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掌中の珠5


 違う。いつもより法力の圧力がずっと強かった。隣でプニプニしていると、体重の軽いこの身体では吹き飛ばされそうだった。堪らずピョンピョン跳ねて距離を取る。洞窟の地下奥底で台風でも発生したかのような強風が吹き荒れた。その一端がローグとガイアにも届いているだろう。ティナが何かを仕掛けんとしている先触れがひしひしと伝わっているはずだ。やがて大声がカウントダウンが始まる。

「3・・・2・・・」

せめて5から始めてやればいいものを。とはいえ魔法使いの意図は通じたようで、1の掛け声と共にローグとガイアが骸骨の元を離れた。そして、ゼロと同時にティナの魔法が放たれた。

 ティナの掲げた杖の先端が赤く発光し、火球が飛翔する。直球ではなく放物線を描いて。大きさは大きめの石礫(つぶて)。敵の数に合わせて6発かと思いきや、20発以上が間髪入れずに発射された。詠唱に時間をかけただけのことはある。だがしかし、である。まだ制御がきかないようで、半分は明後日の方向へ拡散していった。ローグやガイアにも当たりそうになり、2人はギャーギャー叫びながら間の抜けた格好でかわしていた。壁や天井にぶつかっていて、洞窟が崩れてしまわないか心配になってしまう。肝心のターゲットはというと、しっかりと命中したようだ。喰らった骨は漏れなく粉々になった。一匹外れたが、爆発と砂煙の中でローグとガイアが同時に近付き、ロングソードと大剣で止めを刺した。やろうと思えばいつでも決着(けり)をつけられたのだろうか。手を抜いていたようには見えなかったが、危険を冒すことなく余裕をもって剣を振っていたのかもしれない。斬り込まなければ斬られることもない。何はともあれ、骸骨剣士6体を撃破した。


 やや離れた壁際で戦闘終了を見届けた。幸いこちらに火の球は飛んで来ず、無事だった。ティナはぺたんとその場に座り込んでしまったが、少し疲れただけだろう。身の丈に合った一発とは言い難い威力だった。その証拠に、半分は壁やら天井やらへの無駄撃ちとなってしまった。危うく味方に被弾する所だった。全弾を敵の群衆にぶち込んでいれば一匹を取り逃がすこともなかった。そのお陰で、今も天井から砂埃が降り注いでいる。頼もしさよりも恐怖が勝ってしまう程の高威力―否!洞窟が崩れるぞ。


 全くもって世話が焼ける。ティナの傍らで跳ねながらキュピーキュピー(わめ)いてやったが、伝わりゃしない。私も脱出魔法は心得ているが、ダンジョンから抜け出すには全員が一塊になる必要がある。お前達のがらんどうな頭にも砂の雨が降り注いでおろうが。『おうおう、すらぼうが勝利の舞を踊ってやがるぜ』、『あはは・・・下手っぴだなぁ』なんて談笑しながらのほほんと戻ってきた時には、よっぽどぶん殴ってやろうかと思った(スライムに腕はないが)。

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