるという場面は記憶にない。それだけ追い込まれている証拠なのだが、ローグもガイアも意外と余裕の表情。奥の手があるのか開き直ったか、それとも諦めたか―そんなことあすぐにどうでもよくなってしまった。何故なら、この戦争が唐突に終わりを告げた。魔族と竜族の戦争を最大限に利用していた者、いわば黒幕が計画を完遂した所で、この戦争に意味はなくなった。殺し合いをしたい訳ではない。さて、操り人はローグではない。ガイアでもない。であるならば、答えはひとりしかいない。

 現れたのは白魔女。膝を付いて頭を垂れたのはティナに対してだった。

「遅くなり申し訳ございません。竜陣結界、全て張り終えたのを確認致しました。」

「間に合ったわね、ありがとう。」

頭にハテナマークが浮かんでいる奴が2人。そら、知らんわな。『竜陣結界』。竜族特攻の結界の名である。ローグを山に登らせている間に準備していたか。瞬間移動で山の頂に昇るのは礼儀に反する、か。無論、そんなものは訊いたことがない。さて、竜族を竜国の外に出さない為だけの魔法。普段の戦闘ではこれっぱちも役に立たない代物である。竜族と関わりをもたぬ者には不要の産物。その習得には長い年月と高い法力、恵まれた才能が求められ、当然教えられる者が必要。そして付け加えるならば、遥か昔に封印された呪術。疾うに使い手はいなくなったと訊いていたのだが、それは追々(おいおい)。族長が目と鼻の先だ。何がなんだか訳分からず、意味不明で困惑しているのがローグとガイア。そこへティナが一言、

「引くわよ。」

いい判断だ。呼応した白魔女が魔法を唱えた。瞬間移動。竜国から魔界の魔王城。我らが城へ、食堂へ。


 ボロボロの3人。もうHPもMPも残っていない。絶対安静とは言わずとも、しばらくは休息が必要だが、ここで白魔女から報告が入る。

「人間族が、勇者共が―」

竜国に来た理由はこちらが本命だったのかもしれない。ヨロヨロと立ち上がったローグがフラフラと歩いて窓に辿り着き、外を覗いた。

「本当だ、沢山いらぁ~。貼紙、見てくれてるかなぁ。」

呑気なことを言っている場合ではない。お前の首を取りにきたのだぞ。しかも2組、3組ではない。単なる偶然とは考えにくい。このタイミングを狙ってきたのか。どうやってこの戦争を知ったのだ?こちとら戦える状態ではない。皆が現状を把握した所で、白魔女が提案をする。強情な人間へ捧げる、切望。

「私が時間を稼いでいる隙に、魔導装置に転送させましょう。誰もいない所へ―」

それに対して、まずはティナが口を開いた。

「ありがとう・・・でもね、私達は平気だから。魔王軍の皆を集めて、遠くへ。誰もいない所へ。できるわね。」

「しかし今の状態では―」

続いてガイアが加勢する。

「俺達が負けるわけねぇだろが。俺の後ろで何を見ていやがった。」

最後にローグが優しい声色で頭を下げた。魔王軍の法はただ一つ。魔王の命令は絶対。これまでたったの一度も命令なんかしたことのないローグから、最初で最後の魔王特権。

「ひとつお願いがあるんだけれど、引き受けてくれるかな?」

「・・・・・・・・・はい。」

辛い時にツライと言えない人間は立派だな。




 ローグ、ガイア、ティナの3人が階段を降りていく。戦いの場は1階の闘技場にするようだ。3人の背中が遠退いていき、やがて消えた。初めて、スライムは置いていかれた。ローグが白魔女に依頼したことは、スラ坊も頼む。

 帰ってくるつもりがないのか、全く。結論を焦るんじゃない。ちょっとやそっとの勇者など、ちゃっちゃと片付けてしまわんか。お前達ならどうにかできるだろう、考えろ。何ならこんな城捨ててしまえ、未練などあるまいて。敗北だって構うものか。今し方、竜国から逃げて来たばかりだろう。それでも、竜族を竜国に閉じ込めた。敗走したお前達の勝ちだ。形式上の勝利などくれてやればよいのだ。頼むから最後くらい、私の言う事を訊いてくれ(スライムは喋らないのだが)。

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