大山鳴動③
しかしここで戦況が異変を醸す。前衛2人の様子がおかしい。息切れ・・・か。攻め疲れ・・・か。好機を意味なく逃す輩ではない。残り2体となった今、たとえ呼吸が止まろうとも手を緩めることはない。けれども2人同時に動きが鈍った。敵から攻撃を受けた形跡はない。2人、同時?そうか、そういうことか。手を緩めた訳ではない。あれが奴等の全力だ。マズいな・・・・・・そう悟った時には、既にティナが戦闘の準備を済ませていた。
「スラちゃんはここにいてね。あいつらを助けに行かなくちゃ。」
そう言って駆け出して行った。ローグとガイアに施した強化魔法の効果が切れたのだろう。かなり思い切った作戦に出たものだ。その代償としての反動は、レベル半減。しばしの間は使い物になるまいて。前方で爆発音が鳴り響く。スライムの力は、何の足しにもならない。
無属性波動砲に弾かれたローグ、ガイアと入れ替わるように、ティナが最前線に到着した。擦れ違い様、
「しばらく休んでなさい。」
野郎2人は従うしかない。そもそも耳に届いていたろうか。
ティナが右手を天に掲げると、羽衣の輝きがさらに増した。眩しくてティナの方を凝視できない程の発光だった。本人の姿すら光に隠れて消えてしまった。敵に対する目潰しとしても効果が期待できそうだが、そんなものは飾りにすぎない。
「お願いだから、ちょっとは効いてよね。」
祈りにも似た懇願だった。
ティナが立て続けに3種の魔法を発動させた。まずは重力魔法。竜族の体重を増やして動きを鈍化した。全く動けなくなる訳ではないが、少しの間は突進することもできまい。続いて後方に結界魔法。範囲を極小、2人分に絞っただけ強力、つまりは堅い。最後に掲げた右腕を勢いよく振り下ろした。雨だ・・・・・・どこかで似た光景を見たが、徐々にヒットポイントを削るなんて生易しい物ではない。集中豪雨で一気に体力を奪う。法力を含んだ横殴りの雨が2匹の竜を強襲した。大魔法に違いない、それでも残念ながら竜族を倒すには至らない。それ所かダメージも微々たるもの。そんなことはティナだって承知の上。3種の法術、時間稼ぎとしては上出来だ。あとはドラゴンの出方次第。鉛のような体を引きずって距離を詰めるか、遠距離射撃で狙ってくるか。2人が戻るまで耐えなくてはならない。




